【世界史B】受験に役立つヨーロッパ史(第一次世界大戦)【近現代編その9】

こんにちは。今回も受験生に役立つヨーロッパの歴史シリーズをはじめます。近現代シリーズも密かに第9回となりました。今回は、【第一次世界大戦】を取り上げます

 

前回は第一次世界大戦前のヨーロッパについて見ました。「【世界史B】受験に役立つヨーロッパ史(オスマン帝国の縮小とバルカン問題)【近現代編その8】」に詳しくあるので見てください。

 

。帝国主義をかかげ、世界各地を植民地として支配してきた欧米列強はついに真正面から衝突。4年半にわたる総力戦が行われました。

 

戦いはヨーロッパだけではなく世界各地で繰り広げられます。今回は、第一次世界大戦について解説します。

 

今回の記事のポイント・サライェヴォ事件をきっかけに三国同盟と三国協商の戦いがはじまった

・東部戦線はドイツ有利。西部戦線は塹壕戦で膠着

・イタリアは三国同盟を離脱し、連合国側に寝返り

・日本は山東省のドイツ利権を求めて中国に二十一カ条の要求をつきつけた

・アメリカは当初中立、最終的に連合国に加盟

・ロシアはロシア革命で戦線離脱。ブレスト=リトフスク条約でドイツと単独講和

・ドイツ革命が起き、ドイツの敗北で第一次世界大戦が終わった

 

第一次世界大戦のはじまり

(サライェヴォ事件:wikiより)

当時、列強は大きく二つの陣営に分かれて争っていました。一つはドイツ・オーストリア・イタリアの三国同盟。もう一つはイギリス・フランス・ロシアの三国協商です。対立が特に激しかったのがバルカン半島でした。

 

[L1_wsbStart][L_wsbAvatar]https://wearewhatwerepeatedlydo.com/wp-content/uploads/2019/10/teacher.png[L_wsbName]S先生[L_wsbText]バルカン半島はヨーロッパの火薬庫と呼ばれたのよね。[L_wsbEnd]

 

オスマン帝国が弱体化した後、バルカン半島では諸民族が独立します。ロシアを後ろ盾としたセルビアが勢力を拡大しようとします。しかし、北からオーストリアが進出しボスニア・ヘルツェゴヴィナを併合したため、セルビア内部でオーストリアに対する反発が強まりました。

 

1914年6月28日、オーストリア=ハンガリー帝国の皇位継承者フランツ=フェルディナンド大公がボスニアの州都サライェヴォを訪れますセルビア人グループはフェルディナント大公夫妻をパレード中に暗殺しました。

 

オーストリアはドイツの同意を得たうえでセルビアに対し、圧力をかけます。セルビアはロシアの支援を受けてオーストリアの要求を拒否します。7月28日、オーストリアはセルビアに対し宣戦布告しました。

 

ロシアは国内に動員令を発令し戦争に備えます。8月1日、ロシアの動員令を受けてドイツがロシアに宣戦布告します。第一次世界大戦がはじまりました。

 

当時の地図はこちらです。

ドイツの攻勢

(タンネンベルクの戦い:wikiより)

ドイツ・オーストリアがロシアと戦争状態に突入するとロシアの同盟国であるフランスも、ドイツ・オーストリアと戦争状態に入ります。ドイツ軍が中立国のベルギーにも侵攻したことから、イギリスはドイツに宣戦布告。大戦はヨーロッパ各地に広がります。

 

ドイツとイギリス・フランスの戦いを西部戦線、ドイツ・オーストリアとロシアの戦いを東部戦線といいました。東部戦線ではタンネンベルクの戦いで勝利したドイツ軍がロシア国内の奥深くまで侵攻します。

 

西部戦線では大戦初期の戦いとして1914年マルヌの戦いでフランス軍がドイツ軍を阻止した後、ドイツ軍の進撃は止められてしまいました。ロシアと対立していたオスマン帝国やブルガリアもドイツなどの同盟国軍として参戦します。

 

戦線の膠着と総力戦体制

(塹壕の写真:wikiより)

6週間でパリを陥落させるというドイツの目論見は崩れ、西部戦線は膠着状態に陥ります。両軍とも相手の突破を防ぐため塹壕を掘り、長期間のにらみ合いとなりました。各国の指導者はクリスマスまでには戦いは終わると考えていましたが、戦争は長期化します。

 

ちなみに、1916年7月1日から同11月19日までフランス北部・ピカルディ地域圏を流れるソンム河畔の戦線において第一次世界大戦最大の戦いであるソンムの戦いが展開されます。連合国側のイギリス軍・フランス軍が同盟国側のドイツ軍に対する大攻勢として開始し、最終的に両軍合わせて100万人以上の損害を出しました。しかし、連合国軍はわずかな土地を獲得したにとどまり、ドイツ側は後退を最少におさえた形となります。

 

そして、このように予想外に長期化した戦争を実行するため、各国は戦争のために必要な物資を最優先で生産し、国が一丸となって戦いに挑む総力戦体制を作り上げました。女性の軍需工場への動員や植民地兵を前線に送るなど国の全ての力を戦争に注ぎ込んだのです。

 

