ソクラテスの思想(魂への配慮・無知の知など)についてわかりやすく解説【倫理第5回】

今回は、ソクラテスについて解説します。この記事で学べる内容は下記のとおりです。

 

この記事からわかること

・ソクラテスが登場する時代背景

・ソクラテスの思想(魂への配慮・無知の知など)

初学者にも内容を十分に理解してもらえるよう、わかりやすく解説しました。

 

また記事の後半には、今回のテーマに関連した入試問題を用意しています。この記事を読めば、基本の理解から復習までしっかりできるよう構成しているので、最後まで読んでみてください。

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ソクラテスとはどんな人物?

(ソクラテス:wikiより)

ソクラテス(前470〜前399)は、哲学者の中でも超大物といえる存在です。

 

しかし、意外にもソクラテスには著書がありません。彼の思想は弟子であるプラトンの著作などを通して伝えられたものなのです。けっこう勘違いしやすい部分なので、おさえておいてください。

 

ソクラテスが登場したときのギリシャってどんな感じだったの?
たなかくん
たなかくん

 

次から解説しますね。

ソクラテスが登場した時代背景【ソフィストの登場】

ソクラテスが登場する以前のギリシャ・アテネでは、民主政治が確立しました。ようは、能力さえあれば市民の誰もが政治に参加し、指導者になれる可能性があったわけです。

 

民主政治が開花すると、人々の関心は自然(ピュシス)から法などの人為的なもの(ノモス)へと向かいます。

 

なかでも人々を説得する技術(弁論術)が重要視されるようになりました。指導者としての資質を示すためには、弁論のテクニックが不可欠だったからです。

 

そこで弁論術を教える職業教師が登場します。彼らこそがソフィストです。ソフィストは報酬を受け取り、青年たちに対して弁論術など政治に必要なスキルを教えました。

 

S先生
S先生
代表的なソフィストとしては、プロタゴラスがあげられます。「人間は万物の尺度である」という言葉が有名ですね。

 

ソフィストは、善悪をはじめとする物事の判断基準を人間の側に求めました。つまり、物事の真偽は個々人の考え方や感じ方によって異なると考えたわけです。このような立場を相対主義といいます。

 

例えば、暑さや寒さの感じ方は人によって違いますよね。42℃のお湯をちょうどよい湯加減と感じる人もいれば、熱いと思う人もいます。

 

それと一緒で、ソフィストは絶対的な真理などないと考えたわけです。

 

しかし、ソクラテスはソフィストの相対主義を真っ向から批判します。

 

では、ここからソクラテスの思想について解説します。

ソクラテスの思想

(アポロン神殿:wikiより)

ソクラテスの思想でおさえておきたいのは、下記の2つです。

  1. 無知の知
  2. 魂への配慮

1つずつ見ていきましょう。

無知の知

無知の知とは、自分が無知であると知ることです。実はソクラテスには、無知の知にまつわる下記のようなエピソードがあります。

 

ある日、ソクラテスの友人は、デルフォイのアポロン神殿で「ソクラテス以上の知者はいない」との神託(神のお告げ)を受ける。真偽を確かめるべく、ソクラテスが知者といわれる人と片っ端から対話した。すると皆もっともらしいことを言うものの、肝心なことは知ったかぶりをしているにすぎないとわかった。ソクラテスは自分も彼らと同様、善美の事柄(究極の知)については無知だが、自分が無知であるという事実を知っている点では、他の人よりもまさっていることに気づいた。

 

無知の知を自覚して以降、ソクラテスはアポロン神殿にかかげられていた「汝自身を知れ」の格言を自身のモットーとして多くの人々と対話を重ねました。

 

ソフィストが一方的に相手に知識をたたき込むのに対して、ソクラテスは問答法を重視します。

 

対話を通して相手に矛盾や無知を自覚させることで、相手自身に真理を発見させる手助けをしたわけです。このやり方を助産術産婆術)といいます。

魂への配慮

魂への配慮とは、簡単にいえば人間として立派な生き方をするべきという教えです。

 

