今回のテーマは、国際連合です。この記事では以下の内容が学べます。
この記事からわかること
・国際連合の目的
・国際連合の主要機関・活動内容
・PKOの活動内容
・国際連合と国際連盟の違い
初学者にも内容をきっちり理解してもらえるよう、わかりやすく解説しました。
また記事の後半には、今回のテーマに関連した入試問題を用意しています。この記事を読めば、国際連合についての基本的な内容がすべてわかりますよ。
国際連合とは
(国際連合:wikiより)
国際連合とは、国際連盟にかわって新たに発足した国際平和機構です。
活動の目的は、
- 国際平和と安全の維持
- 諸国間の友好関係の発展
- 社会的・文化的・経済的・人道的な国際協力の推進
の3つです。
国際連合が成立するまでの流れは、下記のとおりです。
- 1941年:大西洋憲章
- 1944年:ダンバートン=オークス会議
- 1945年6月:サンフランシスコ会議
- 1945年10月24日:国際連合が正式に成立
まず第二次世界大戦中の1941年に、アメリカのルーズベルト大統領とイギリスのチャーチル首相が大西洋憲章を発表します。
大西洋憲章では、大戦後に新たな国際平和機構を設立する構想が打ち出されました。
1944年のダンバートン=オークス会議では、アメリカ・ソ連・イギリス・中国により、国連憲章の原案が作成されます。
第二次世界大戦末期の1945年6月には、サンフランシスコ会議が開かれ、アメリカ・ソ連・イギリス・中国をはじめとする50か国が国連憲章に調印しました。
そして終戦後の1945年10月24日、国際連合が正式に成立します。本部はアメリカのニューヨークに設置されました。
原加盟国は51か国でしたが、2021年3月現在では193か国が加盟しています。
ちなみに日本は1956年に加盟しました。
以降も、
- 1971年:中国
- 1973年:ドイツ
- 1991年:韓国・北朝鮮
- 2006年:モンテネグロ
- 2011年:南スーダン
が相次いで加盟しています。
国際連合の主要機関
(国連総会議事堂:wikiより)
国際連合の主要機関は、下記の6つです。
- 総会
- 安全保障理事会(安保理)
- 経済社会理事会
- 信託統治理事会
- 国際司法裁判所
- 事務局
なかでも総会と安全保障理事会は、国際平和の維持を図るために、とりわけ重要な役割を果たしています。
総会
総会は、すべての加盟国が参加する国連の中心機関です。予算の審議や新加盟国の承認などについて話し合い、加盟国や安全保障理事会へ勧告をおこないます。
大国・小国に関係なく各国1票ずつ投票権が与えられており、議決は多数決制です。
決議の要件は、下記をご覧ください。
- 重要事項:加盟国の2/3以上の賛成
- 一般事項:加盟国の過半数の賛成
安全保障理事会
安全保障理事会は、国際平和と安全の維持について主要な責任を負う機関です。
紛争の当事国に対して、平和的な解決や停戦、軍隊の撤退を求める勧告をおこないます。勧告に従わない場合は、経済制裁・軍事制裁を決定することも可能です。
アメリカ・ロシア・イギリス・フランス・中国の常任理事国5か国と、総会で選出される任期2年の非常任理事国10か国で構成されています。
決議の要件は、以下のとおりです。
- 手続事項の決定:理事国のうち、9か国以上の賛成
- 実質事項の決定:常任理事国5か国を含む9か国以上の賛成
常任理事国のうち1か国でも反対した場合、決議は成立しません。常任理事会5か国のみに与えられたこの権限を拒否権といいます。
冷戦時代の安保理では拒否権が頻繁に発動され、安保理が機能不全におちいりました。
そこで総会は、1950年に「平和のための結集」決議を採択します。
内容は下記のとおりです。
- 安保理にかわり、緊急特別総会を招集
- 2/3以上の加盟国が賛成すれば、軍事的な措置を含む勧告ができるようにした
経済社会理事会
経済社会理事会は、国際社会で発生する経済・社会の問題に対処するために設けられた機関です。
教育・文化の専門機関や非政府組織(NGO)と意見交換して、経済・社会・文化・人道的な活動についての調整・研究・勧告をおこなっています。
信託統治理事会
信託統治理事会とは、信託統治地域の独立を支援する機関です。
アメリカの統治下にあったパラオが1994年に独立して以降、活動を休止しています。
代表例はアフリカにあるカメルーンです。かつてカメルーンはイギリスとフランスが分割統治していましたが、1960年に独立を果たしました。
国際司法裁判所
国際司法裁判所は、国家間の紛争をさばく常設の司法機関です。本部はオランダのハーグにあります。
判決は当事国を拘束するものの、紛争当事国双方の同意がなければ裁判ができないのが特徴です。
事務局
事務局とは、国連運営に関する事務処理をおこなう機関です。国連平和維持活動(PKO)の指揮権をもっています。
事務総長は総会が任命し、任期は5年です。再任も認められています。
