みなさん、こんにちは。2021年から旧来のセンター試験に代わって、大学入学共通テストが始まります。大学入学共通テストは今までのセンター試験とは一味違ったテストになることは平成29年から平成30に試行されたプレテストを受けた人や教師陣からも言われています。
どんな試験なんだろう。
確実に言えるのは、問題の傾向や方針はこれまでとは一気に変わっています。これまでのセンター試験の過去問を大学入学共通テストにそのまま利用するのは難しくなってきてます。
今回、取り上げる「地理」についてもやはり、傾向が変わってきています。
具体的には、センター試験の地理では「知識の有無」を問うのに対し、大学入学共通テストの地理では「知識の理解・思考力」を問う問題が多くなっています。
また、その点について詳しくは「大学入学共通テスト・現代社会の対策(プレテストからの分析)」に記載していますのでご覧ください。
そこで、今回は平成30年のプレテストを分析し、どのような勉強法をすると良いのか問題を例に解説していきたいと思います。
大学共通テストの地理問題の実例解説
上記は、平成30年のプレテスト地理Bの第1問となります。
この問題において必要とされているのは、掲載されている地形の特徴的な点から、どのような経緯で形成された地形かを判断し、後段の文中へ当てはめる力です。
それでは、実際に問題を見てみましょう。第一問をそのまま引用します。
図 1 では,海岸線とほぼ( ア )して,細長い島々が配列している様子が 読み取れる。これは,海岸線と同じ向きの稜線をもった地形が沈水し,稜線の 一部が沈水から取り残されて島々ができたことを示している。すなわち, 図 2 にみられる海岸付近の山地と島に挟まれた海域は,雨水や河川など主に ( イ )営力により形成された谷に,海水が侵入してできたものと考えられ る。
- 1 .ア 直交 イ 外的
- 2.ア直交 イ 内的
- 3.ア平行 イ外的
- 4.ア平行 イ 内的
つまりは、掲載された情報から正しい知識を引き出すパターンマッチングを行う必要があるということです。
パターンマッチングの例として、この問題の回答プロセスを確認しましょう。まず、掲載されている地形に着目すると、この地形は海上に小さな島々が点在しています。また、文中から海岸と同じ向きを持つ稜線が枕水し、島が形成されたことが読み取れます。
これらの情報を整理すると、以下のような特徴が読み取れます。
読み取れる特徴
- 海岸線の近距離に島々が点在している
- 島々は稜線の一部が枕水することにより形成された
- 島々が形成される前の稜線は海岸線と同一方向である
また、稜線が枕水し小さな島々が形成された地形という点に焦点を当てると、このような経緯で形成される地形として、有名なものはリアス式海岸です。しかし、リアス式海岸は海岸線から垂直方向に並ぶため、3番の「平行」条件と合致しません。
そこで、リアス式海岸と同様の経緯で形成される地形として第一候補となるのがダルマチア式海岸というものです。これは、地形形成の経緯としてはリアス式海岸と同様ですが、異なる点は海岸線と水平に伸びるということです。
このことから、出題されている地形はダルマチア式海岸であることがわかります。前述のように、ダルマチア式海岸は外的要因によって侵食された稜線が沈水し、海岸線と平行な島々を形成するものですので、答えは③となります。
大学入学共通テストの地理問題の出題傾向:地形の特徴
引用:グーグルマップ
今回の問題で出題された場所は、画像でも示しているクロアチア領ダルマチア地方の島々です。この地形はダルマチア式海岸として名前の由来にもなるほど典型的な地形となっています。
このことから、このような地形に関連する地理の問題では形成経緯が特徴的な地形が出題されるものと思われます。
地形の形成過程が特徴的な場所として、試験でよく暗記の必要性を叫ばれているものはリアス式海岸です。しかし、今回の新共通テストでは有名なリアス式海岸ではなく同様の形成経緯を持つダルマチア式海岸が出題されました。
そのため、リアス式海岸のような王道のパターンだけでなく、扇状地と三角州のような似た形成経緯を持つ地形も含めて抑えておく必要があると思います。
入学共通テストの地理の勉強法とおすすめの参考書
今回のような問題で出題されるような地形というのは、多くの特徴を持ちます。しかしながら、地形の特徴を暗記する方法では忘れてしまうことも多いと思います。
そのため、このような地形の暗記には、地形が持つ特徴だけでなく、その特徴を形成過程、利用方法と体系的に紐付けることが重要です。
例えば、
リアス式海岸地形には島々が点在するという特徴があります。この特徴はリアス式海岸の形成過程でもある河川による侵食が原因です。侵食によって形成された地形のため、水深が深く入り組んだ地形となることから古くから港として使われていたという歴史があります。
このように、地形の形成過程、特徴、利用方法をストーリーのように関連させて覚えることで特徴を忘れた場合でも関連した知識から間接的に答えを導き出すことができると思います。
また、地理の勉強にあたって私がおすすめする参考書を紹介したいと思います。まずは「目からウロコの なるほど地理講義 地誌編」です。
この参考書は地理の勉強で推奨されがちな丸暗記を行わず、地形、天候、産業、経済と言った分野の「なぜそうなるのか」と言った原理的な説明を行っているところです。レビューでは大学受験だけでなく、社会人の教養として学ぶためにも使うことができる参考書と言われています。
また、地形以外にも地政学や経済的な側面で地理を勉強したい方には「経済は地理から学べ!」がおすすめです。
この参考書では、立地、資源、貿易、人口、文化と言った多角的な視点で地理と経済の密接な関係を紐解いています。地理という分野は社会とくくられる殆どの科目に密接に関連しています。
そのため、このような参考書で地理と他分野の関係性を理解することで更に皆さんの知識が強固なものになると思います。
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