明治時代の産業についてわかりやすく解説(入試問題・語呂合わせつき)【日本史第70回】

今回のテーマは明治時代に始まった日本の産業革命です。

 

八幡製鉄所の設立・鉄道国有法の制定など、各業種の重要な内容について解説しています。

 

最後には語呂合わせや入試問題も用意しているので、ぜひ最後までお読みください。

この記事からわかること

・金本位制の確立

・各業種の動向

・社会運動の発生

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日本の産業革命

(銀通貨:wikiより)

産業革命

(金通貨:wikiより)

1880年代前半の松方財政で日本は深刻なデフレに陥りました。しかし貿易の輸出超過・銀本位制の確立にともなって物価が安定し始めると、産業界は活気づきます。

 

1886~89年には鉄道や紡績を中心に会社設立ブーム(企業勃興)が起こり、日本でも機械技術を本格的に導入した産業革命が始まりました。

 

また1897年に貨幣法を制定し、日清戦争で得た賠償金を準備金として金本位制を確立します。金本位制とは金を通貨価値の基準とする制度です。欧米諸国にならって採用されました。

 

次の項目からは紡績・鉄道・重工業など各分野の動向を見てまいります。

 

S先生
S先生
世界史で登場する産業革命についてはこちらの記事「【世界史B】受験に役立つヨーロッパ史(イギリスの自由主義改革)【近現代編その2】」もあわせてご参照ください。

紡績・製糸

(東洋紡:wikiより)

日本の産業革命の中心は、紡績業です。当初紡績業はイギリス製綿製品の輸入に圧迫されており、衰退していました。

 

しかし飛び杼を採用した手織機で綿織物生産が復活へと向かいます。飛び杼とは、綿織機の経糸(たていと)に緯糸(よこいと)を通すための機械です。イギリスのジョン=ケイが1733年に発明しました。

 

さらに1883年には渋沢栄一らが大阪紡績会社(今の東洋紡)を開業します。大阪紡績会社は当時主流だった手紡やガラ紡による綿糸生産とは違い、イギリス製の機械や蒸気力を取り入れ、成功を収めました。

 

大阪紡績会社の成功に触発された商人があいついで会社を設立し始めて機械制生産が急増した結果、1890年には綿糸の生産量が輸入量を上回ります。1897年には輸出量も輸入量を上回りました。

 

綿織物業では豊田佐吉の国産力織機が農村を中心に普及し、1909年に綿布の輸出額が輸入額を上回ります。

 

綿糸や綿織物の輸出が増加した一方で、原料の綿花は中国・インド・アメリカからの輸入に依存したため、綿業の輸入超過は拡大しました。

それゆえに国産の繭(まゆ)を原料とする生糸の輸出によって外貨の獲得を目指す、製糸業の役割が必要不可欠でした。

 

幕末以来、生糸は最大の輸出品であり、1909年には清国を抜いて世界最大の生糸輸出国となりました。当初は簡単な手動装置による座繰製糸が普及したものの、 次第に器械製糸に取って代わられます。

また1894年には器械製糸の生産量が座繰製糸の生産量を上回ったことをおさえておきましょう。ちなみに器械製糸とは、水力や蒸気力を動力として糸を巻き取る技術のことです。

鉄道

(1885年当時の上野駅:wikiより)

鉄道業では、まず1881年に日本鉄道会社が設立されたことを覚えておきましょう。日本鉄道会社は、華族の出資により設立された企業で政府の保護を受け、成功を収めました。

その結果会社設立ブームが起き、1889年には営業キロ数で民営が官営を上回ります。

 

しかし1906年に第1次西園寺内閣が鉄道国有法を公布したため、民間鉄道の17社は買収され、国有化されることになりました。

 

S先生
S先生
鉄道国有法とは、全国鉄道網の統一的管理を目指すための法令です。

重工業

(八幡製鉄所:wikiより)

軍事工場と鉄道を除く官営事業は、1880年代の半ばから次々と民間に売却されていきました。この動きを官営事業払下げといいます。払い下げの恩恵を受けた三井・三菱などは、のちに財閥へと成長しました。

