今回は、財政について解説します。
財政とは何かという初歩的な部分から、財政の役割・不況期及び好況期に行う財政政策・租税及び公債の種類まで幅広く扱いました。
最後には入試問題も用意しているので、ぜひ最後までお読みください。
この記事からわかること
・財政の役割
・不況期or好況期の財政政策
・租税・公債の種類
財政とは
(公共事業:wikiより)
財政とは、国や地方公共団体が行う経済活動です。財政には、3つの役割があります。
1つ目は、資源配分です。政府は、市場だと利益が出にくく、企業による供給が期待できない公共財を提供する役割を担っています。2つ目は、所得再分配です。累進課税や社会保障を通じて、所得格差の是正を図ります。3つ目は、景気調整です。景気の過熱や冷え込みを調整し、経済を安定化させるために財政政策を行います。
財政には本来、景気を安定させる機能である自動安定装置(ビルトイン・スタビライザー)が備わっていますが、それだけでは不十分です。
だからこそ、政府が意識的に財政を操作して景気を調整する必要があります。これがフィスカル・ポリシーと呼ばれるものです。
不況期で景気が冷え込んでいる場合、政府は公共事業の拡大や減税を行い、景気の回復や完全雇用を目指します。逆に好況期で景気が過熱している場合、政府は公共事業の縮小や増税を実施して、景気の過熱やインフレを防止するわけです。
予算
(予算委員会:wikiより)
予算とは、歳入と歳出の計画です。歳入とは、政府の一会計年度における収入で、支出のことを歳出といいます。財政はこの予算制度に基づいて運営されるわけです。
予算には、一般会計予算と特別会計予算の2種類があり、いずれも内閣が作成して国会の議決を受ける必要があり、政府関係機関予算も一緒に国会に提出されます。
では、財政収入はどのように賄われているのでしょうか?
答えは、租税や国債などです。
その租税と国債について、次の項目で詳しく見ていきましょう。
租税
(国税庁:wikiより)
租税には、3つの原則があります。
1つ目が公平です。公平には、垂直的公平と水平的公平という2つの側面があります。垂直的公平は、租税を所得の大きさに応じて負担すべきという考え方です。これに対して水平的公平は、所得が同じであれば租税負担も同じであるべきだとする考え方のことを指します。
三大原則の2つ目は、中立です。中立とは、課税が経済活動の妨げにならないようにすることを意味します。
3つ目は、簡素です。簡素とは、課税や納税の手続きがわかりやすく、徴税の経費が少ないことが望ましいとする考え方を指します。
租税は、国が徴収する国税・地方公共団体が徴収する地方税の2種類です。国税には、所得税・法人税・消費税・相続税、地方税には、住民税・固定資産税・事業税があるので、おさえておきましょう。
ほかの区別の方法としては直接税と間接税があります。
直接税とは、所得税や法人税のように、納税者と税負担者が同じ税のことです。
一方間接税は、その両者が異なる税のことを指します。例えば、消費税であれば、最終的に税務署に税を納めるのは企業ですが、実際には消費者が負担しますよね。こうした税は、間接税と呼ばれます。消費税のほか、酒税・たばこ税・印紙税も代表的な間接税です。
租税収入における直接税と間接税の割合を直間比率といいます。日本は1949年のシャウプ勧告以降、直接税中心主義をとりました。シャウプ勧告について知りたい人は、ぜひこちらの記事「戦後の政治についてわかりやすく解説(GHQ・55年体制など)【日本史第80回】」もあわせてご覧ください。
しかし1973年の第1次石油危機以降、経済成長率が低迷して税収が伸び悩む一方、少子高齢化が進行し始め福祉財源などを安定的に確保することが必要となり、直間比率の見直しが求められました。
そこで1989年に、税率3%の消費税が導入されます。1997年には5%、2014年には8%、2019年には10%に引き上げられました。(一部の消費活動に対しては軽減税率8%を適用)
ところが消費税には、ある問題点がありました。それは、低所得者層ほど負担率が高くなる逆進的性格を持っているということでした。
公債
(日本国債の推移:wikiより)
公債とは、政府が発行する借金証書です。公債には、国が発行する国債と地方公共団体が発行する地方債があります。
国債は、道路や住宅などの社会資本を建設する公共事業にあてる建設国債と一般会計の赤字を補うための赤字国債の2種類です。
財政法では国債の発行を原則として禁止されているものの、例外的に建設国債の発行だけは認められています。赤字国債を発行するためには、財政法とは別の特例法を制定することが必要です。
また、市中消化の原則により、国債の日銀引き受けは原則的に禁止されています。
国債を大量発行することによる、大きな問題点が3つあります。
1つ目は、国債費が増大して財政の硬直化を招き、社会保障などの必要な経費を圧迫してしまうという点です。
2つ目は、将来世代の税負担を増大させ、世代間に負担の不公平が生じる点にあります。
そして3つ目は、増税より有権者の反対を受けにくいぶん、安易な国債発行から財政の肥大化・非効率化を招きやすいという点です。
そこで日本は、今歳出削減や消費税率引き上げといった財政改革により、プライマリーバランスを黒字化することを目指しています。
今回の範囲はここまでです。続いて入試問題を用意しているので、ぜひチェックしてみてください。
入試問題にチャレンジ
問 下線部ⓔ(税)に関連して、租税の原則に関する次の用語A~Cと、その内容ア~ウとの組合せとして最も適当なものを、下の①~④のうちから一つ選べ。
A 中立
B 垂直的公平
C 簡素
ア 租税の負担能力に応じて負担することが望ましいとする考え方
イ 課税によって経済活動を極力妨げないことが望ましいとする考え方
ウ 納税の手続がわかりやすく、徴税の経費が小さいことが望ましいとする考え方
① A-ア B-イ C-ウ
② A-ア B-ウ C-イ
③ A-イ B-ア C-ウ
④ A-イ B-ウ C-ア
⑤ A-ウ B-ア C-イ
⑥ A-ウ B-イ C-ア
まとめ
今回は、財政について解説しました。
不況期及び好況期にどのような財政政策が行われるかをはじめ、租税や国債の種類についてもしっかりと覚えておきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「通貨制度と金融(信用創造・金融政策など)についてわかりやすく解説【経済第4回】」ですのでよければ読んでください。
次回の記事「資本主義と社会主義についてわかりやすく解説(入試問題も用意)【経済第6回】」をご覧ください。
政治経済を理解するには「蔭山の共通テスト政治・経済」がおすすめです。政治経済の細かいところまで解説してくれるので、受験生はぜひとも一読をするとよいでしょう。
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