【世界史B】隋唐帝国と唐代の文化(受験に役立つ中国史)第5回
中国の歴史【古代・中世】
こんにちは。今回は隋唐帝国と唐代の文化について解説します。世界史の中国史の中でも受験でかなり出題される大きな範囲です。
今回の隋唐帝国と唐代の文化の内容として、まず、隋を建国した楊堅は南朝の陳を滅ぼし370年ぶりの統一王朝を樹立しました。しかし、隋は無理な外征や大土木工事のため短期間で崩壊。唐王朝が成立します。唐は世界でも屈指の強国となり、華やかで国際色豊かな文化を生み出しました。
隋唐の歴史の流れのみならず文化については繰り返しいろいろな大学で聞かれるのでしっかりと整理して勉強してください。この時代の特に隋末唐初の話は受験で勉強する以上に話として面白く「隋唐演義」という歴史小説で詳しく書かれています。「隋唐演義」自体は清初の褚人獲という人によって書かれましたが、安能務や田中芳樹などでリライトされていて面白いです。人間の欲望を極限まで著していて読み応え抜群の小説です。
今回の記事のポイント・隋の文帝は中国を統一。均田制や租庸調制、府兵制を採用
・隋の煬帝は大運河建設や高句麗遠征の失敗により国を混乱させ、隋を滅亡においやる
・煬帝の従兄弟の李淵は唐を建国。李淵の子、李世民の治世は貞観の治と称えられた
・高宗の時代、唐の領土は最大。
・武韋の禍の時代には則天武后や韋后が政権を握った
・玄宗の時代に唐は最盛期。開元の治と称えられた
・唐の都長安は国際色豊かな文化の中心地として繁栄
隋の統一

(隋の楊堅:wikiより)
577年、北周は北斉を滅ぼし、華北を統一しました。北周で政治の実権を握っていたのが外戚の楊堅です。581年、楊堅は北周の皇帝から禅譲され、隋王朝を開きました。のちに、楊堅は文帝とよばれます。
華北を統一した文帝は隋の都を現在の長安にあたる大興城におきました。今回のアイキャッチ画像は大興城の地図です。589年、文帝は南朝の陳を攻め滅ぼし、370年ぶりに中国を完全統一することに成功します。
文帝は国内整備に力を尽くした皇帝としても知られます。北魏由来の土地制度である均田制や均田制にもとづく税制である租庸調制を全国で実施します。さらに、西魏由来の府兵制を採用し軍事力を高めました。
安定した文帝の統治は「開皇の治」とよばれます。文帝の時代、後世まで中国の官吏登用制度の主軸となる科挙が実施されました。604年、文帝が死去すると楊広が隋の時代皇帝として即位します。のちの煬帝ですね。

S先生
楊堅の漢字は「木へん」で、煬帝は「火へん」なので注意してください。
煬帝は父の事業を引き継ぎ、軍事や政治の中心である華北と経済の中心である江南を結び付けようとしました。そのために行ったのが大運河の開削です。聖徳太子の使者・小野妹子が隋を訪れたのは煬帝の時代ですね。

たかし君
妹子てどんな美人だろうと思っていたけどゴツイおっさんなんすね。。

S先生
あんたね。日本の外交の命運かかっているのに適当な人物を使う訳ないでしょ。当時の冠位十二階の中でトップの人よ。
同時に、周辺諸国への軍事攻撃を行いました。特に北方遊牧民である突厥への攻撃や謀略は功を奏し、突厥は東突厥と西突厥に分裂しました。東突厥は隋に臣従しました。

612年、煬帝は朝鮮半島北部から中国東北地方に勢力を広げていた高句麗を攻撃するため、自ら軍を率いて出撃しました。しかし、高句麗は頑強に抵抗。3度にわたる隋の遠征軍を退けます。
高句麗遠征による負担の増大は国民の不満を招きました。隋の国内では有力者が反乱を起こし、各地の農民も蜂起します。群雄割拠する状況が生まれます。結果、煬帝は反乱軍により殺され、隋王朝は滅びます。

S先生
隋は581年〜618年という約30年間しか成立しなかった王朝です。しかしその時に遣隋使がきたりと日本では意外と大事な王朝です。
唐の成立と西域への勢力拡大

