今回は、国際収支について取り上げます。
経常収支・金融収支などの用語の意味・分類から、計上のルールまで幅広い内容を解説しました。
最後には入試問題も用意しているので、ぜひ最後までお読みください。
この記事からわかること
・国際収支とは何か
・経常収支・金融収支それぞれの定義と分類
・国際収支の計上のルールについて
国際収支とは
(財務省:wikiより)
国際収支の分類
国際収支とは、各国が一定期間(普通は1年間)に行った対外取引の受け取りと支払いの勘定を総合的に記録したものです。
国際収支は、経常収支・金融収支・資本移転等収支の3つに分類されます。
経常収支は、一国の対外的な収入と支出の差額です。経常収支も大きく3つに分類されます。
1つ目は、財・サービスの輸出入を示す貿易・サービス収支です。ここでのサービスとは、輸送・旅行だけではなく、通信や保険、特許などの知的財産も含まれます。
日本はもともと貿易黒字でしたが、2011年~2015年まで貿易赤字になり、その後黒字に回復したものの、2018~19年には再び貿易赤字に戻りました。
2つ目は、第一次所得収支です。雇用者への賃金の支払いや、対外金融資産から得られる利子・配当などの投資収益を示しています。
3つ目は、第二次所得収支です。食料などの無償援助や、国際機関への拠出金など対価をともなわない一方的なお金の移動を記録しています。
金融収支は、ある国が外国に保有する資産(対外資産)と外国がある国に保有する資産(対外負債)との差額です。直接投資・証券投資・金融派生商品・その他投資・外貨準備に分類されます。
資本移転等収支は、発展途上国に対する道路や港湾といった社会資本への無償援助などに関する収支です。
計上のルール
計上のルールは、非常にシンプルです。
経常収支についてはお金が国内に流入すればプラス、お金が海外へ流出すればマイナスにカウントされます。
例えば、自動車が海外へ輸出された場合を考えてみましょう。自動車が海外へ輸出されると、お金が国内に流入するので、貿易収支の項目にプラスとして計上されます。
逆に、自動車が海外から輸入された場合は、お金が国内から流出するため、貿易収支の項目にマイナスとして計上されます。
ただし、1点注意しなければならないのが、サービス収支の計上方法です。
例えば、海外への観光旅行が増加した場合、お金が国内から流出するため、サービス収支はマイナスになります。
逆に日本への観光旅行が増加した場合、お金が国内に流入するので、サービス収支はプラスとして計上されます。間違って覚えないように気をつけましょう。
では、金融収支はどのように計上されるでしょうか。金融収支の場合は海外に投資をしたらプラス、海外から投資をされたらマイナスとして計上します。
例えば、日本企業が直接投資を行い海外に工場を建設した場合、海外に投資をしているわけですから、金融収支はプラスになりますよね。
逆に、外国企業が直接投資を行い日本に工場を建設した場合、金融収支はマイナスとして計上されます。
今回の範囲はここまでです。続いて入試問題を用意しているので、ぜひチェックしてみてください。
入試問題にチャレンジ
問1 生徒たちは、経済のグローバル化によって、人々の雇用や生活がさまざまな影響を受けると考え、経済の国際的なやりとりについて調べることにした。
次の図は、A国とB国との間で一年間に行われた経済取引をドル換算で表したものである。A国がB国以外の国との取引を行わなかったとすると、A国の貿易・サービス収支、第一次所得収支、第二次所得収支の金額の組合せとして正しいものを、下の①~⑧のうちから一つ選べ。
(注)外国人労働者はA国の居住者とする。
(単位:億ドル)
(2021年 共通テスト 本試験 政治・経済 第3問 問6より)
問2 下線部ⓑ(経常収支)についての記述として正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 経常収支には、旅行や輸送によって生じる収支が含まれる。
② 経常収支に、雇用者報酬は含まれない。
③ 経常収支に、消費財の無償援助は含まれない。
④ 経常収支には、直接投資が含まれる。
一つひとつの取引が「貿易・サービス収支」「第一次所得収支」「第二次所得収支」のどれに当てはまるのか、ていねいに分類していくことがポイントです。また、矢印の向きに注目することも重要ですよ。
まず1つ目の矢印「株式の配当」ですが、これはA国がB国に対して株式投資を行い、リターンとして配当を得たわけですから、第一次所得収支に該当します。
2つ目の矢印「医薬品のための無償資金援助」は、第二次所得収支です。
3つ目の矢印「特許使用料」は、貿易・サービス収支に当てはまりますね。
4つ目の矢印「外国人労働者による家族への送金」は、外国人労働者による母国への援助と考えると、第二次所得収支に該当します。
5つ目の矢印「国債の利子」は、先ほどの「株式の配当」と同様、第一次所得収支です。
最後の矢印「電気機器の輸入代金」は、貿易・サービス収支ですね。
これを踏まえて、「貿易・サービス収支」「第一次所得収支」「第二次所得収支」を算出します。
貿易・サービス収支は、特許使用料(25億ドル)と電気機器の輸入代金(35億ドル)です。特許使用料は矢印の向きから判断すると、B国からA国へお金が流入しているので、プラスになります。逆に電気機器の輸入代金はマイナスになるので、貿易・サービス収支は-10億ドル(=25-35)です。
第一次所得収支の、株式の配当(40億ドル)と国債の利子(10億ドル)はともにB国からA国へお金が流入しているわけですから、いずれもプラスになります。よって第一次所得収支は50億ドル(=40+10)です。
第二次所得収支の、医薬品のための無償資金援助(5億ドル)と外国人労働者による家族への送金(10億ドル)はいずれもB国へお金が流出しているため、マイナスになります。したがって第二次所得収支は-15億ドルです。(=-5-10)以上より、正解は③となります。
②・③:経常収支には、旅行や輸送によって生じる収支や、雇用者報酬・消費財の無償援助が含まれます。
④:直接投資は、金融収支に含まれるので、間違いです。
まとめ
今回は、国際収支について解説しました。
この記事を読んで、経常収支の分類や計上方法をしっかりマスターしていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「比較生産費説(比較優位など)についてわかりやすく解説【経済第15回】」ですのでよければ読んでください。
次回の記事「外国為替についてわかりやすく解説(入試問題つき)【経済第17回】」をご覧ください。
政治経済を理解するには「蔭山の共通テスト政治・経済」がおすすめです。政治経済の細かいところまで解説してくれるので、受験生はぜひとも一読をするとよいでしょう。
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