今回のテーマは、政党政治です。この記事で学べる内容は以下のとおりです。
この記事からわかること
・政党政治の目的・種類
・日本の政党政治の歴史
・戦後日本の政党政治の特徴
・政党と圧力団体の違い
はじめて政党政治を学ぶ方でも内容が理解できるよう、わかりやすく解説しています。
また記事の後半には、今回のテーマに関連した入試問題を用意しました。学習した内容のおさらいもできるので、最後まで読んでみてください。
政党政治とは
(自民党:wikiより)
政党政治とは、政党が中心となっておこなわれる政治です。
政党とは、政治的な主張の近い人々が集まって政権の獲得を目指す集団です。
日本国憲法には政党に関する条文はありません。しかし政党は、民主政治において重要な役割を担っているのです。
政党政治の仕組み(オリジナル)
選挙ではそれぞれの政党が公約を示して戦います。
選挙で勝利した政党が政権を運営し、敗れた政党は勝利した政党と国会で政策論争を繰り広げます。政権を担当するのが与党、政権の座についていないのが野党です。
そして各政党は、選挙時に掲げた公約の実現を目指して活動しています。
政党政治の目的は、スムーズに政策決定をおこなうためです。
もし政党が存在しなかったらどうなるか想像してみてください。
政治家からさまざまな意見が出るだけで、結論がまとまらないですよね。スピーディに物事を決めるのに、政党政治はうってつけなのです。
政党政治には、二大政党制・多党制・一党独裁制の3種類あります。
二大政党制は、強力な二大政党が交互に単独で政権を担う政治体制です。イギリスやアメリカで採用されています。
多党制は、単独では政権を取れない政党が多数存在している政治体制です。多党制を導入している国には、フランス・ドイツ・イタリアなどがあります。
一党制は、絶大な力をもった1つの党だけが政権を運営している政治体制です。中国やベトナムで取り入れられています。
メリット | デメリット | |
二大政党制 | ・政局が安定する ・政治責任が明確になる ・政権交代が容易 ・有権者が支持政党を選択しやすい | ・特定の政党が長期間にわたり、政権を独占する可能性がある ・少数派の意見を反映しにくい ・連立政権になることが多く、 政局が不安定になりがち ・政治責任が不明確になる |
多党制 | ・多様な民意を国政に反映させられる ・柔軟な政策が期待できる | ・連立政権になることが多く、 政局が不安定になりがち ・政治責任が不明確になる |
一党制 | ・政局が安定し、長期化する ・強力な政策の実現が可能 | ・民主的な政権交代が不可能 ・世論が無視される ・少数の幹部の独裁になり、 政治の腐敗が起きやすい |
政党政治の種類(オリジナル)
日本の政党政治の歴史
(政権交代:wikiより)
戦前の政党政治
日本で政党政治がはじまったのは、第二次世界大戦前です。1918年に初の政党内閣である原敬内閣が成立すると、1930年代前半まで政党内閣の時代が続きました。
しかし1932年に5・15事件で犬養毅首相が暗殺されると、風向きが一変します。軍部の影響力が強まり、1940年には大政翼賛会が結成され、すべての政党は解散に追い込まれました。
戦後の政党政治
1945年8月に第二次世界大戦が終結すると、政党政治が復活します。1955年には自由民主党と日本社会党の二大政党が対抗しあう、55年体制が成立しました。
1960年代になると多党化が加速し、党の分裂・合同が相次いだものの、自民党優位の時代は変わらず続きました。
ところが1993年の衆議院議員選挙で自民党は過半数に届かず、反自民・非共産の連立政権が誕生します。総理大臣を務めたのは、日本新党の細川護煕(もりひろ)氏です。
細川内閣の誕生により、38年間続いた55年体制は崩壊しました。
1990年代後半は自民党を中心とした政権が続いたものの、2009年には民主党へ政権交代し、鳩山由紀夫内閣が発足します。
しかし2012年に自民党が政権を奪還し、第2次安倍晋三内閣が誕生しました。2010年代後半〜現在は自民党優位の時代に戻っています。
戦後日本の政党政治の特徴
戦後日本の政党政治の特徴は、以下の6つです。
- 政党内で派閥が形成される
- 資金面で企業や労働組合からの団体献金に依存しがち
- 選挙では候補者個人の後援会に票集めを頼る場合が多い
- 党議拘束が強い