(李世民:wikiより)
各地で農民反乱などが勃発し混乱を極める中、山西の有力者で煬帝の従兄弟にあたる李淵は唐の建国を宣言します。隋の都である大興城を占領しました。李淵は大興城を長安と改名し唐の都とします。
626年、李淵の子である李世民は父を退位させ、自ら皇帝として即位します。のちに、李世民は唐の太宗とよばれます。太宗は三省六部とよばれる中央政府の統治機構を確立しました。
唐の行政機構:三省六部について
三省とは、中書省・門下省・尚書省の三つの省ことを指します。中書省は詔勅の草案作成を担当します。門下省が中書省から上がってきた詔勅案を審議します。門下省の審議を通過した詔勅が尚書省で実行されます。

S先生
皇帝の名前で出される命令書である詔勅は、中書省で草案が作成され→門下が審議→尚書が実行という流れね。
尚書省の下には六部とよばれる行政機関が設置されました。六部は官吏の任命を担当する吏部や戸籍や財政を担当する戸部、外交・祭礼・文教を司る礼部、軍事を担当する兵部、司法を担当する刑部、土木関連を担当する工部からなりたちます。
太宗は三省六部の行政システムや律令格式を整えたので、太宗の治世を貞観の治といいます。
太宗、高宗の時代
太宗の時代、東突厥やチベットを支配していた吐蕃への遠征をおこなうなど周辺諸国と次々に支配下に収めます。玄奘三蔵が仏典を求めてインドのヴァルダナ朝に旅立ったのは太宗の時代でした。詳しい内容は「【世界史B】受験に役立つインドの歴史第3回【ヴァルダナ朝と南インドの諸王朝】」にて詳しく述べていますので、読んでください。
太宗の時代、唐は国際色豊かな世界帝国の都として繁栄します。当時の国際情勢は以下の地図の形でした。

3代皇帝高宗の時代、630年に東突厥を滅ぼし唐の領土は最大となりました。唐は異民族が多い地域では現地の異民族を県令などの地方官に任命する羈縻(きび)政策を実施。異民族との妥協を図ります。
また、唐は要衝に都護府を設置し、中央から軍隊や役人を派遣して駐留させます。都護府は全部で6つ置かれました。都護府のトップである都護は中央から派遣されますが、その下の都督や州刺使は異民族から任命されました。
盛唐の繁栄

(則天武后:wikiより)
664年、病弱だった高宗にかわり唐の実権を握った女性がいました。皇后の則天武后です。690年、則天武后は国号を周とあらため中国史上初めての女帝となりました。
則天武后は積極的に科挙官僚を登用し、門閥貴族勢力を虐殺一掃しました。則天武后は都を長安から洛陽に移します。
ちなみに武后は力を得るために少林拳で有名な少林寺の僧達から力を借りたという伝説が少林寺で残っていて、以下の写真は武后が書いたとされる文字の拓本として少林寺のある崇山に碑が残っています。(但し、本物かどうかは不明です。当時のガイドは本物と言ってましたが。。。)

(筆者が中国河南省崇山にて撮影。「崇山 武則天書」と書かれてある。)
最終的に705年、則天武后は子の中宗に位を譲り、国号も唐に戻しました。則天武后の評価は悪女という側面もある一方、当時政治の害悪だった官僚を一掃したことで政治を正常化したとも評価されています。
そして、710年、中宗の妃である韋后が夫を毒殺します。則天武后にならって権力を握りました。則天武后、韋后と皇后が二代にわたって権力を握り政治が混乱したことから、武韋の禍といいます。

たかし君
中宗が不憫すぎる。母親の武后に王朝を乗っ取られ、妻の韋后に殺されるなんて、、、
帝位を奪おうと画策した韋后を排除したのが李隆基、のちの玄宗皇帝です。李隆基は韋后排除後、父である睿宗を帝位に就けます。712年、李隆基は父から譲位され皇帝に即位(玄宗)しました。
玄宗の開元の治
玄宗は律令制度の立て直しや科挙出身者の登用、民生の安定などに力を尽くしたため、玄宗の前半の治世は開元の治と称えられます。