ソクラテスは、善く生きることが人間にとってのアレテー)であると考えていました。

 

S先生
S先生
「徳」とは、それぞれのものが固有にもっているすぐれた部分のことを指します。例えば、馬にとってのアレテーは速く走ることですし、ナイフにとってのアレテーはよく切れることです。

 

じゃあどうすれば「善く生きる」ことができるの?
たなかくん
たなかくん

 

ソクラテスは、によって善く生きることができると説きました。

 

くりかえしですが、善く生きること=人間にとっての徳です。つまりソクラテスは、知によって人間にとっての徳を身につけられると考えたわけですね。

 

上記の考え方を知徳合一といいます。

 

また善についての知を獲得すれば、必ず善い行為を実践できると考えました。この考え方を知行合一といいます。

 

S先生
S先生
だからソクラテスからすれば、「わかっちゃいるけどやめられない」なんてことはあり得ません。悪行をする=本当の意味で善を理解していないということだからです。

 

さらに徳を知る者だけが真の意味で幸福になれると説きました。上記の考え方を福徳一致といいます。

 

つまり、ソクラテスは知と徳と幸福は一体のものだと考えていたわけです。

ソクラテスの最期

(ソクラテスの最期:wikiより)

ソクラテスはアテネの有力な知識人をことごとく論破したがゆえに、ソフィストや政治家の反感を買いました。

 

結果「アテネの神々を敬わず、若者を堕落させている」として裁判にかけられ、死刑判決を受けます。

 

彼の友人のなかには国外逃亡をすすめる人々もいました。

 

しかしソクラテスは、逃亡という不正を犯すよりも国法に従って死ぬことが正義と語り、自ら毒を飲んで亡くなりました。

 

ようは、これまでアテネの国法の恩恵を受けて生きてきたのに、都合が悪くなったらそれを破るのは正義に反すると考えていたわけです。

 

ソクラテスは亡くなる直前まで善く生きる姿勢を貫いた人物といえます。

入試問題にチャレンジ

問 下線部ⓐの古代ギリシャの哲学者の一人としてソクラテスが挙げられるが、その思想内容として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 人間はポリス的動物という本性に従って社会生活を営む存在であり、正義と友愛の徳もポリスを離れては実現しないと考えた。

② 対話的方法を通して自己の魂のあり方を吟味していくことが、「よく生きること」の根本であると主張した。

③ 自然と調和して生きることを理想とし、自然を貫く法則性と一致するように意志を働かせることによって魂の調和が得られると説いた。

④ 富や権力や名誉などの外面的なものや社会規範といったものを軽蔑し、自然に与えられたものだけで満足して生きる生活を理想とした。

2002年 センター試験 本試験 倫理 第1問 問2より)

正解:② 「対話」「よく生きること」というキーワードからソクラテスの思想であることがわかります。
①:人間を「ポリス的動物」と定義したのは、アリストテレスです。
③:自然と調和して生きることを理想としたのは、ストア派です。ストア派の創始者であるゼノンは「自然に従って生きよ」という言葉をのこしています。ストア派についてはこちらの記事「ヘレニズム哲学とは?思想の特徴を超わかりやすく解説【倫理第8回】」を読んでみてください。
④:自然に与えられたものだけで満足して生きる生活を理想としたのは、ソクラテスの孫弟子にあたるディオゲネスです。

 

 

まとめ

今回は、ソクラテスの思想について解説しました。学習内容のおさらいです。

 

ソクラテスは人間にとっての徳=「善く生きる」ことだと説いた。

・善についての「」を獲得することで、善い生き方が可能になるとした。

無知の知を重視し、対話によって人々に無知を自覚させた。

 

ソクラテスの思想をマスターするための第一歩として、上記の3点をしっかりおさえておきましょう。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

前回の記事「哲学とは?誕生までの歴史と主な自然哲学者についてわかりやすく解説【倫理第4回】」をご覧ください。

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