みなさんこんにちは。受験に役立つ地学シリーズを始めます。今回は地殻熱流量と地磁気について解説します。このテーマは地学の「固体地球」の分野で、ここ3年間ほどセンター試験の地学で問われたテーマです。
特に、地殻熱流量の計算については地学といえども計算が出題するのできちんと理解をしましょう。また、地磁気の3要素についても言及しているのでしっかりと暗記しましょう。
地学はみなさんにとって馴染みはほとんどないと思われますが、受験ではかなり有効な科目です。特に、国立志望の文系にとって地学選択は物理化学に比べ覚えることも少なくかなり有利になる分野です。意外と知られていない科目で美味しめの科目ですね。
学校で地学の教員がいなかったり授業がなかったりするのが地学受験が敬遠される理由のように思われますね。授業がない人は自学自習でしっかりと勉強を進めていきましょう。
それでは「地殻熱流量、地磁気について」をどうぞ。
地殻熱流量とは地球内部から地表に伝わる熱量
まず、地殻熱流量についてですが、以下のことをいうことができます。
地殻熱流量とは、地球内部から地表に向かって伝わる熱量のことである。
地殻熱流量は地温勾配と熱伝導率の積で求めることができる。
それでは、早速、地球内部の熱源と熱の伝わり方、地殻熱流量の値の求め方をみていきましょう。
地球内部から地表に向かって伝わる熱量
熱は高い方から低い方へ伝わります。地球の内部は中心に近いほど高温で、その熱が地表に向かって伝わっています。これを地殻熱流といいます。
地球内部にはウランやカリウムなどの放射性物質があり、これらが熱を発しています。地球の中心部の温度は5,700℃という高温です。
地殻熱流量は地温勾配と熱伝導率の積
まず、そもそも専門用語である地温勾配と熱伝導率について言葉を定義します。以下の定義をしっかりと頭に叩き込んでください。
勉強の始まりは言葉の定義を覚えることよ。言葉から全てが始まると行っても過言ではないです。
地温勾配:地中で深くなるにつれて温度が高くなる割合をいいます。
熱伝導率:物質内での熱の伝わりやすさをいいます。物質によって異なります。
地殻熱流量は地温勾配と熱伝導率の積で求められます。まずは、地温勾配を求める計算式を展開します。
地温勾配を求める式(深さについて)
深さ1の地点を:d1、深さ2の地点を:d2
2点の深さの差:Δd=d1―d2
(温度について)
1について温度1:T1、2について温度2:T2
2点の温度の差:ΔT=T1―T2
(地温勾配の式)
地温勾配=$\frac{ΔT}{Δd }$
では、次に熱伝導率についてです。物質ごとに熱伝導率というものは存在します。そこで、熱伝導率を
熱伝導率Kと表すと
〔地殻熱流量=地温勾配×熱伝導率〕
地殻熱流量Q(10-6cal/ ㎠・s)=K×$\frac{ ΔT }{ Δd }$
ちなみに10-6calとは0.000001calのことで、1μcal(マイクロカロリー)と表現します。ただ、10-6calと表現したほうがケタ数が瞬時に分かりやすく、物理でもよく用いられます。
単位の前に付けるm(ミリ)は$\frac{ 1 }{ 1000 }$を表し、μ(マイクロ)はm(ミリ)のさらに$\frac{ 1 }{ 1000 }$を表す接頭単位です。
地殻熱流量はきわめてわずかな熱量なので接頭単位を付けています。仮にこの数値が3だとすれば、3(10-6cal/㎠・s)もしくは3(μcal/㎠・s)という記述になります。なお、接頭単位を用いなければ0.000003(cal/cm2・s)という表現になり、小数点以下が多く計算しにくいためにこのような表記にしています。
以上の単位から、地殻熱流量とは時間1秒あたり・面積1㎠あたりに通過する熱量calとういうことになります。
地殻熱流量の大きさは、地球に届く太陽エネルギーと比べて2500分の1ほどでしかないため、地球上の温度や気象には影響を与えていないと考えられています。
地殻熱流量のまとめ
以上、地殻熱流量について説明しました。定義をしっかりと覚え内容を理解していきましょう。簡単にまとめると、以下の形です。しつこいようですがしっかりと頭に入れてください。
地殻熱流量とは地球内部から地表に向かって伝わる熱量
地温勾配と熱伝導率の積で求められる
地球の中心部は放射性物質による発熱できわめて高温で、その熱が地表に向かって伝わっています。以上、地殻熱流量について解説しました。
地磁気について解説 地球は磁石の性質を持っている
地球には実は地球そのものが磁石の性質を持っています。それを地磁気と言います。この地磁気には偏角、伏角、全磁力の3要素があります。そこで、地球で磁界が発生するしくみと、地磁気の3要素についてみていきましょう。
地球そのものが磁石の性質を持っている
私たちの住む地球には磁石の性質があり、地球に帯びている磁気を地磁気といいます。北極はS極、南極はN極に相当します。磁石は異なる極が引き合うので、方位磁針のN極が北を指します。
地球内部の外核と呼ばれる部分は鉄を成分とする流動体で、電気を通しやすい鉄が流動することで電流が発生し磁気を起こしていると考えられています。
地磁気には偏角、伏角、全磁力の3要素がある
それでは、地磁気の3要素について述べていきます。しっかりと理解してください。
偏角とは:地磁石のS極は北極点にあるのではなく、すこしずれた所にあります。これを地磁気北極といいます。方位磁針を置いた場所からみて北極点と地磁気北極の方角の違いを偏角といいます。
伏角とは:地上では方位磁針の針が水平を保っていますが、地磁気は地面に対して傾いた方向から作用しています。方位磁針の針がN極・S極ともに同じ重さであればN極がやや下を向きます。この下方向に向いた角度を伏角といいます。
ちなみに、みなさんのお持ちの方位磁針は水平に保たれるように針のS極側を重くして作られています。(ひょっとして携帯でしか方位磁針を見たことがないのなら一度本物を見てみてください。針に重しが載っているのが見えるはずです)
全磁力とは:ある地点での地磁気の大きさを全磁力といいます。地磁気の大きさは場所によって異なり、赤道では小さく、地磁気北極・地磁気南極に近いほど大きくなります。
偏角、伏角、全磁力を合わせて地磁気の3要素といいます。
地磁気のまとめ
以上、地磁気についてまとめます。
- 地磁気 地球そのものが磁石の性質を持っている 〔北極がS極、南極がN極〕
- ある場所から北極点と地磁気北極の方角の違いを偏角という
- 地磁気は水平ではなく、傾いた方向から作用している。これを伏角という
- ある地点での地磁気の大きさを全磁力という
- 偏角、伏角、全磁力を合わせて地磁気の3要素という
お疲れ様でした。きちんと理解をしておいてください。前回の地学の記事「【地学】受験に役立つ地学(惑星について)」についても合わせてお読みください。
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