S先生
太宗が貞観の治、玄宗が開元の治というのは押さえておきましょう。
723年、玄宗は均田農民を兵として動員する府兵制を止め、専業の兵士を雇う募兵制を開始します。749年には中国全土の軍団を募兵制に切り替えました。また、募兵の司令官として節度使を各地に置きます。節度使は都護府にかわり辺境警備の責任を負いました。

S先生
これが唐滅亡の遠因になるのね。権力を与えてしまい王朝が滅ぶパターンね。
節度使は地方において強い権限を持ったため、高級官僚としての側面を持ちます。玄宗の時代には10の節度使が設置されました。のちに唐を混乱に陥れる安史の乱以後、節度使は国境だけではなく内陸部にも設置されるようになりました。
751年、西方でイスラームが勢力を拡大。西域で唐とアッバース朝の軍団が激突し、唐軍が大敗しました。これがタラスの戦いです。アッバース朝が唐軍5万人を殺し、2万人を捕らえたという記述が残っています。
タラスの戦いで紙を作る職人がアッバース朝の捕虜となったため、製紙法が西伝しました。同時に、西域から唐の勢力が後退します。詳しくは「【世界史B】受験に役立つオリエント史(イスラーム帝国の成立)」をみてください。
玄宗皇帝については、今回は最初のところのみで終わります。次回また出てきますので注意しておいてください。
唐代の文化

(唐三彩:wikiより)
唐の文化の特色は、国際色豊かな貴族的文化です。シルクロードを通じて西域の文化が流入したことも唐の文化の特徴だといえますね。ラクダと胡人をかたどった唐三彩が写真問題でよく出ますよ。
唐といえば、唐詩。玄宗時代である盛唐のころは詩仙とよばれた李白や詩聖とよばれた杜甫、自然詩人として名高い王維が有名です。時代が下って憲宗のころである中唐では白居易の「長恨歌」がもっとも有名ですね。ほかにも散文の韓愈や柳宗元も有名です。
絵画を代表する人物は呉道元。盛唐時代の画家で人物や山水のほか神仏も描きました。呉道元の道鏡寺院の壁画には秀作が多いとされます。
唐代を代表する書家といえば顔真卿。楷書に秀でた人物で安史の乱の鎮圧に活躍します。儒教では孔頴達の「五経正義」が良く出題されます。
唐代の宗教で注目すべきは外来宗教の存在です。祆教(ゾロアスター教)や景教(ネストリウス派キリスト教)、摩尼(マニ)教や回教(イスラーム教)などが唐に入ってきました。
仏教では、太宗の時代に唐に仏典を求めに行った玄奘は「大唐西域記」を、海路、インドに向かった義浄は「南海寄帰内法伝」をそれぞれ著したことに注目です。
まとめ
370年ぶりに中国全土を統一した隋の文帝は均田制や租庸調制、府兵制といった制度を整備し隋の国力を高めます。文帝の跡を継いだ煬帝は大運河の開削や無理な高句麗遠征で過度な国民負担を強いたため、隋を短期間の滅亡に追いやります。
隋にかわって唐を開いたのが煬帝の従兄弟にあたる李淵でした。李淵の子である李世民の治世は開元の治と称えられました。唐の領土は高宗の時代に最大となります。しかし、高宗の後、武韋の禍によって一時的に政治は混乱しました。その後、玄宗の時代に唐は最盛期を迎え、国際色豊かな文化が花開きます。次回は玄宗の続きからです。
今回はここまでです。お疲れ様でした。次回は「唐の動揺と五代十国【受験に役立つ中国史】」をお楽しみに。

【世界史B】唐の動揺と五代十国【受験に役立つ中国史】第6回
こんにちは。今回は唐の動揺と五代十国時代についてお話をします。武韋の禍を治めた玄宗皇帝の前半の治世は開元の治と称えられました。しかし、治世後半は節度使が力をもち、安史の乱を招いてしまいます。 その後、唐は両税法などの税制改革などを行って体制...
前回の記事「【世界史B】魏晋南北朝時代【受験に役立つ中国史】第四回」はこちらです。

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