みなさんこんにちは。今回は自然災害について解説したいと思います。
なぜ社会科である地理で自然災害を学ぶの?と思う人もいるかもしれません。
でも、自然災害は地理にものすごく関係するものなんです。
世界は時に自然災害によって街が壊滅的な被害を受けてきたことや、農業や漁業ができなくなって人が住めなくなってしまったこともありました。
エルニーニョ現象を起因とする異常気象が原因で、農作物や産業に大規模なダメージを受けたことも、地震や津波、あるいは熱帯低気圧が原因で街が壊滅的な被害を受けたことも、森林火災によって生態系のバランスが崩れ、人々の暮らしに大きな影響を与えたこともありました。
現在も新型コロナウィルス(Covid-19)が蔓延したことによって、経済にも、人間社会にも多大な被害を受けています。
現在の世界は、様々な自然災害と戦ってきた結果産み出されてきたものといっていいと思います。
一方で、2020年1月に実施されたセンター試験の『地理』においても、災害に関する問題が出題されるなど、社会的な問題のみならず、大学受験等においても重要なトピックとなっています。
ですので、しっかりと理解するようにしましょう。
この記事を読んで理解できること・様々な自然災害のメカニズムについて理解できる
・様々な自然災害の発生する場所について理解できる
「地理」における災害とは…2020年センター試験の問題から
まずはこちらの問題をご覧ください
これは、2020年に出題されたセンター試験『地理B』の問題です。
ここでは、自然災害の種類と発生状況に関して問われています。
この問題を解くにあたっては、まず地震・森林火災・熱帯低気圧といった自然災害がどのような場所で発生し、どのような場所で被害をもたらしているかについて理解する必要がありますね。
このように、「地理」において災害を理解するにあたってはメカニズムと発生しやすい場所を理解しておく必要があるのです。
また、過去にはエルニーニョ現象や津波といったことについても出題されたことがありました。
それでは、つぎの章からそれぞれの災害について解説していきましょう。
地震・津波…被害は甚大だが発生しやすい場所は限られる
地震とはプレート間のひずみや活断層の活動を起因として発生する振動のことを指します。
地震の発生する場所は主としてプレートと呼ばれる地球の表面を覆う、十数枚の厚さ100kmほどの岩盤どうしが接触している箇所か、活断層が多くみられる場所になります。
図はWikipediaより引用
とりわけプレート同士の境界となっている領域においては、プレート同士が衝突をおこしています。このプレート同士が衝突して沈み込む部分が海溝となり、衝突した岩盤が互いに動くことで、地震が発生します。
とりわけ環太平洋造山帯とよばれる太平洋の沿岸部(南米チリ、アメリカ・カリフォルニア州、日本・三陸沖、インドネシア、ニュージーランド)ではしばしばプレート同士の衝突を理由とする地震が発生しており、多大な被害をもたらしてきました。
フリー素材をもとに筆者作成
地震の発生傾向としては次の表のような傾向を示します
筆者作成
このように、全世界で発生する地震(M5以上)の8割近くは、北緯50度から南緯30度までの人が多く住む地点で発生していることが理解できます。
さらに、地震の震源が海底になる場合、津波が発生します。
津波は地震や火山活動、山体崩壊を起因とする海岸地形や海底の変動によってもたらされる海洋に生じる大規模な波のことです。2011年に発生した東北地方太平洋沖地震(3.11)では、非常に大きな津波によって多数の地域が壊滅的な被害を受けました。
また、津波は大規模なものが多く、非常に遠くの地域まで津波が押し寄せることがあります。1960年に発生したチリ地震の津波は太平洋を越えて日本にまで到達して、多くの被害を出しました。また、2011年に発生した東北地方太平洋沖地震(3.11)でも津波は太平洋の向こう側にあるアメリカまで到達した記録が残っています。
森林火災…自然・人為の2種類があります
森林火災とは、山や森林などにおいて広範囲にわたって発生する火災のことを指します。
森林火災の原因には大きく分けて2種類あります。一つは乾燥などを起因とする自然発火によるもので、もう一つは放火や火の不始末等を起因とする人為的なものです。
