農業・中小企業問題についてわかりやすく解説(入試問題も解説)【経済第8回】

今回は、農業・中小企業問題について解説します。

 

戦後の日本で行われた農業政策や中小企業の定義をはじめ、農業・中小企業それぞれが抱える課題など、幅広い内容を取り扱いました。

 

最後には入試問題も用意しているので、ぜひ最後までお読みください。

この記事からわかること

・戦後の日本で行われた農業政策

・現代の農業問題

・中小企業の定義・問題点

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農業問題

(田:wikiより)

戦後の農業政策

最初に、戦後の日本でどのような農業政策が行われたかについて解説します。

 

まず復興期には、2度にわたる農地改革(1947~50)でたくさんの自作農が生まれました。また地主制の復活を防ぐため、1952年に農地法が制定されます。農地法は農地の売買や利用を厳しく制限した法律です。

 

続いて高度成長期には、基本法農政が行われます。基本法農政とは、1961年に制定された農業基本法に基づく農業政策のことです。農業と他産業との所得格差の是正を図ると同時に、自立経営農家の育成を目指して実施されました。

 

具体的な取り組みとしては、経営規模の拡大・機械化が推進されたほか、需要の増加が見込まれる畜産・果樹・野菜などへの選択的拡大が図られます。しかし、機械化により農業の兼業化が進行し、農外収入が農業収入を上回る第二種兼業農家が増加しました。

 

S先生
S先生
第二種兼業農家とは対照的に、農業収入が農外収入を上回っているのが第一種兼業農家です。

 

また高額な機械を購入して借金の返済に苦しむ機械化貧乏や、主な稼ぎ手だった男性労働者が都会に流出して高齢者と女性だけに依存した三ちゃん農業も進行しました。三ちゃんは、じいちゃん・ばあちゃん・かあちゃんの3人を表しています。

 

さらに食生活の多様化によりコメの需要が落ち込み、生産過剰が問題になりました。そこで1970年にコメの作付面積を制限する減反政策が行われます。政府が減反奨励金を支給することで、休耕や果樹・野菜への転作が進められました。

現代の農業問題

1980年代に日米貿易摩擦が激化したことを受け、1990年代には農・畜産物の輸入自由化が進められます。

 

1991年に牛肉・オレンジが自由化されたのに続いて、1993年にはGATTのウルグアイ・ラウンドでコメ市場の部分開放が決まりました。これにより、国内消費量の一定量をミニマム・アクセス(最低輸入量)として輸入することになったわけです。そして1999年にはついにコメの全面関税化が実施されました。

 

国内では、旧食糧管理法に代わって1995年に食糧法が施行されます。食糧法により、コメの流通や価格の大幅な自由化が実現されました。

 

また1999年には、旧農業基本法に代わって食料・農業・農村基本法が制定されます。食料・農業・農村基本法は、食糧の安定供給の確保・農業の持続的発展などを目指す法律です。

 

現代では、食料自給率の低下が深刻な問題となっています。1960年にはカロリーベースで79%だった食料自給率が2020年には37%まで大きく減少しており、先進国のなかでは極めて低いのが現状です。

 

加えて農村の耕作放棄地を減らしていくことも課題の1つとして挙げられます。

中小企業問題

(丹後ちりめん(地場産業の例):wikiより)

中小企業とは一体どんな企業のことを指すのでしょうか?下記の表にまとめているので、ぜひご参照ください。

(注:中小企業基本法(1999年改正)に基づく)

 

中小企業は日本の全企業のうち、事業所数で約99%・従業員数で約70%を占めています。

 

しかし、中小企業にはさまざまな問題点があります。例えば、家族経営が主体の零細企業や大企業の下請けが多いこと・資本装備率や労働生産性が低いことなどです。資本装備率とは、労働者1人あたりの固定資本額(機械や工場など)を指します。

 

つまり中小企業は大企業と比べて、賃金・労働条件・生産性に大きな格差があるわけです。この格差を二重構造といいます。

 

とはいえ、中小企業のなかには、地域の特性や伝統技術を生かして特産品を生産・販売する地場産業や、ほかの企業が見落としているすき間を埋めるニッチ産業で活躍する企業も見られます。またわずかな資本金で未開拓の分野へ挑戦するベンチャー・ビジネスを展開する企業もあることもおさえておきましょう。

 

今回の範囲はここまでです。続いて入試問題を用意しているので、ぜひチェックしてみてください。

入試問題にチャレンジ

問 下線部ⓓ(企業経営の実態)に関する記述として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 株式会社が、株式を発行することによって出資者から集めた資金は、他人資本である。

② 株式会社が、出資者である株主に対して利益の分け前として支払うのは、利子である。

③ 日本において、中小企業の従業員数の総計は、農林水産業を除く民間事業所の従業員数の総計のうち約99%を占めている。

④ 高度な専門性や独自の技術力をもとに、新分野の市場開拓に挑戦する企業は、日本ではベンチャー企業と呼ばれている。

2019年 センター試験 本試験 現代社会 第5問 問4より)

正解:④ ①:株式発行により集めた資金は、他人資本ではなく自己資本です。他人資本とは、社債の発行や借入によって調達した借金のことを指します。②:株主に還元する利潤は利子ではなく配当です。株式会社についてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事「経済の仕組みと会社の種類について解説(問題演習つき)【経済第1回】」もご参照ください。③:中小企業は、事業所数で全企業の約99%を占めています。一方、従業員数は約70%程度なので、間違いとなります。

 

まとめ

今回は、農業・中小企業問題について解説しました。

 

この記事を読んで、戦後の日本で行われた農業政策の内容や、現代の日本が抱える農業・中小企業に関わる課題をしっかり把握していただければ幸いです。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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