みなさん、こんにちは。今回の【地理B】では「洪積台地、河岸段丘、海岸段丘」という丘のような地形について学習します。
洪積台地とは更新世(約2百万年前から約1万年前まで)に堆積作用によって形成された平坦地が、何らかの自然作用によって隆起したことによって形成された地形のことです。
河岸段丘とは、河川沿いに沿って階段状に形成された地形のことで、平たんな台地面(段丘面)と急傾斜の崖(段丘崖)から構成されています。河岸段丘のでき方としては、気候変化、地殻変動、火山活動による河川の流量、岩石や土砂の量、河床勾配の変化などが考えられます。代表的なものとして教科書等にも取り上げられている群馬県の沼田の河岸段丘があります。
海岸段丘とは、海面下に存在していた平坦面が陸化したことで形成された、海岸沿いに発達する台地状あるいは階段状の地形のことで、海側のほうにゆるく傾く平坦な面と、急な崖から構成されています。
海岸段丘のでき方としては、局地的に発生した地盤の隆起または沈降と、世界的な海水面の上昇または低下が組み合わさった結果です。
海岸段丘の土地利用としては、段丘面では農地としての土地利用が見られますが、保水性に優れない土地であることから果樹園としての土地利用が見られるとともに、近隣にため池などが作られて水田として利用されています。代表的なものとして教科書等にも取り上げられている高知県の室戸岬などがあります。
一見するとどれもこれも同じ丘ですが、それぞれ成り立ちは異なります。紛らわしいかもしれませんが、皆さんも注意してその種類を理解していきましょう。
おや、たかし君、さっそく混乱しているようで…。
丘ってどれも、同じようなもんだと思っていたけど、違うの?
たかし君。確かに何気なく見ていたらどれも丘なんだよね。でも、
成り立ちの違いによって丘はいろいろなものに分けられるんだよ。
えっ。そうなんだ…。
洪積台地、河岸段丘、海岸段丘はどれも一般的には台地とか丘という風に呼ばれることが多いです。そして、高校地理ではこれらを成り立ちの違いから洪積台地、河岸段丘、海岸段丘に分けて勉強していきます。
なんか、どれがどれだかわからなくなりそう。
大丈夫だよたかし君。先生と一緒にピクニックに行ったつもりで
勉強しよっ!
S先生、たかし君。丘って色々な種類がありますよね。海の近くや川沿いには段上になっている丘がありますし、里山なんて呼ばれることもあるなだらかな丘陵地帯も丘ですよね。
今回の記事では、そんな様々な種類の丘について洪積台地、河岸段丘、海岸段丘について勉強していきたいと思います。実は、この3つの地形は住宅地として利用されていることが多いので、もしかしたらあなたの住んでいる場所もこの3つのうちのどれかかもしれませんよ。
この記事を読んでわかる事・洪積台地、河岸段丘、海岸段丘の違いについて理解できる
・洪積台地、河岸段丘、海岸段丘のそれぞれの成り立ちについて理解できる
洪積台地…里山でおなじみの地形のできかたと土地利用とは?
洪積台地とは、更新世(約2百万年前から約1万年前まで)に堆積作用によって形成された平坦地が、何らかの自然作用によって隆起したことによって形成された地形です。
その後の完新世(約6000年前)に形成された沖積平野より一段高いところに位置していることが多く、雨水によって地表面が浸食されるため、先端部はアメーバ状の形になっていることが多いです。
洪積台地は、宙水と呼ばれる局地的に得られる地下水があるところを除き、利水がしにくかったため、基本的には台地の縁に集落が形成され、洪積台地は里山として利用されていました。
しかしながら、造成するのが容易な地形であることから、高度経済成長期以降には都市近郊の洪積台地において相次いでニュータウン開発やゴルフ場の開発が実施されました。
洪積台地の事例 … (千葉県印西市木下・小林)
*国土地理院発行の空中写真より
水田の土地利用が見られるのが沖積低地で、曲線状に集落と植生が存在する箇所が洪積台地の縁に該当します。画面中央部や下部においては洪積台地上に形成されたゴルフ場やニュータウンなどもみることができます。
河岸段丘 … 群馬・沼田の地形でおなじみの河岸段丘のできかたは?