- 世襲議員が数多くいる
- 官庁や圧力団体と結びついた族議員が、政策決定に強い影響力をもっている
派閥・党議拘束・世襲・族議員…聞き慣れない言葉がたくさんだぁ…
派閥とは、人脈や利害関係で結びついた政治家の集団のことです。
自民党内にも派閥があります。岸田文雄首相が会長を務める宏池会(こうちかい)や、麻生太郎氏が会長を務める志公会(しこうかい)が代表例です。
また党議拘束とは、法案採決に際し党内の方針に従って投票するよう、所属議員に求めることを指します。
世襲議員は親族が議員であり、彼らの選挙区を引き継いで当選した国会議員のことです。
一方特定の政策分野で強い発言力をもつ議員を、族議員といいます。族議員は特定の業界団体と利害関係でつながっていることが多く、業界の代弁者として政策の形成に強い影響力を及ぼしています。
政党と圧力団体の違い
(日本経団連:wikiより)
圧力団体とは、政府や議会に圧力をかけて、自分たちの特殊利益を実現しようとする集団です。20世紀初めにアメリカで生まれました。
日本で誕生した圧力団体の主な例は、以下のとおりです。
- 経済団体(例:日本経団連)
- 業界団体(例:農協・日本医師会)
- 労働団体(例:連合)
圧力団体は自分たちの団体の意向を政治に反映させるため、積極的に政治活動をおこなっています。
圧力団体が政党と異なる点は以下の3つです。
- 政権の獲得を目指していない
- 国民的利益よりも、自分たちの特殊利益の実現を目指す
- 政治責任を問われない
圧力団体のメリットとしては、
- 情報提供や政策提言を通じて、政党の政策形成を促す
- 各業界の要求を国政へ伝えることで、民意と国政のパイプ役を担っている
- 国民向けに社会的な問題提起や情報提供をおこなう
の3つがあげられます。
一方問題点としては、以下の3つです。
- 資金力や集票力にモノをいわせて政治家と結びつき、政治腐敗を招く
- 行政が生産者団体の意向ばかりを重視し、消費者の利益が行政に反映されない
- 圧力団体を組織できない一般国民の利益が損なわれる
入試問題にチャレンジ
問 下線部ⓐ(さまざまな考え方や利害関係を有する人々)に関連して、利益集団(圧力団体)についての記述として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 政府や議会に働きかけて政策決定に影響を与え特定の利益を実現しようとする集団のことを、利益集団という。
② 政治的な主張の近い人々が集まって政権の獲得を目的として活動する集団のことを、利益集団という。
③ 日本においては、利益集団の代理人であるロビイストは国会に登録され活動が公認されている。
④ 日本においては、利益集団のニーズに応じて利益誘導政治を行うことが推奨されている。
圧力団体に関する正しい説明です。②:圧力団体の説明ではなく、政党の説明です。③:日本でロビイストは公認されていないので誤りです。ちなみにアメリカのロビイストは、登録制で、政策決定や立法に影響を与えています。④:みずからの特殊利益の獲得を目指す圧力団体と政治の結びつきが強くなれば、政治の腐敗が進む可能性があります。よって日本では、利益誘導政治は推奨されていません。
まとめ
今回は政党政治について学習しました。おさえておきたいポイントは以下の3つです。
- 政党政治には、二大政党制・多党制・一党制の3種類がある。
- 日本の政党政治の特徴としては、党内に派閥が形成される・党議拘束が強い・世襲議員が多いなどがある。
- 政党は政権の獲得を目的とする集団であり、選挙によって政治責任が問われる。一方圧力団体は、政権の獲得を目指しておらず、政治責任も問われない。
この記事を繰り返し読んで、政党政治の目的・種類・歴史・圧力団体との違いについて理解を深めていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「地方分権改革とは?メリット・デメリットや主な取り組みについてわかりやすく解説【政治第24回】」をご覧ください。
次回の記事「選挙制度とは?日本の選挙制度の仕組みや問題点についてわかりやすく解説【政治第26回】」をご覧ください。
政治経済を理解するには「蔭山の共通テスト政治・経済」がおすすめです。政治経済の細かいところまで解説してくれるので、受験生はぜひとも一読をするとよいでしょう。
コメント