みなさん、こんにちは。今回のテーマは、司法権の独立です。
司法権の独立とはどんな意味なのか・司法権の独立が侵害された事件についてわかりやすく解説しました。
なぜ司法権が独立していなければいけないのだろう?
司法権が侵害された例はないのかな。
この記事は、上記のような悩みに応えます。記事を読めば、司法権の独立とは何かが十分に理解できるでしょう。
また記事の後半には関連する入試問題を用意しています。学習した内容のおさらいもできるので、最後まで読んでみてください。
この記事からわかること
・司法権の独立とは
・司法権の独立がもつ2つの意味
・司法権の独立が侵害された事件
司法権の独立とは
(最高裁判所:wikiより)
司法権の独立とは、裁判所や裁判官がほかのいかなる国家権力からも干渉を受けないとする原則のことです。
司法権が独立していなければならない理由は、公平な裁判をおこなうためです。
もし裁判所が外部から圧力を受けて不公平な判決を下してしまったら、どうなるでしょうか?想像してみてください。
万が一犯罪に関わっていない人が有罪判決を受けた場合、人生に重大な影響を及ぼすことになります。
だから司法権はいかなる権力や組織からも独立していなければならないのです。
裁判所の独立
司法権の独立には、
- 裁判所の独立
- 裁判官の独立
の2つの意味があります。
裁判所の独立とは、裁判所が国会や内閣から干渉を受けずに裁判をおこなう原則のことです。
裁判所の独立を保障するために、日本国憲法では以下の3つを定めています。
- 特別裁判所の設置を禁止
- 行政機関が終審として裁判をおこなうことを禁止
- 最高裁判所に裁判所の内部規律などの規則制定権を付与
特別裁判所とは、特定分野の裁判をおこなう裁判所です。
大日本帝国憲法下では、通常の裁判所とは別に設置されていました。例としては、行政裁判所や皇室裁判所などがあげられます。
しかし特別裁判所の設置は、公正な裁判を実現するために日本国憲法で禁止されました。
ただ裁判所の独立には、例外があります。
具体的には、
- 議員の資格訴訟の裁判(第55条)
- 裁判官の弾劾裁判(第64条)
の2つです。
裁判官の独立
裁判官の独立とは、裁判官は憲法と法律にのみ拘束されるという意味です。
裁判官の独立を保障するために、裁判官に対する身分保障を手厚くしています。
具体的には、以下のとおりです。
- 行政機関による懲戒処分の禁止
- 相当額の報酬を保障(減額されない)
- 心身の故障・国会の弾劾裁判を除いて罷免されない
ただ裁判官の独立にも、例外はあります。最高裁判所裁判官は国民審査で罷免される可能性があるからです。
しかし過去に罷免された裁判官はいません。
司法権の独立が侵害された事件
(児島惟謙:wikiより)
司法権の独立が侵害された例としては、
- 大津事件
- 浦和事件
- 平賀書簡事件
の3つがあります。
大津事件
大津事件とは、1891年に滋賀県大津市でロシア皇太子が津田三蔵巡査に襲われた事件です。
ロシアとの関係悪化を恐れた政府は、巡査を死刑にするよう、大審院に圧力をかけました。
しかし大審院長児島惟謙は政府の圧力に抵抗し、担当の裁判官を説得します。
結局裁判官は巡査に対して無期懲役の判決を下しました。
大津事件は政治の不当な圧力から司法権の独立を守り抜いた事件として知られています。
浦和事件
浦和事件は、1948年に母親が無理心中を図り、子ども3人を殺害した事件です。
浦和事件をめぐる裁判所と国会の動きは以下のとおりです。
平賀書簡事件
平賀書簡事件の概要は、以下のとおりです。
事件を受けて、平賀所長は注意処分を受け、東京高裁へ異動となりました。
入試問題にチャレンジ
問 翌日、Kさんは、定期試験の準備のために高校の図書室に友人のUさんとIさんと集まった。Kさんが自作のカードを見せると、Iさんが「モンテスキューの裁判権の考えは面白いね。今日は司法について復習をしようか」と言い、3人は復習を始めた。現代日本の司法に関する記述として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 裁判は、裁判所による許可がない限りは、非公開で行われる。
② 個々の裁判官は、良心に従って独立して職権を行い、憲法及び法律にのみ拘束される。
③ 最高裁判所長官は、国会が、議決を経て指名する。
④ 罷免の訴追を受けた裁判官を裁判する弾劾裁判所は、衆議院のみが設置する。
①:裁判は公開が原則です。ただし裁判官の全員一致での決定があった場合には、例外的に非公開とすることが認められています。
③:最高裁判所の長官は内閣が指名し、天皇が任命します。ちなみにその他の裁判官については、内閣の任命に基づいて天皇が認証します。
④:弾劾裁判所は、衆参両議院の議員で構成されています。
まとめ
今回は、司法権の独立について解説しました。本記事で学習した内容のまとめは以下のとおりです。
- 司法権の独立とは、裁判所や裁判官が外部から不当に干渉を受けないとする原則。
- 司法権の独立には、裁判所の独立と裁判所の独立という2種類の意味がある。
- 司法権の独立が侵害された事件には、大津事件・浦和事件・平賀書簡事件がある。
この記事を読んで司法権の独立について理解を深めていただければ幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「裁判所とは?裁判所の種類や三審制についてわかりやすく解説【政治第20回】」をご覧ください。
次回の記事「裁判員制度とは?陪審制や参審制との違いについてわかりやすく解説【政治第22回】」をご覧ください。
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