また、戦いに勝利するため新兵器が続々と戦線に投入されました。陣地を守る機関銃を防ぎ塹壕を突破するための戦車や偵察や爆撃に使用された飛行機、塹壕の敵軍を倒すための毒ガスなどがその代表です。

 

加えて、ドイツは潜水艦「Uボート」を積極的に利用しました。海軍力でイギリスに劣るドイツは潜水艦で対抗したのです。

 

イタリアの離反と日本や中国の動向

 

(袁世凱:wikiより)

三国同盟の一角であるイタリアは大戦に積極的にかかわりませんでした。「未回収のイタリア」をめぐる問題でオーストリアと対立していたからです。未回収のイタリアについては「【世界史B】受験に役立つヨーロッパ史(イタリア・ドイツの統一)【近現代編その5】」を参照してください。

 

しかし、1915年5月、イタリアは「未回収のイタリア」の回復を約束され、イタリアが連合国側として参戦します

 

日本は東アジアや太平洋でドイツが持っている植民地を狙っていました。大戦がはじまると、日本は日英同盟を理由としてドイツに宣戦布告します。山東省の青島や膠州湾を占領します。

 

日本は中華民国に対し、ドイツが山東省で持っていた権利を日本が引き継ぐことなどを内容とした二十一カ条の要求を突きつけます。中華民国の袁世凱は日本の要求を受諾しました。

 

また、1917年には中華民国が連合国側にたって参戦します。中華民国のねらいは連合国に協力することで列強から有利な計らいをうけることでした。

アメリカの参戦

(ルシタニア号:wikiより)

20世紀初頭、アメリカは世界屈指の工業力を持っていました。そのため、アメリカがどちらかの陣営に味方すれば、戦争の決着がつくといっても過言ではありません。しかし、アメリカでは孤立主義の考え方が強く、大戦には中立の立場でした。

 

1915年2月、ドイツは無制限潜水艦作戦を実施。イギリス近海を戦争区域として侵入する敵商船を撃沈するとします。1915年5月、イギリス客船ルシタニア号が潜水艦により撃沈されます。多数のアメリカ人が乗船していたルシタニア号の撃沈でアメリカ世論は対ドイツ強硬論に傾きます

 

ドイツの無制限潜水艦作戦は諸外国の避難により一時停止されます。しかし、1917年2月にふたたび無制限潜水艦作戦の実施が宣言されるとアメリカなどの反発は高まりました。

 

1917年4月、アメリカはドイツに対して宣戦布告しました。アメリカ参戦の理由はイギリスやフランスに貸していたお金の確実に回収するためです。アメリカはイギリスやフランスが負けると、貸していたお金が返ってこないかもしれないと考えました。

 

同盟国の降伏

(休戦協定:wikiより)

1918年3月、ロシア十月革命の結果、ロシアはドイツとブレスト=リトフスク条約を結び連合国から離脱します。

 

東部戦線での負担がなくなったドイツは西部戦線に全力を注ぎますが、アメリカの支援を受けたイギリス・フランス軍に勝利することはできませんでした。1918年9月にブルガリア、10月にオスマン帝国、11月にオーストリアが降伏しドイツは孤立します。

 

1818年11月、ドイツ艦隊の拠点であるキールで水兵たちが反乱を起こしました。この反乱がきっかけとなりドイツ革命が勃発します。皇帝ヴィルヘルム2世はオランダに亡命します。ドイツ帝国は崩壊し、共和制が成立しました。共和制のドイツでは社会民主党のエーベルトが大統領に選出されます。

関連問題

南山大学(人文・経営)が2019年第5問で第一次世界大戦の問題を出しています。一部問題を一部改変して抜粋します。

第1問 第一次世界大戦に関する出来事を古い順に並べなさい。

ア イタリアの参戦 イ マルヌの戦い ウ ソンムの戦い

第2問 次のカッコに入る言葉を入れなさい。(試験では選択問題)

第一次対戦中に成立したイギリスの内閣は( 1 )で、フランスでは対独強硬論を主張する( 2 )内閣が成立した。また、1917年のアメリカ参戦を機に連合国側が優位に立った。劣勢のドイツは(  3  )条約を締結した。共和国となったドイツでは(  4  )党のエーベルトが大統領に選出された。

イ →ア→ ウ:マルヌの戦い(1914年)、イタリア参戦(1915年)、ソンムの戦い(1916年)

 


(1)ロイド=ジョージ(2)クレマンソー (3)ブレスト=リトフスク (4)社会民主

まとめ

バルカン半島で起きたオーストリアとセルビアの衝突は瞬く間にヨーロッパ全土を巻き込む大戦争となりました。

クリスマスまでには終わるという各国首脳の予想に反して、戦争は4年半にわたって続きます。戦争のために国の全てを注ぎ込む総力戦体制で戦い、新兵器も続々投入されました。

戦いはアメリカの参戦で連合国有利となり、1918年にドイツ革命が起きることで、ドイツなどの同盟国側が敗北しております。

前回は第一次世界大戦前のヨーロッパについての記事はこちら。「【世界史B】受験に役立つヨーロッパ史(オスマン帝国の縮小とバルカン問題)【近現代編その8】

 

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