河岸段丘とは、河川沿いに沿って階段状に形成された地形のことを指します。
平たんな台地面(段丘面)と急傾斜の崖(段丘崖)から構成されています。
段丘面は、過去には河床だったところ(河床面)であり、河川の浸食に伴って河床が低下したことで、相対的に河川よりも標高が高くなったところです。
河岸段丘が形成される要因としては、河川の流量、岩石や土砂の量、河床勾配の変化などが考えられます。これらの変化をひきおこす要因としては、気候変化、地殻変動、火山活動などがあげられます。
河岸段丘の一番下の段(河川と同じぐらいの標高の段丘面)は、氾濫原とも呼ばれており、利水しやすいことから水田としての利用が多く見られます。その他の段の段丘面に関しては畑作地や住宅地としての土地利用が卓越しています。
また、洪積台地と同様に、造成するのが容易な地形であることから、高度経済成長期以降には都市近郊の河岸段丘では相次いでニュータウン開発が実施されました。
河岸段丘の事例(群馬県・沼田市)
*写真はPhotoACのフリー素材を使用
*国土地理院発行の空中写真より
群馬県沼田市の河岸段丘は日本の代表的な河岸段丘として教科書等にも取り上げられています。
片品川の流路に沿って、段丘崖・段丘面が何重にもわたって形成されており、幾度にもわたって大規模な自然現象がおこったことがうかがえます。
海岸段丘 … 室戸岬でおなじみの地形のできかたと土地利用とは?
海岸段丘とは別名海成段丘とも呼ばれ、海岸沿いに発達する台地状あるいは階段状の地形のことを言います。
海面下に存在していた平坦面が陸化したもので、海側のほうにゆるく傾く平坦な面と、急な崖から構成されています。
平坦面と急な崖との境界にあたる部分はかつての海岸線を示しており、急な崖はもともとは海食崖として形成されたものです。海岸段丘は、その位置するところにおいて過去の陸地が海面に対して相対的に上昇してきたことを示しています。
段丘の高度差は局地的に発生した地盤の隆起または沈降と、世界的な海水面の上昇または低下が組み合わさった結果として形成されたものです。
海岸段丘の土地利用としては、段丘面では農地としての土地利用が見られますが、保水性に優れない土地であることから果樹園としての土地利用が見られます。ただし、ため池が整備される、近隣に河川が流れているなど、水利が得られる場合においては、水田としての土地利用もみられます。
海岸段丘の代表例1(高知県・室戸岬)
高知県・室戸岬の海岸段丘は日本の代表的な河岸段丘として教科書等にも取り上げられています。室戸岬の海岸段丘ではため池を整備したうえで水田としての土地利用がなされています。
海岸段丘の代表例2(青森県・深浦町)
*国土地理院発行の空中写真より
こちらは、教科書では取り上げられることが少ないですが、何段にもわたって段丘崖と段丘面が形成された海岸段丘です。ため池や河川等を用いて水利を得ており、段丘面では水田を中心とした農地としての土地利用が多く見られます。
まとめ
ここまで洪積台地、河岸段丘、海岸段丘の3つの丘について学んできましたが、ここでもう一度整理してみましょう。
洪積台地
・堆積作用によって形成された平坦地が、何らかの自然作用によって隆起したことによって
形成された地形
河岸段丘
・河川の浸食に伴って河床が低下したことで、相対的に河川よりも標高が高くなった地形
海岸段丘
・局地的に発生した地盤の隆起または沈降と、世界的な海水面の上昇または低下が組み合わさっ
た結果として形成
皆さんも普段何気なく見ている丘ですが、代表的なものだけでこれだけの種類があるということを覚えておいてくださいね!
コメント