動詞とは、活用のある自立語のことで、言い切りの形が「ウ段(ラ変を除く)」で終わる単語です。このことは、中学校で学んだ現代語の動詞とほぼ同じですよね。
では、現代語と古語の動詞で一番異なるのは何だと思いますか?それは、動詞の活用の種類が現代語は5つであるのに対して、古語は9つと格段に数が増えることです。
今回の課題は、動詞の活用の中でも「カ変・サ変・ナ変・ラ変」と呼ばれる、変格活用です。「カ変・サ変・ナ変・ラ変」動詞はほぼほぼ1語か2語ぐらいなので暗記が簡単です。これらにあてはまる動詞は限られていますから、しっかり覚えて、古文の読解に使える知識にしていきましょう。
カ行変格活用(カ変)
カ変動詞は、「来」1語です。ただし、「出で来」「持て来」「まうで来」などの複合動詞もあり、これらもカ変動詞です。
カ変の活用の仕方は「こ・き・く・くる・くれ・こ(こよ)」です。漢字ではすべて「来」ですが、活用形によって読み方が違いますので、注意しましょう。
《練習問題》
次の下線部のカ変動詞の読み方を平仮名で書き、その活用形も答えよう。
1、「せうと、こち来。これ聞け」と
2、おのれだに来ず。
3、外より来たる者などぞ。
《解答&解説》
こ 解説:「せうと」と呼びかけの語があり、続く文も「聞け」とあるので、命令形であると判断します。
サ行変格活用(サ変)
サ変動詞は「す」「おはす」の2語です。ただし、「す」には「具す」「ものす」など複合動詞が多くあるので注意が必要です。
サ変の活用の仕方は「せ・し・す・する・すれ・せよ」です。
注意1 サ変の複合動詞について
サ変動詞「す」には多くの複合動詞があります。
複合動詞で、サ変の活用をするものは、
-「漢字1字で音読みするもの」+「す」 例)具す、奏す、死す
– 和語 +「す」 例)ものす、あるじす
-用言 +「す」 例)疎んず、重んず
動詞の最後に「す」があるものが全部、サ変の活用をするわけではないので注意しましょう。
例)申す→サ行四段活用 など
注意2 活用語尾がザ行になるものの「サ変動詞」です
複合動詞には、「念ず」「御覧ず」などのように、活用語尾が「ザ行」になるものもあります。ですが、これらも「サ行変格活用」の動詞に含みます。そのため、「ザ変」などとしないように注意しましょう。
《練習問題》
次の動詞のうち、サ変動詞であるものを全て選び、番号で答えよう。
1、具す 2、申す 3、死す 4、ものす 5、臥す
《解答&解説》
2、「申す」は「ず」を付けると「申さ+ず」となりますので、サ行四段活用の動詞です。
3、漢字1字で音読みをする「死」に、「す」が付いていますので、サ変動詞です。
4、和語である「もの」に、「す」が付いていいますので、サ変動詞です。
5、「臥す(ふす)」は訓読みですから、サ変動詞ではなく、サ行下二段活用の動詞です。
ナ行変格活用(ナ変)
ナ変動詞は「死ぬ」「往ぬ(去ぬ)」の2語です。
ナ変の活用の仕方は「な・に・ぬ・ぬる・ぬれ・ね」です。すべての活用形で形が違いますので、このまま覚えれば、活用形の判別をする時に便利です。
《練習問題》
次の( )内のナ変動詞を、文章に合うように活用させよう。
1、この人を具して(去ぬ)けり。
2、わびはてて(死ぬ)命をすくひやはせぬ。
3、(死ぬ)ぬ薬を食はざれば、つひに死す。
《解答&解説》
解説:直後に、連用形接続の助動詞「けり」があるので、連用形「去に」と活用させます。
解説:直後に、「命」という体言があるので、連体形「死ぬる」と活用させます。現代語のように「死ぬ」にしないよう注意しましょう。
解説:直後に、未然形接続の助動詞「ず」の連体形「ぬ」があるので、未然形「死な」と活用させます。
ラ行変格活用(ラ変)
ラ変動詞は「あり」「をり」「はべり」「いまそかり(いまそがり、いますかり)」の4語です。
ラ変の活用の仕方は「ら・り・り・る・れ・れ」です。終止形がイ段音で終わる動詞はラ変だけです。
《練習問題》
次の下線部のラ変動詞の活用形をそれぞれ答えよう。
1、をかしき花ありてうれし。
2、「誰々かはべる」と問ふこそ、をかしけれ。
3、世の中に物語といふもののあんなるを、いかで見ばや。
《解答&解説》
解説:「あり」は連用形か終止形です。直後に「て」という接続助詞がありますので、連用形と判断します。
解説:
解説:下線部はラ変動詞「あり」の連体形「ある」が、撥音便化したものです。
カ変・サ変・ナ変・ラ変のまとめ
変格活用をする動詞は数が限られていますので、活用の仕方と共に覚えてしまいましょう。
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