みなさん、こんにちは。高校数学ⅠAのコーナーです。今回のテーマは【背理法】です。
たかしくんのように背理法の問題につまづいてしまった人も多いはず。背理法は、「無理数であることの証明」によくつかわれます。背理法の例を確認して、背理法の証明をマスターしましょう。
今回は、背理法とはどういうものかを分かりやすく解説します。
・背理法の証明のやり方がわかる
・自分で実際に背理法の証明ができる
背理法とは?基本からわかりやすく解説
背理法とは、数学の証明方法の一つです。
命題Pが成り立たないと仮定して、仮定より矛盾する事柄が導かれることを示し、命題Pが成り立つことを証明するものです。
イメージしづらいですね…。かんたんにまとめると次のような仕組みです。
①命題Pが成り立たないと仮定する。
②「命題Pが成り立たない」という仮定と矛盾した結果がわかる。
③仮定が間違っている。(=命題Pは成り立つ。)
背理法の証明問題をわかりやくすく解説
背理法のイメージをつかんだところで、かんたんな例題を解いてみましょう。
$\sqrt{2}$が無理数であるとき、$1+\sqrt{2}$が無理数であることを証明しなさい。
今回証明したい命題は「$1+\sqrt{2}$が無理数であること」。
①まずは命題Pが成り立たないと仮定しましょう。
$1+\sqrt{2}$が有理数であると仮定します。
②次は「命題Pが成り立たない」という仮定と矛盾した結果を導きましょう。
どうすればいいの…とつまづいてしまいますね。
問題文をもう一度見てみましょう。「$\sqrt{2}$が無理数であるとき」という条件があります。この条件を生かすと解くことができそうです。
ここで、$1+\sqrt{2}=A$(Aは有理数)としてみましょう。
式を変形すると、$\sqrt{2}=A-1$となります。
$A-1$は有理数同士の引き算なので、右辺は有理数ですね。しかし、条件にある「$\sqrt{2}$が無理数」に矛盾します。
つまり、③仮定が間違っている(=$1+\sqrt{2}$が無理数)と考えられるわけです。
背理法と対偶の証明の違い
証明の方法として習った対偶法。命題が成り立たないときを考えるという点が共通していますね。
もしかして同じ?と思った人もいるかもしれませんが、まったくの別物です。これを機に、対偶をつかった証明方法をあらためて押さえておきましょう。
対偶とは、もとの命題を「$P$ならば$Q$」とすると「$\bar{Q}$ならば$\bar{P}$」のことを指します。
対偶の証明では、もとの命題の真偽と対偶命題の真偽は同じという性質をつかって、対偶命題が真であると示すことで、もとの命題が真であることを証明します。
つまり、対偶の証明は「$P$ならば$Q$」という命題(推論命題)に使われるものなのです。一方の背理法は、次に証明するように「$\sqrt{3}$が無理数」のような命題(断定命題)で使われます。
背理法を使って無理数の証明
ここまでの解説で、背理法についての理解がかなり深まったことでしょう。
最後に背理法をつかって無理数の証明をしてみましょう。
$\sqrt{3}$が無理数であることを証明しなさい。
①まず、命題Pが成り立たないと仮定しましょう。
$\sqrt{3}$が有理数であると仮定します。
②次に、「命題Pが成り立たない」という仮定と矛盾した結果を導きたいので、先ほどの例題のように数式をつくりましょう。
有理数の特徴を考えると、$\sqrt{3}=\frac{a}{b}$(a,bは互いに素な自然数)と表せます。
有理数の特徴は、こちらの記事が参考になります。
有理数とは?無理数とは?定義を明らかにして√が無理数と証明する【数学IA】
式を変形すると、$a=\sqrt{3}b$となります。
両辺とも正の数なので、ルートを外すために2乗してみましょう。
$a^{2}=3b^{2}$
$a^{2}$と$b^{2}$は互いに素なので、$a^{2}$は3の倍数、すなわちaは3の倍数であることが分かります。
ここで、$a=3k$(kは自然数)として、$a^{2}=3b^{2}$に代入してみましょう。
$\left(3k\right)^{2}=3b^{2}$
これを整理すると、$b^{2}=3k^{2}$
aとbは互いに素より、bとkも互いに素なので、$b^{2}$は3の倍数となります。すなわち、bも3の倍数です。
ここで、aもbも3の倍数という、仮定「$\sqrt{3}=\frac{a}{b}$(a,bは互いに素な自然数)」に矛盾する事柄が示されました。
したがって、③仮定が間違っている(=$\sqrt{3}$は無理数)といえます。
今回のまとめ
今回は、背理法について勉強しました。
断定的な命題の証明に背理法をつかうこと。背理法とは「命題が成り立たないという仮定の矛盾を示すことで命題を証明する」こと。背理法のポイントをしっかりと覚えておきましょう。
今回もおつかれさまでした。
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