学力社会といわれる現代、中学校の先生などから「高校受験は大切だ!しっかり勉強をしないと後悔するぞ!」といわれた人も少なくないかと思います。しかし、勉強といっても数学や英語ならともかく、社会は異なる科目の複合であるため、どのように勉強していけばいいのかわからなくなってしまう人もいるでしょう。
実際、3年間同じ社会でも公民、歴史、地理と教科書を分けて授業を進めてきたのではないでしょうか。そこで、平成30年度の都立高校入試の問題を例に挙げながら、高校受験ではどのように秩序立てて勉強していけばよいのかを解説していきたいと思います。
高校受験における地理の対策とは?
都立問題では、大問2と大問3が地理の問題として割り当てられています。大問1の問1でも地理問題が出題されているため、かなり地理の重要度は高いです。
地理という学問は地勢学もそうですが、現代社会の経済を学ぶため、非常に重要な位置づけがされているのだと思います。主に大問2を取り上げて解説したいと思います。
“(問1) 略地図中に①→②で示したA~Dは.農産物の買い付けを行う企業の社員が、それぞれの都市にある空港から②の都市にある空港まで、航空機を利用して移動した経路を模式的に示したものである。 次のIの文章は、A~Dのいずれかの経路における移動の様子などについて述べたものである。Iのア~エのグラフは、A~Dのいずれかの経路における都市の年平均気温と年降水量及び各月の平均気温と降水量を示したものである。Ⅰの文章で述べている経路に当てはまるのは, 略地図中のA~Dのうちのどれか また、その経路における都市のグラフに当てはまるのは, Ⅱのア~エのうちのどれか。ーー平成30年都立入試問題
上記の問題をご覧の通り、大問2の問1において、時差問題と気候の問題が出題されています。実際に、時差を問うのではなく、時差を提示し、その時差からどこからどこに移動していると言えるのか、と思考力を問う、という点で応用問題ということができます。
緯度何度の違いで何時間の時差が生まれるのか、そして、移動時間などの要素を提示することで、計算を複雑化し、受験生の解答時間を奪うといった狙いがあります。
この狙いの裏をかくには、時差については実際に練習問題を解いて慣れておく他ありません。こうした、応用問題に対しては、「数をこなして慣れる」ことが大切です。これは数学にも言えることです。また、そうした中で暗記もでき、解答時間の短縮もできるようになるでしょう。
気候はまず、北半球と南半球で考えます。南半球の国なら、日本の気温とは真反対となっているはずなので、そこで区別しましょう。そして、しっかりと世界の気候地帯を押さえておきましょう。ツンドラ気候や亜寒帯、乾燥地帯などとそれらの地帯の気候グラフの特徴などを覚える必要があります。
気候分野は農産業分野と非常に近しい分野のため、問われやすく地理の中で最重要の分野といえます。覚えることも多いため、一番初めに勉強し始めたほうがいい分野です。
“[問2] 次のページの表のア~エは、 略地図中に示したW~Zのいずれかの国の、2014年における漁獲量、日本に輸出される魚介類の漁法などについてまとめたものである。略地図中のW~Zのそれぞれの国に当てはまるのは、次のページの表のア~エのうちではどれか。”
“[問3] 次のIの略地図は, 2016年における日本と東南アジア諸国連合 (ASEAN)加盟国それぞれの国との貿易額について、 日本の輸出額から日本の輸入額を引いた差を示したものである。Iの略地図は, 2016年における日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国それぞれの国との貿易額について,日本の輸入額が最も多い品目を,「医薬品」、「衣類と同付属品」、「鉱産資源」、「電気機器」に分類して示したものである。Ⅰの文章で述べている国に当てはまるのは、下のア~エのうちのとれか。
このように、問2では産業(漁業について)が、問3では貿易について問われています。全てにおける設問の共通点は国の場所、そして、その特徴を覚えていないと解けないという点です。地図帳などを活用して勉強する必要があります。
全ての設問において、地図を使って解かせる問題が登場しており、地図の見方に慣れておかなければいけません。地図帳の付録ページなどに貿易データと地図を照らし合わせた情報が載っているため、確認しておくとなお良いかと思います。
大問2は比較的、経済面に寄った内容ですが、大問3では自然の地理や工場などの立地などが出題されています。このことから、地理は気候、経済、地勢、資源、工業とわけて勉強することが求められてくるといえます。
歴史の対策とは?
都立問題では歴史分野は大問4と大問6で出題されています。「何で二つ?」と疑問に思う人もいるでしょう。これは、大問4が日本史で大問6が世界史と分けられていると見ることができます。
日本史は中世~近代・現代の範囲が出題されております。世界史は近代の科学革命以降が主に出題範囲となっているようです。おそらく、どこの公立学校の問題でも歴史的つながりを意識して出題されると思います。
それを踏まえて考えると、日本史については、古代~中世前期、もしくは中世後期~近現代で出題されると予測できます。ただ、明治維新以降の歴史が現在の日本の「民主主義」という政治形態を決定づけたため、おそらく近現代が出る可能性はかなり高いと思います。
そのため、近現代はより力を入れて勉強すると良いかと思います。
公民の対策とは?
まだ、挙げていないのは大問5になりますが、こちらの問題はかなり経済よりになっています。政治の問題は問4のみです。
だからと言って、経済を重点的に勉強することはあまりオススメしません。なぜなら、いくらでも割合を政治多めなどできる大問の形式だからです。問題傾向を変えられてしまうと対応できなくなってしまうため、公民は政治・経済で山を張ることなく、勉強していくと良いと思います。さて、大問5で着目すべきは問1です。
(問1)働くことによって得る質金などがあり、その全額は時代とともに変化してきた。とあるが、次のⅠの文は, 1960年に闇議決定された国民所得倍増計画の構想の一部を抜粋したものである。Ⅱのグラフは,我が国の消費者物価指数について、1960年から1970年までの推移を1960年を100とした指数で示したものである。Ⅲのグラフは、我が国の一人当たりの月間現金給与額について、 1960年から1970年までの金額の推移を示したものである。I〜Ⅲの資料を活用し、1960年と1970年を比較した国民生活の変化について、消費者物価指数と月間現金給与額の増加割合に着目し、簡単に述べよ。
最終文の「簡潔に述べよ」という言葉を見てもわかる通り、問1の問題は選択問題ではなく記述式の問題となっています。最近ではどの高校入試でも記述式の問題が増えているため、文章に書きなれるという訓練も必要になってきます。政治分野の対策は憲法を中心に覚えることをオススメします。
基本的に政治制度の多くは「憲法」に記されているため実際に憲法の条文を確認しながら覚えることで、政治制度を問う問題にも憲法を問う問題にも対応できて、一石二鳥となります。
同時に、三つの権力の内部組織もしっかりと覚えましょう。国会の内部組織、内閣の内部組織、最高裁判所の内部組織などは三権分立を理解するうえでも大切なこととなります。
とはいえ、都立高校を受験する方は、多少経済寄りの勉強をしてみても良いと思います。なぜなら、平成29年度の大問5の設問もほとんど経済分野の問題で構成されており、あっても「政治経済」の分野で問われています。
地理、歴史、全ての問題において言えることですが、都立問題においてはグラフ分析の問題に重点を置いています。ですので、グラフ問題を出題しやすい、経済分野が政治分野に比べ比較的高い確率で出題されると言えます。
中学受験については中学受験の社会勉強法について書いています。
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