 

重工業部門で最も重要な出来事は八幡製鉄所の設立(1897)です。八幡製鉄所は官営軍事工場の拡充を進めるのと同時に、重工業の基礎となる鉄鋼の国産化を目指して作られました。

 

1897年に設立されたのち、1901年に操業を開始します。 日露戦争後には、日本製鋼所など、民間の製鋼会社の設立も進みました。

 

また水力発電も本格的に始まり、大都市で電灯の普及が始まったこともあわせて知っておいてください。

農業

(桂太郎:wikiより)

松方財政でのデフレ政策により、自作農が土地を手放して小作農に転落する一方、大地主のもとに土地が集中しました。そのため1880年代以降小作地率が上昇し続けます。

 

なかには、小作農に田んぼを貸して小作料(レンタル料)を取り立て、自らは農業には従事しない者も出現しました。彼らを寄生地主といいます。地主は小作料収入をもとに会社を設立したり公債や株式に投資したりする一方、農村はますます貧困化していきました。

 

S先生
S先生
第2次桂太郎内閣は農村の窮乏化に対応するため、地方改良運動で地方の財政再建や農業振興を進めました。

海運

(日本郵船:wikiより)

政府は外貨節約・戦時の軍用船確保を目的として、1896年造船奨励法航海奨励法を公布しました。こうした海運業奨励政策により、日本郵船会社などが次々と遠洋航路を開拓したことをおさえておいてください。

社会運動

(田中正造:wikiより)

工場制工業が盛んになるにつれて賃金労働者が増加しました。

 

一方で労働者は低賃金で長時間働かされたことから、日清戦争前後になるとストライキを起こし、待遇改善や賃金引上げを要求し始めます。1897年には高野房太郎らが労働組合期成会を結成し、労働運動の指導にあたりました。また労働組合も組織され、資本家に対抗し始めるようになります。

 

対して政府は1900年に治安警察法を制定し、労働運動を厳しく取り締まりました。しかし1911年には工場労働者を保護するための工場法を制定し、労使対立の緩和を図ります。ところが工場法の内容には大きな不備があったうえ、施行も5年後にずれ込みました。

S先生
S先生
1891年には足尾鉱毒事件が発生し、大きな社会問題になりました。栃木県選出の衆議院議員であった田中正造が明治天皇に事件について直訴しようとしたことも覚えておいてください。

 

今回の範囲はここまでです。続いて語呂合わせ・入試問題を用意しているので、ぜひチェックしてみてください。

語呂合わせ

ここでは今回登場した重要なキーワードにまつわる語呂合わせを紹介しています。年号の暗記にお役立てください。

八幡製鉄所開業:八幡製鉄所に行くわい(1901)

鉄道国有法:行くぜ路(1906)線で国有法

入試問題にチャレンジ

下線部ⓑ(大地主や商工業者)に関連して、明治期の経済に関して述べた文として正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

①三井、三菱などの財閥の出資によって、八幡製鉄所が設立された。

②1880年代のデフレーションによって、小作地率は低下した。

③地主は、株式・公債などへの投資に消極的になっていった。

④官営の工場は、あいついで民間に払い下げられていった。

2015年 センター試験 本試験 日本史B 第5問 問3より)

 

正解:④ 八幡製鉄所は財閥の出資によって設立されたわけではなく、官営の製鉄所なので、①は誤りです。また松方財政でデフレに陥った際には、自作農が窮乏化して小作人に転落したため小作地率は上昇しました。よって②も間違いです。さらに地主は小作料収入で得た収益を株式や公債に投資をしたことから、③も誤っています。したがって正解は④です。

 

まとめ

今回は明治時代の産業について見てまいりました。

 

それぞれ業種でどのような変化があったのかしっかりと理解しておいてくださいね。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

前回の記事「日露戦争・韓国併合についてわかりやすく解説【日本史第69回】」ですのでよければ読んでください。

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次回の記事「明治時代の教育についてわかりやすく解説【日本史第71回】

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