「数学IA」の正弦定理・余弦定理について公式とともに定理を紹介していきます。
正弦定理・余弦定理とは三角比で定めた定義を別の切り口から見ると、別の新しい定理も見つかったという内容です。つまり、正弦定理・余弦定理は三角比を理解していれば心配ありません。
正弦定理とは三角形の内角のsinとその対辺の長さの関係を示したもので、余弦定理とは三角形の辺の長さと内角の余弦の間に成り立つ関係を与える定理を言います。ちなみに、正弦とは(sin)のことで、余弦とは(cos)のことを指します。
正弦定理・余弦定理の分野は、特にセンター試験において、毎年必ず出されている平面図形問題を解くのに欠かせません。でも、新しく出てくる定理はたった2つだけです。重要なのは、正弦定理・余弦定理の2つの定理をどう使うかの判断だけです。繰り返し使ってみて、定着させましょう。
今回の記事のポイント・正弦定理とは何か、公式とともにその証明をする
・余弦定理とは何か、公式とともにその証明をする
・正弦定理と余弦定理を実際の入試問題で使い方をマスターする
正弦定理とは!?
定理とは、定義を定めたことによって導き出される命題のことで、定義が土台です。正弦定理とは、正弦(sin)の定義を決めたことから導き出された性質で、正弦(sin)と三角形の長さの関係を表しています。

正弦(sin)の定義、思い出せますか?

えっと…どれがどれだっけ?
定義が思い出せない人は、もう一度思い出してみましょう。「【数学IA】三角比をマスターしましょう!」をみてしっかり復習をして下さい。
正弦定理とは以下の定理を言います。
下図のように3辺の長さがa,b,c で、辺に対する角がA,B,C である△ABC において、外接円(三角形のすべての頂点を通る円)の半径をR とすると、asinA=bsinB=csinC=2Rとなる。

この式は、三角形の内角の正弦(sin)とその角と向かい合う辺の長さの比はどの角でも一定であり、ある辺の長さを向かい合う角の正弦(sin)で割った値は、外接円の半径の2倍(=直径)になることを意味します。この定理によって、辺の長さと角度を結びつける新しい概念である三角比のうち、sin と外接円の半径が結びつけられました。

問題を解いていて、「外接円の半径を~」という文言が出てきたら、これかな?と思い出せるようにしてください。
正弦定理の証明
では、正弦定理の証明をします。

中学校で習った円周角の定理を使いますが、覚えていますか?

円周角の定理とは、ある円弧に対する円周角の大きさは中心角の半分で一定という定理でした。
三角形の角は、0 度より大きく、また180 度を越えることはないので、証明は、鋭角・直角・鈍角の3つの場合に分けて進めていきます。
この3つの場合すべてで証明できれば、あらゆる角度に対して正弦定理を証明できたことになります。また、1つの角について証明できれば、他2つの角についても同じ考え方で証明できます。
証明自体は覚える必要はありません。ただ、どのような考えを経て結論に辿り着いたかは理解しておいてください。
∠A が鋭角のとき
△ABC の外接円上に点D を∠BCD が直角になるように置くと、円周角の定理より、∠A=∠D⋯(ア)となる。また、∠BCD が直角なので、線分BD は直径で、BD=2R⋯(イ)となる。
△BCD は直角三角形なので、BC=BDsin∠D⋯(ウ)である。
式(ウ)に、式(ア)および式(イ)を代入して、
a=BC=2Rsin∠A となり、式変形すると、
asinA=2R
鋭角の場合について、正弦定理が証明されました。
∠A が直角のとき
\angle A=90° のとき、\sin \angle A=1 であり、また線分BC は直径なので長さは2R である。
よって、a=2R\sin \angle A となり、式変形して、
\dfrac{a}{\sin A}=2R
\angle A が鈍角のとき
\angle A が鈍角のとき、\angle BCD が直角で、\angle A=\angle D となる点D を置くことができないので、線分BC を挟んで点A と反対側に、\angle BCD が直角になるような点D を置きます。
すると、四角形ABDCは円に内接するので、向かい合う角の和は180°、つまり\angle A+\angle D=180° となります。ここから、\angle D=180°-\angle A なので、
\sin \angle D=\sin(180°-\angle A)=\sin \angle A\cdots(ア)
また、triangle BCD は直角三角形なので、BC=BD\sin \angle D\cdots(イ)およびBD=2R\cdots(ウ)が成り立つ。
式(イ)に、式(ア)・式(ウ)を代入して、
a=BC=2R\sin \angle A となり、式変形すると、
\dfrac{a}{\sin A}=2R が証明された。
以上より、正弦定理とその証明でした。
余弦定理とは!?
次は余弦定理です。正弦定理が、三角形のある角の正弦\sin と辺の長さの関係を表していたように、余弦定理は、三角形のある角の余弦\cos と辺の長さの関係を表します。

