みなさん、こんにちは。
今回のテーマは、社会権です。社会権の種類や、社会権に関する重要判例である朝日訴訟・堀木訴訟についてわかりやすく解説しました。
また記事後半には入試問題も用意しています。学習した内容をおさらいできるので、ぜひ最後までお読みください。
この記事からわかること
・社会権とは何か・種類
・生存権(社会権)に関する2つの重要判例(朝日訴訟・堀木訴訟)
社会権とは
(社会権:オリジナル)
社会権とは、人間らしい生活を保障するよう国に請求できる権利です。
日本国憲法では社会権として、①生存権②教育を受ける権利③勤労権④労働三権の4つを保障しています。
①生存権
生存権は憲法第25条1項に規定されています。また2項では、国に対して社会保障政策を実施するよう義務づけました。
第25条の内容を実現させるための具体的な法律としては、生活保護法・健康保険法などがあります。
②教育を受ける権利
第26条ではすべての国民に教育を受ける権利を保障すると同時に、義務教育の無償化を定めました。
③勤労権
勤労権とは、国家に対して労働の機会を与えるよう要求できる権利です。第27条に規定されています。
勤労権を実現するために、求職者に職業紹介を行う公共職業安定所(ハローワーク)が全国各地に設置されています。
④労働三権
労働三権とは、団結権・団体交渉権・団体行動権のことです。
団結権は労働組合を組織できる権利を指します。
団体交渉権とは、労働組合が使用者と労働条件などを交渉できる権利です。
団体行動権は労働者が待遇改善のためにストライキなどの団体行動を起こせる権利のことを表します。
労働三権は第28条で明記されており、第28条を反映した法律が労働基準法・労働組合法・労働関係調整法の労働三法です。
生存権(社会権)に関する判例
(最高裁判所:wikiより)
社会権の1つである生存権については、重要な判例が2つあります。1つ目が朝日訴訟、2つ目は堀木訴訟です。
朝日訴訟
原告の朝日茂さんは重度の結核で入院していたものの、身寄りがなく、生活保護法に基づいて医療扶助と月600円の生活扶助を受けていました。
しかし音信不通だった実兄が見つかり、月額1,500円の仕送りをしてもらえることになります。
ところが社会福祉事務所は、仕送りのうち600円を日用品費として朝日さんに渡す一方、残りの900円は医療費の自己負担分として納入するよう求めました。
朝日さんは月600円の日用品費では安すぎるとして厚生大臣に不服申し立てを行ったものの却下されたため、処分取り消しを求めて訴えを起こしました。
裁判中に朝日さんが亡くなったため、最高裁は訴訟の終了を宣言しましたが、生活保護基準に関して次のような意見を述べています。
特定の人権規定について、個々の国民に具体的権利を付与するものではなく、国家の努力目標を示したにすぎないとする考え方をプログラム規定説といいます。
堀木訴訟
原告の堀木フミ子さんは目に障がいを抱えており、障害福祉年金で生活していました。
あるとき離婚した夫との間に生まれた子供を養うため、児童扶養手当の受給申請をしたところ、児童扶養手当法の併給禁止規定に該当するとして申請を却下されてしまいます。
堀木さんは併給禁止規定が憲法第25条に違反するとして訴えを起こしました。
最高裁は朝日訴訟同様にプログラム規定説の立場をとり、併給禁止を法律で定めるかどうかは国会の広い裁量に委ねられているとして原告の訴えを退けました。
今回の範囲はここまでです。続いて入試問題を用意しているので、ぜひチェックしてみてください。
入試問題にチャレンジ
問1 下線部ⓑ(国はどこまで人々の活動にかかわるべきなのかな)に関連して、日本における、国民生活と国の施策との関係をめぐる最高裁判所の判断についての次の記述アとイの正誤の組合せとして正しいものを、下の①~④のうちから一つ選べ。
ア 最高裁判所は、薬局開設の許可基準として距離制限を設けることは、合理的な規制とは認められず、違憲であると判断した。
イ 最高裁判所は、児童扶養手当と公的年金の併給を禁止する児童扶養手当法の規定は、国会の立法裁量の範囲を超え、違憲であると判断した。
① ア 正 イ 正
② ア 正 イ 誤
③ ア 誤 イ 正
④ ア 誤 イ 誤
問2 下線部ⓓ(生活)に関連して、日本の社会保障をめぐる最高裁判所の判決と社会保険に関する記述として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 朝日訴訟の最高裁判決では、生活保護基準の設定が、厚生大臣の裁量の範囲を超えているとされた。
② 現行の公的年金の財源調達と保険給付は、積立方式を基本的な仕組みとしている。
③ 雇用保険の保険料については、原則として、事業主が負担しないとされている。
④ 堀木訴訟の最高裁判決では、障害福祉年金と児童扶養手当の併給の可否について決めることは、国会の裁量の範囲内とされた。
(2020年 センター試験 本試験 現代社会 第1問 問7より)正解:② 参議院議員の被選挙権年齢は30歳で、衆議院議員の被選挙権年齢は25歳ですが、同規定に対して違憲判決は出ていません。
問3 下線部ⓒ(人権の性質)について、人権は、自由権、社会権、参政権などに分けることができる。社会権についての記述として正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 不当に長く抑留された後の自白は、証拠とすることができない。
② 選挙権が国民固有の権利として保障されている。
③ 健康で文化的な最低限度の生活を営む権利が保障されている。
④ 思想および良心の自由は、侵害することができない。
まとめ
今回は、社会権について解説しました。
朝日訴訟・堀木訴訟の両方で登場したプログラム規定説の考え方をしっかりおさえておきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「人身の自由についてわかりやすく解説(入試問題も用意)【政治第12回】」をご覧ください。
次回の記事「参政権・請求権についてわかりやすく解説(入試問題付き)【政治第14回】」をご覧ください。
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