PKOとは
(PKO:wikiより)
PKOとは、紛争地域の平和維持を図るために国連が実施している活動です。
PKOは以下の4原則のもとに活動しています。
- 任意:加盟国が自発的に要員を提供する
- 同意:当事国のPKO受け入れ同意を必要とする
- 中立:諸勢力に対して中立的立場を厳守する
- 自衛:武器の使用は自衛目的に限る
PKOの種類は、下記の3つです。
- 軍事監視団(停戦監視団):停戦協定の遵守を監視する。非武装
- 平和維持軍(PKF):兵力の引き離しや紛争地域の治安回復にあたる
- 選挙監視団:終戦後の選挙が適切におこなわれているかを監視する
PKFは軍事的制裁ではなく、平和維持活動をおこなうための軍隊です。
一方国連軍とは、国連憲章第7条の定める軍事的制裁をおこなうための軍隊を指します。指揮するのは、安全保障理事会です。
多国籍軍は、複数の国の部隊で構成される有志連合軍です。安保理の決議に基づいて結成されるものの、指揮権は国連ではなく、派遣国側にあります。またPKFよりも重装備なのが特徴です。
国際連盟と国際連合の違い
(国際連盟・国際連合加盟国:wikiより)
国際連盟と国際連合の違いを、下記の表にまとめました。
国際連盟 | 国際連合 | |
最大59か国が加盟(1934年) →のちに日本・ドイツ・イタリアが脱退(ソ連が除名) | 加盟国 | 193か国(2021年3月現在) |
スイスのジュネーブ | 本部 | アメリカのニューヨーク |
総会 理事会 事務局 常設国際司法裁判所 国際労働機関 | 組織 | 総会 安全保障理事会 経済社会理事会 信託統治理事会 国際司法裁判所 事務局 |
経済制裁のみ(軍事制裁なし) | 制裁措置 | 経済制裁・国連軍による武力制裁 |
全会一致制 | 議決の決定 | 多数決制 |
(国際連盟と国際連合の違い:オリジナル)
ちなみに国際連合憲章では、国連軍による武力制裁のほか、個別的自衛権・集団的自衛権の行使が認められています。
一方集団的自衛権とは、自国と関係の深い国が武力攻撃を受けた場合に、自国が直接攻撃を受けていなくても、共同で防衛をおこなう権利のことを指します。
ただし自衛権の行使が認められるのは、安全保障理事会が加盟国に対して必要な措置をとるまでの間だけです。覚えておきましょう。
なお国際連盟について復習が必要な方は「国際連盟とは?設立までの過程や問題点についてわかりやすく解説【政治第28回】」をご覧ください。
入試問題にチャレンジ
問 下線部ⓕ(国際社会全体)の平和と安全を維持するための国連(国際連合)の仕組みに関する記述として正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 国連安全保障理事会が侵略国に対する制裁を決定するためには、すべての理事国の賛成が必要である。
② 国連憲章は、国連加盟国が安全保障理事会決議に基づかずに武力を行使することを認めていない。
③ 国連が平和維持活動を実施できるようにするため、国連加盟国は平和維持軍を編成するのに必要な要員を提供する義務を負っている。
④ 国連憲章に規定されている本来の国連軍は、これまでに組織されたことがない。
①:議決が成立する要件は下記のとおりです。
手続事項の決定:理事国のうち、9か国以上の賛成が必要
実質事項の決定:常任理事国5か国を含む9か国以上の賛成が必要
いずれの場合でも「すべての理事国の賛成」は不要です。
②:加盟国に対して安全保障理事会が必要な措置をとるまでの間、個別的自衛権・集団的自衛権の行使が認められています。
③:加盟国が平和維持軍の編成に必要な要員を提供するのは、義務ではなく任意です。
国連総会で採択された場合であっても、条約は関係各国の批准があってはじめて効力が生じるので誤りです。
まとめ
今回は、国際連合について解説しました。学習内容のおさらいです。
- 国際連合の主要機関は、総会・安全保障理事会・経済社会理事会・信託統治理事会・国際司法裁判所・事務局の6つ。
- PKOには、主に軍事監視団・平和維持軍(PKF)・選挙監視団の3種類がある。
- 国際連合と国際連盟の主な違いは、加盟国数・本部の場所・組織・制裁措置・議決の決定方法の5つ。
国際連合は入試でも頻出の分野なので、この記事を繰り返し読んでしっかりマスターしましょう。最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「国際連盟とは?設立までの過程や問題点についてわかりやすく解説【政治第28回】」をご覧ください。
次回の記事「現代の国際政治(冷戦・第三世界の台頭)についてわかりやすく解説【政治第30回】」をご覧ください。
政治経済を理解するには「蔭山の共通テスト政治・経済」がおすすめです。政治経済の細かいところまで解説してくれるので、受験生はぜひとも一読をするとよいでしょう。
コメント