この式は、2つの辺の長さとその間の角の余弦(\cos)がわかれば、残りの辺の長さもわかることを意味します。
余弦定理も証明します。定理を証明する問題は、最近になって入試でもよく出題されるようになってきました。すべてを覚える必要はありませんが、どういった考えを経て定理が証明されているのかみておきましょう。
\triangle ABC において、頂点C から辺AB へ垂線を下ろして、その交点をH とおきます。
すると、CH=b \sin \angle A, AH=b \cos \angle A となります。
これより、BH=c-AH=c-b \cos \angle A
\triangle BCH に関する三平方の定理より、BC^2=BH^2+CH^2
それぞれの値を、この式に代入して、
$
\begin{array}{rcll} a^2&=&(c-b \cos A)^2+b^2 \sin^2 A\\ &=&c^2-2bc \cos A+b^2 \cos^2 A+b^2 \sin^2 A\\ &=&c^2-2bc \cos A+b^2\left\{\sin^2 A+\cos^2 A\right\}\\ &=&b^2+c^2-2bc \cos A \end{array}
$
以上より、余弦定理が導かれました。ちなみに、余弦定理は、式変形して下の形でもよく使われます。
正弦定理と余弦定理はどう使うの?
正弦定理と余弦定理、およびそれぞれの証明を見てきました。では、これらの使い分けはどうなるでしょう?混乱する人が多いので要注意です!
例題を解きながら、どんな場合にどちらの定理を使っているか見てみます。
例題\triangle ABC において、
(1) BC=8, \angle A=45° のとき、外接円の半径R を求めよ。
(2) BC=\sqrt{6}, AC=\sqrt{3}, \angle A=45° のとき、\angle B を求めよ。
(3) AC=8, BC=5, \angle C=60° のとき、AB を求めよ。
(4) AB=7, BC=3, AC=5 のとき、\angle C を求めよ。
簡単でいいので、図を描きましょう。わかっているところはわかっているとおりに描きますが、わかっていないところは特にこだわらずに描いて構いません。図を描く目的は、与えられた値を視覚的かつ正確に認識することと、答えが出たときにその答えが現実的か確認することです。
正弦定理と余弦定理のどちらを使うかは、式を思い浮かべたり、あるいは式を見ながら、与えられた値と求める値は何か考えて判断しましょう。
(1) 「外接円」と問題文に出てきたら、迷わず正弦定理です。
$
\begin{array}{rcll} 2R&=&\dfrac{BC}{\sin A}\\ &=&\dfrac{8}{\sin 45°}\\ &=&\dfrac{8}{\frac{1}{\sqrt{2}}}\\ &=&8\sqrt{2} \end{array}
$
以上のことから$2R=8\sqrt{2}$となるので、Rは…。なお、図は下のようになります。
よって、
(2) ある角とその向かい合う辺の長さが与えられているときも、正弦定理です。図は上を見てください。
\dfrac{AC}{\sin B}=\dfrac{BC}{\sin A} より、
$
\begin{array}{rcll} \sin B&=&\dfrac{AC}{BC}\sin A\\ &=&\dfrac{\sqrt{3}}{\sqrt{6}}\sin 45°\\ &=&\dfrac{1}{\sqrt{2}} \dfrac{1}{\sqrt{2}}\\ &=&\dfrac{1}{2} \end{array}
$
よって、\angle B=30°, 150°
\triangle ABC は三角形なので、
(3) 求める角は与えられた角と向かい合っており、他に与えられた値は残りの2辺です。こういった場合は、余弦定理を使います。図は下にあります。
$
\begin{array}{rcll} AB^2&=&BC^2+AC^2-2BC\cdot AC \cos C\\ &=&5^2+8^2-2\cdot 5\cdot 8\cos 60°\\ &=&25+64-40\\ &=&49 \end{array}
$
AB>0 より、
(4) 3辺の長さを与えられているので、余弦定理を式変形して使います。図は上を見てください。
AB^2=BC^2+AC^2-2BC\cdot AC \cos C より、
$
\begin{array}{rcll} \cos C&=&\dfrac{BC^2+AC^2-AB^2}{2BC\cdot AC}\\ &=&\dfrac{3^2+5^2-7^2}{2\cdot 3\cdot 5}\\ &=&\dfrac{9+25-49}{2\cdot 3\cdot 5}\\ &=&-\dfrac{1}{2} \end{array}
