今回のテーマは、国際連盟です。この記事では以下の内容が学べます。
この記事からわかること
・国際連盟設立までの過程
・国際連盟の主要機関
・国際連盟の問題点(崩壊した要因)
初学者にも内容をきっちり理解してもらえるよう、わかりやすく解説しました。
ちなみに、世界史で「国際連盟設立とその欠点(国際連合との違いや入試問題つき)【世界史B】」もあるのでそちらも併せてお読みください
また記事の後半には、今回のテーマに関連した入試問題を用意しています。この記事を読めば、国際連盟成立から崩壊までの過程をマスターできるので、最後まで読んでみてください。
国際連盟とは
国際連盟とは、世界平和を維持するために設立された国際機関です。
第一次世界大戦前のヨーロッパでは、勢力均衡が外交政策の基本でした。
しかし勢力のバランスが崩れた結果、第一次世界大戦へと発展してしまいます。そこで新たに誕生したのが、集団安全保障方式です。
集団安全保障に関する説明は下記をご覧ください。
- 対立関係にある国家も含めて国際的な平和機構に参加
- 互いに侵略しないことを約束する
- 違反した国に対しては、全加盟国が集団となって制裁を加える
要するに「勢力均衡政策から集団安全保障方式への転換により、国際平和を守る」ことこそが、国際連盟の最大の目的だったわけです。
(勢力均衡と集団安全保障:オリジナル)
国際連盟設立までの過程
設立までの過程は以下のとおりです。
- 1918年:平和原則18か条
- 1919年:パリ講和会議
- 1920年:国際連盟創設
まず1918年に、当時のアメリカ大統領ウィルソンが平和原則14か条を発表します。ウィルソンは平和原則14か条の最終項目で国際連盟の設立を唱えました。
その他の内容は下記のとおりです。
- 講和の公開・秘密外交廃止
- 公海の自由
- 平等な通商関係の樹立
- 軍備縮小
- 植民地の公正な措置
- ロシアからの撤兵とロシアの自由選択
- ベルギーの主権回復
- アルザス・ロレーヌ地方のフランスへの返還
- イタリア国境の再調整
- オーストリア=ハンガリー帝国内の民族自決
- バルカン諸国の独立保障
- オスマン帝国支配下の民族の自治保障
- ポーランドの独立
翌1919年には、ウィルソンの提唱した平和原則14か条に基づいてパリ講和会議がおこなわれました。
そしてパリ講和会議で調印されたヴェルサイユ条約に基づき、1920年に晴れて国際連盟が創設されます。原加盟国は42か国でした。
国際連盟の主要機関
国際連盟の主要機関は、総会・事務局・理事会の3つです。
事務局の本部は、スイスのジュネーブに設置されています。
理事会は常任理事国と非常任理事国で構成されており、設立当初の常任理事国は日本・イタリア・イギリス・フランスの4か国でした。
このほか自治機関として、常設国際司法裁判所と国際労働機関(ILO)があります。
国際連盟の問題点
国際連盟の問題点は以下のとおりです。
- 総会・理事会ともに全会一致制で、重要事項の決定がスムーズに進まなかった
- 総会・理事会の議決は、加盟国を拘束しない勧告のみにすぎなかった
- 侵略国に対する制裁手段の不備(経済制裁のみで軍事制裁がなかった)
- 主要国(アメリカ)の不参加・相次ぐ脱退
これを見て、なぜ提唱国であるはずのアメリカが国際連盟に参加しなかったのかと疑問に思った方もいるでしょう。
実は当時のアメリカは、外交政策の方針として孤立主義をとっていました。孤立主義とは、他国と同盟関係を結ばず、国際組織にも加入しないことです。
アメリカはヨーロッパ問題への介入を避け、1917年に第一次世界大戦へ参戦するまで孤立主義を貫きました。
とくに孤立主義を主張した上院の反対により、アメリカは国際連盟への参加には至りませんでした。
またもう一つの大国であるソ連は、1934年に加盟を認められたものの、1939年のフィンランド侵攻を理由に国際連盟から除名されてしまいました。
さらに自国領土の拡張を目指した日本・ドイツ・イタリアも国際連盟から脱退しています。日本・ドイツは1933年、イタリアは1937年にそれぞれ離脱しました。
結局、国際連盟は1939〜45年にかけて起きた第二次世界大戦を防止できず、事実上の崩壊に追い込まれてしまいます。
入試問題にチャレンジ
問 下線部ⓕ(勢力均衡)は安全保障の一つの方法である。これについての記述として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 対立する国を含め、相互に侵略しないことを約束し、違反国に対しては共同で制裁を加えて戦争を防ごうとする方法である。
② 国家群の間の力関係を同盟によってほぼ対等にすることで、強力な国や国家群からの攻撃を防ごうとする方法である。
③ 国家の権限をさまざまな国際機関に分散させることで、武力の行使を相互に抑制させる方法である。
④ 国際政治において他を圧倒する唯一の超大国が、核兵器を利用した抑止力によって、戦争を防ぐ方法である。
①:勢力均衡ではなく、集団安全保障に関する説明です。
③:国家の権限をさまざまな国際機関に分散させる例は、まだありません。
④:ある一国が圧倒的な力をもっている状態のとき、国際社会が安定するという考え方は「覇権安定論」といいます。
国連総会で採択された場合であっても、条約は関係各国の批准があってはじめて効力が生じるので誤りです。
まとめ
今回は、国際連盟設立から崩壊までの過程について解説しました。学習内容のおさらいです。
- 国際連盟とは、集団安全保障方式により、世界平和の維持を図った国際機関。
- 国際連盟の主要機関は、総会・理事会・事務局の3つ。
- 国際連盟の主な問題点としては、全会一致制・制裁手段の不備・大国の不参加&相次ぐ離脱などがあげられる。
この記事を読んで、国際連盟についてしっかりマスターしていただければ幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「国際社会の成立過程と国際法の種類についてわかりやすく解説【政治第27回】」をご覧ください。
次回の記事「国際連合とは?国際連盟との違いや主要機関についてわかりやすく解説【政治第29回】」をご覧ください。
政治経済を理解するには「蔭山の共通テスト政治・経済」がおすすめです。政治経済の細かいところまで解説してくれるので、受験生はぜひとも一読をするとよいでしょう。
コメント