政治と国家の役割についてわかりやすく解説(入試問題つき)【政治第1回】

今回は、政治と国家の役割について取り上げます。

 

政治とは何かという基本的な部分から、国家の三要素・夜警国家と福祉国家の違い・法の種類まで幅広い内容を解説しました。

 

最後には入試問題も用意しているので、ぜひ最後までお読みください。

この記事からわかること

・政治とは何か

・国家が成立するために必要な3つの要素とは

・国家の役割~夜警国家と福祉国家の違い

・法の種類

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政治とは

(アリストテレス:wikiより)

政治とは、社会生活を営む人々のあいだで起こる意見の衝突や利害の対立をうまく調整して、社会秩序を維持しようとする活動のことです。

 

古代ギリシャの哲学者アリストテレスが「人間はポリス的(社会的)動物である」と述べたように、人間は家庭や学校、会社などの社会集団に属しながら生きています。

 

しかし、人々の感じ方はさまざまなので、考え方や利害が対立することもありますよね。

 

そうした衝突を調整して社会秩序を維持し、平和で安全な社会を実現するための活動こそが政治というわけです。

国家とは

(マックス=ウェーバー:wikiより)

国家の三要素

国家とは、一言でいえば政治が行われる場所です。社会生活を一定の秩序に従って運営し、国民の幸福と安全を維持する役割を担います。

 

国家は政治を進めるうえで、きちんとルールを定め、人々に守らせるための強制力が必要です。

 

そこで、国家は軍事・警察権をはじめ、刑罰権・裁判権・徴税権といった巨大な強制力を合法的に独占しています。これが国家権力と呼ばれるものです。

 

ドイツの社会学者マックス=ウェーバーは、権力者が支配を正当化し、人々の支持を獲得する方法を伝統的支配カリスマ的支配合法的支配の3つに分類しました。

 

詳しい内容については以下の表をご覧ください。

 

(支配の正当性の三類型をまとめた表:オリジナル)

 

田中くん
田中くん

国家ってどうすれば成立するの?

 

 

国家が成立するためには、国民はもちろん、②国家の秩序を維持するために不可欠な主権③主権の及ぶ領域(領土・領海・領空)が確定していることが必要です。この3つは国家の三要素と呼ばれます。

 

では主権の及ぶ範囲は、どのようにして決まるのでしょうか?

 

1994年に発効した国連海洋法条約では、基線から12海里以内を領海200海里以内を排他的経済水域と定めています。日本も1996年、同条約に批准しました。

 

S先生
S先生
領空については、領土・領海の上空までとしており、排他的経済水域の上空は含まれないので注意しましょう。ちなみに大気圏外は国家の主権が及ばないとされています。

国家の役割

19世紀の近代国家では、国民の自由な活動にできるだけ干渉しない夜警国家が理想とされました。夜警国家は、消極国家・小さな政府とも呼ばれます。

 

夜警国家において、政府の役割は国防・治安維持などに限定されました。

 

しかし、資本主義の発達にともない、貧困や失業といった問題が深刻化したことを受け、20世紀に入ると国民生活へ積極的に介入する福祉国家が理想とされるようになります。

 

福祉国家においては、社会的・経済的弱者を救うため、経済政策や社会保障政策を行うなど、政府の役割が大きくなりました。

 

ちなみに福祉国家は、積極国家・大きな政府とも呼ばれます。

法の種類

国家は、に基づいて組織され、法に従って権力を行使します。

 

ただひとえに法といっても種類はさまざまです。

 

表(オリジナル)

法は、大きく自然法実定法の2種類に分類されます。

 

自然法は時代や社会を超えて普遍的に通用する法のことです。一方、実定法は特定の時代や社会でのみ通用する法のことを指します。

 

また、実定法には、憲法や法律のように文章として書き表された成文法と、慣習法や判例法のように文章化されていないものの、法としての効力を持つ不文法の2つがあることをおさえておきましょう。

 

今回の範囲はここまでです。続いて入試問題を用意しているので、ぜひチェックしてみてください。

入試問題にチャレンジ

(冒頭省略)

18、19世紀の国家は財産権の保護や治安の維持などを主に担っており、その支出は小規模であった。このように国家の役割を、国防、司法、治安の維持に限定する考え方は「【ア】」観という。しかし、国家の役割を消極的にとらえる考えは、その後批判されるようになった。なぜならば、人々の市場における自発的な取引だけでは、社会的に望ましい結果がもたらされるとは限らないからである。

そのため、20世紀には、国家において政府の果たす役割が市場との関係で、かつてよりも重要性を高めた。たとえば、拡大する貧富の格差を是正するために、所得の再分配政策が多くの国で実施されている。また、電力など大規模な設備を必要とする分野では、独占が発生しやすいため、価格規制のような政府介入が必要になる場合もある。しかし、政府活動の非効率性が指摘され始め、その活動や裁量の範囲の妥当性が問われるようになった。

今日の国際情勢の変化は、国家の役割のあり方を改めて問い直すものとなっている。たとえば、冷戦の終結やテロの頻発などを受けて、国家の安全保障をめぐるさまざまな問題に対処するためには、政府の権限拡大が必要になることもあるだろう。しかし、これまで見てきたように近代国家の歴史が示すのは、【イ】が欠かせないということである。政府を私たちがいかにコントロールするのかという問題を、今後も私たちは考え続けなければならない。

問 本文中の空欄【ア】・【イ】に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。 

① ア 福祉国家 イ 国家の権力に対する憲法上の制約をなくす仕組み

② ア 福祉国家 イ 人々に対する国家の介入を制約する仕組み

③ ア 夜警国家 イ 国家の権力に対する憲法上の制約をなくす仕組み

④ ア 夜警国家 イ 人々に対する国家の介入を制約する仕組み

2018年 センター試験 本試験 政治・経済 第1問 問1より)

正解:④ ア:国家の役割は国防・治安維持など最小限にとどめるべきとする考え方を夜警国家といいます。福祉国家は、国民生活へ積極的に介入する国家のあり方です。イ:直前の文で「政府の権限拡大が必要になることもあるだろう」と述べたあとに、逆接の「しかし」と続いています。そのため、空欄には「人々に対する国家の介入を制約する仕組み」が入ります。

まとめ

今回は、政治と国家の役割について解説しました。

 

国家の三要素や夜警国家と福祉国家の違い、法の種類といった重要な内容はとくにみっちり復習しておきましょう。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

次回の記事「王権神授説と社会契約説の違いについてわかりやすく解説【政治第2回】」をご覧ください。

王権神授説と社会契約説の違いについてわかりやすく解説【政治第2回】
今回は、王権神授説と社会契約説の違いを解説しつつ、近代民主政治がどのように成立したかを見ていきます。 社会契約説を唱えた3人の思想家、ホッブズ・ロック・ルソーのそれぞれの国家論についてもわかりやすく解説しました。 最後には入試問題も用意して...

 

政治経済を理解するには「蔭山の共通テスト政治・経済」がおすすめです。政治経済の細かいところまで解説してくれるので、受験生はぜひとも一読をするとよいでしょう。

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