$
よって、
正弦定理・余弦定理が何と何の関係を表しているのかをしっかり理解することと、与えられた値と求める値がどのような関係なのかを把握することが、解答の糸口になります。
最後に、センター試験で過去に出題された問題を解いて、理解を深めます。単に正弦定理・余弦定理を使うだけでなく、最大・最小の問題も絡めてあり、面白い問題です。
このとき、AC=\text{( ア )}, \sin \angle ABC=\dfrac{\sqrt{\text{( イ )}}}{\text{( ウ )}} であり、\sin \angle BCA=\dfrac{\text{( エ )}\sqrt{\text{( オ )}}}{\text{( カキ )}} である。
直線BC 上に点D を、AD=3\sqrt{3} かつ\angle ADC が鋭角となるようにとる。点P を線分BD 上の点とし、\triangle APC の外接円の半径をR とすると、R のとり得る値の範囲は\dfrac{\text{( ク )}}{\text{( ケ )}}\text{≦}R\text{≦}\text{( コ )} である。
まずは、問題文の条件を図にします。
はじめに求める値はAC ですが、わかっている値の中に「ある辺の長さ」と「その辺に向かい角」の組み合わせがないため、使うのは余弦定理です。
$
\begin{array}{rcll} AC^2&=&AB^2+BC^2-2AB\cdot BC \cos \angle ABC\\ &=&3^2+5^2-2\cdot 3\cdot 5\cos 120°\\ &=&9+25+15\\ &=&49 \end{array}
$
AC>0 より、AC=7
\angle ABC=120° より、\sin \angle ABC=\dfrac{\sqrt{3}}{2}
ここまでで、わかっている値の中に「ある辺の長さ」と「その辺に向かい角」の組み合わせができ、また、次に求める値は\sin \angle BCA なので、正弦定理を使います。
\dfrac{AC}{\sin \angle ABC}=\dfrac{AB}{\sin \angle BCA} より、
$
\begin{array}{rcll} sin \angle BCA&=&\dfrac{AB\cdot \sin \angle ABC}{AC}\\ &=&\dfrac{3\cdot \frac{\sqrt{3}}{2}}{5}\\ &=&\dfrac{3\sqrt{3}}{14} \end{array}
$
ここまでは、基本どおりに正弦定理・余弦定理の公式を使えば解けます。ここからが応用です。
問題文の条件を、最初の図に追加します。
点P は、点B から点D の間を動きます。ここから外接円の半径に関して解くので、正弦定理を使うことはわかります。では、どの角を使うのがいいでしょうか。
点P が動くので、\triangle APC の3つの角のうち、\angle APC, \angle PAC は変化します。残りの\angle ACP が一定なので、この角を使います。
2R=\dfrac{AP}{\sin \angle ACP} より、
$
\begin{array}{rcll} R&=&\dfrac{AP}{2\sin \angle ACP}\\ &=&\dfrac{14}{2\cdot3\sqrt{3}}AP\\ &=&\dfrac{7\sqrt{3}}{9}AP \end{array}
$
これより、R の範囲は、AP の長さの最大値と最小値で求められることがわかります。
まず、AP が最大になるとき、P=D となり、AP=3\sqrt{3}
また、AP が最小になるのは、BD と点A から下ろした垂線との交点H と点P が一致するときで、\triangle ABH は\angle ABH=60° の直角三角形ということから、AP=\dfrac{3\sqrt{3}}{2}
よって、AP の範囲は、\dfrac{3\sqrt{3}}{2}\text{≦}AP\text{≦}3\sqrt{3}
これより、\dfrac{7}{2}\text{≦}AP\text{≦}7
よって、
(カ)1 (キ)4 (ク)7 (ケ)2 (コ)7
以上です。
今回のまとめ
センター試験でよく出される正弦定理・余弦定理について説明しました。どの値がわかっているときにどちらの定理を使うかという判断がとても重要です。
ただ、解いていて感じた方もいるかと思いますが、正弦定理は使えるときの条件が限定されていて、とても判断しやすいです。練習を重ねて、しっかり理解しましょう。
詳しい内容については「眠れなくなるほど面白い 図解 数学の定理」が面白いです。ぜひとも一読して下さい。
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