森林火災が発生しやすい場所の特徴としては、森林が植生として卓越する、乾燥しやすい気候(乾季を伴う気候区)であるといえます。ここで、気候区分の条件を確認しておきましょう。
ケッペンの気候区分でいえば植生が卓越している気候のうち熱帯雨林気候のうち乾季のある(Am)、サバナ気候(Aw)、地中海性気候(Cs)、温暖冬季小雨気候(Cw)に該当する地域
に多いといえます。
熱帯低気圧…台風・サイクロン・ハリケーンはここから生まれる
熱帯低気圧とは熱帯地方あるいは亜熱帯地方に発生する低気圧のことを指します。
温帯低気圧と比較すると、等圧線が円形になること、前線を伴わないこと、主要なエネルギー源が水蒸気であることがあげられ、その多くが海上で発生・発達し、陸上では衰弱していくのが特徴です。
熱帯低気圧の発生場所は熱帯の海域です。ただし、赤道付近においてはコリオリの力と呼ばれる慣性力がないために発生することは少なく、南米のペルー沖は海水温が低いこともあって発生しません。
熱帯低気圧が発生すると、激しい暴風雨を伴います。この暴風が一定水準より大きくなった場合、東経180度以西の太平洋・南シナ海上に存在するものを台風、西経180度以東の太平洋上に存在するものをハリケーン、ベンガル湾・インド洋上に存在するものをサイクロンと呼びます。
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エルニーニョ現象…太平洋上の異変が世界の天気を変える?
南米のペルー沖の海水温は、同じ緯度帯の海水温と比較すると低めです。しかしながら、数年に一度赤道方面から暖かい海水が流れ込むことがあり、海面水温が平年より高い状態が1年程度続くことがあります。この現象をエルニーニョ現象といいます。
エルニーニョ現象は定常的にペルー沖に吹いている東風(貿易風)が弱まることをはじまりとして、太平洋の西側にある暖かい海水が南米の西岸付近まで到達します。この過程の中で対流活動が弱まることによってウォーカー循環が弱まり、海底の冷たい海水がかき混ぜられなくなるために、海水温が上昇します。
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なお、これとは反対に定常的にペルー沖に吹いている東風(貿易風)が強まって、太平洋の西側にある暖かい海水がそのままとどまることが起こります。これによって、ペルー沖の海水温が低下することがあります。この現象はラニーニャ現象と呼ばれます。
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エルニーニョ現象/ラニーニャ現象は日本の気候も左右します。例えばエルニーニョ現象発生時には太平洋高気圧の力が弱まる、西高東低の気圧配置が弱まることから冷夏・暖冬傾向が、ラニーニャ現象発生時は太平洋高気圧の力が強まる、西高東低の気圧配置が強まることから酷暑・厳冬傾向が強くなるといわれています。
エルニーニョ現象/ラニーニャ現象は次のように比較できます。
まとめ…もう一度問題を見てみよう
さて、先ほど出題した問題をここでもう一度お見せしましょう
問題上の図(図5)では、災害発生状況を主題図で表しています。それぞれの図には次のような特徴が見られ、次のように判断できます。
タ…赤道より北で、かつメキシコやコスタリカなどの中米地域といった、特定の緯度帯の限られた国で発生していることから、熱帯低気圧(ハリケーン)であることが読み取れます
チ…植生が卓越し、かつ乾燥しやすい気候である国で発生していることから、森林火災であることが読み取れます
ツ…アメリカ・メキシコ・ペルー・チリなど環太平洋造山帯に位置する国・地域で発生していることから、地震であることが読み取れます。
よって、答えは 6 となります。
地理では、災害について災害の発生しやすい場所がどうして発生しやすいのかについて理解します。地震・森林火災・熱帯低気圧についてはうえでまとめた通り、発生しやすい場所については特徴が多く見られます。
また、津波のように発生しやすい場所と被害を受ける場所に差異が生じる場合がある災害もあります。
一方で、エルニーニョ現象/ラニーニャ現象のように、広範囲にわたる現象もあります。
しっかりと理解して、大学入試や試験勉強ではもちろん、社会でも役立てられるようにしましょう!
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