今回のテーマは、国会です。
国会の仕組みや仕事内容、国会が開かれるタイミングなど、国会に関する幅広い内容を取り扱っています。表や図を取り入れながらわかりやすく解説しました。
上記のような悩みに応える記事です。本記事を読めば、国会に関するすべてがわかりますよ。
また記事の後半には入試問題を用意しています。記事を読んだあとすぐに理解度をチェックできるので、最後まで読んでみてくださいね。
この記事からわかること
・国会の仕組み(二院制)
・国会の種類(常会・臨時会・特別会・緊急集会)
・国会の権限
・国会議員の特権(歳費特権・不逮捕特権・免責特権)
国会の仕組みとは?
(国会:wikiより)
国会の地位
日本国憲法の第41条には、「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」と明記されています。
国権の最高機関といっても、国会が内閣・裁判所より上に立つわけではありません。
国会議員は主権者である国民から選ばれており、政治的な意思決定に関して、さまざまな権限が与えられています。
だから国会は、国権の最高機関と呼ばれているのです。
日本は三権分立を採用している国です。国会に立法権、内閣に行政権、裁判所には司法権がそれぞれ与えられています。
立法とは、法律を作ることです。つまり国会が行う一番の仕事は、法律の制定なのです。
ただし唯一といっても例外はあります。内閣は政令、裁判所は規則、地方公共団体は条例を制定できるからです。
二院制
国会は、衆議院と参議院の二院制です。「全国民を代表する選挙された議員」によって構成されています。
衆議院は議員の任期が4年で解散があるのが特徴です。
参議院は議員の任期が6年で3年ごとに半数が改選されます。解散はありません。
衆議院 | 参議院 | |
465人 | 定数 | 248人 |
4年 | 任期 | 6年(3年ごとに半数改選) |
あり | 解散 | なし |
18歳以上 | 選挙権 | 18歳以上 |
25歳以上 | 被選挙権 | 30歳以上 |
衆議院と参議院の比較表(オリジナル)
二院制のメリットは以下の2つです。
・慎重に審議できる
・任期・選挙制度が異なるため、国民のさまざまな意見を反映させられる
ただし慎重に審議を実施できる反面、時間やお金がかかってしまうのがデメリットです。
国会の種類
(特別会:wikiより)
国会の種類は、
① 常会
② 臨時会
③ 特別会
④ 緊急集会
の4つです。
① 常会
常会は毎年1月に必ず召集され、主に来年度予算案の審議が行われます。会期は150日です。
② 臨時会
臨時会は以下の2つのうち、どちらかが当てはまる場合に召集されます。
・内閣が必要と認めたとき
・いずれかの議院で総議員の1/4以上の要求があったとき
③ 特別会
特別会は、衆議院の解散にともなう総選挙が実施された日から30日以内に召集される国会です。新しい内閣総理大臣が指名されます。
④ 緊急集会
緊急集会は衆議院の解散中に緊急の事態があった場合に、参議院で開かれる集会です。内閣が要求して開催されるのでおさえておきましょう。
なお緊急集会での議決は、次の国会開会後10日以内に衆議院の同意がない場合、失効します。
国会の権限
(予算委員会:wikiより)
国会の権限
国会がもっている権限は以下のとおりです。
・法律の制定(第41条)
・予算の議決(第60条)
・条約の承認(第61条)
・弾劾裁判所の設置(第64条)
・内閣総理大臣の指名(第67条)
・憲法改正の発議(第96条)
なかでも法律の制定が国会の最も重要な権限です。
また両議院が独自に行使できる権利としては、
・議員の資格に関する争訟の裁判権(第55条)
・議院規則制定権および議員懲罰権(第58条2項)
・国政調査権(第62条)
などがあります。
国政調査権とは、国政全般を広く調査できる権限です。
国政調査権を行使すれば、証人の出頭・証言や記録の提出を要求できます。
ただし裁判中の事件については調査できません。
さらに衆議院だけに認められている権限としては、予算の先議権(第60条)・内閣不信任決議権(第69条)があります。
法律の制定過程
大まかな流れは以下のとおりです。
① 内閣or国会議員が法律案を作って国会に提出
② 委員会で審議
③ 本会議で議決
④ 衆議院・参議院両方で②→③を繰り返す
法律ができるまでの過程(オリジナル)
① 内閣or国会議員が法律案を作って国会に提出
提出には衆議院議員20人以上、または参議院議員10人以上の賛成が必要です。
予算をともなう法律案の場合は衆議院議員50人以上、または参議院議員20人以上と定められています。
② 委員会で審議
議案が提出されると、常任委員会または特別委員会で審議され、出席議員の過半数で議決されます。委員会は原則非公開です。
また必要に応じて、公聴会を開く場合もあります。公聴会とは、利害関係者や有識者から意見を聞く会合のことです。
③ 本会議で議決
本会議は各議院の総議員のうち、1/3以上の出席で開催されます。本会議は公開が原則です。
委員会中心主義なので、実質的な審議は委員会で行われ、本会議では多数決をとるだけのケースが多く見られます。
基本は出席議員の過半数により議決されますが、以下のように例外もあります。
1. 出席議員の2/3以上の賛成
→議員の資格訴訟の裁判によって議員の議席を失わせる場合・秘密会の開催・議員の除名・衆議院での法律案の再可決
2. 総議員の2/3以上の賛成→憲法改正の発議
なお議決した議案は、同一会期中に再び審議することはできません。
④ 衆議院・参議院両方で②→③を繰り返す
両方の議院で可決されると晴れて法律が成立します。
衆議院の優越
国会の議決は、原則として両議院一致の議決によって成立します。ただし以下の4つについては、例外的に衆議院の議決が国会の議決となる場合があります。
① 予算の議決
② 条約の承認
③ 内閣総理大臣の指名
④ 法律案の議決
「衆議院の」議決が参議院の議決を「優越」するので、衆議院の優越と呼ばれます。
具体的にどんな条件で衆議院の優越が適用されるのかについては、下記の表にまとめているのでご覧ください。
案件 | 優越の条件 |
予算の議決 | (1) 衆議院と参議院の議決が不一致で、両院協議会を開いても意見が一致しない場合 |
(2) 衆議院で可決されたあと、 参議院が30日以内に議決しない場合 | |
条約の承認 | (1) 衆議院と参議院の議決が不一致で、両院協議会を開いても意見が一致しない場合 |
(2) 衆議院で可決されたあと、 参議院が30日以内に議決しない場合 | |
内閣総理大臣の指名 | (1) 両議院で異なった人を指名&両院協議会を開いても意見が一致しない場合 |
(2) 衆議院の議決後、参議院が10日以内に指名の議決をしなかった場合 | |
法律案の議決 | (1) 衆議院の可決後、参議院が否決&衆議院が出席議員の3分の2以上で再可決した場合 |
(2) 参議院が60日以内に議決せず、衆議院が出席議員の3分の2以上で再可決した場合 |
衆議院の優越(オリジナル)
両院協議会とは、衆・参両院で議決が一致しなかった場合に意見調整をする場として開かれる機関です。衆・参各議院から10名ずつ選出されます。
予算の議決・条約の承認・内閣総理大臣の指名の場合は、必ず開催しなければいけません。法律案の議決の場合は、衆議院が希望したときだけ開かれます。
両院協議会で成立した案が、両議院で可決されれば、国会の議決となるわけです。
国会議員の特権
(議員バッジ:wikiより)
国会議員の特権は、
① 歳費特権
② 不逮捕特権
③ 免責特権
の3つです。
歳費特権
歳費特権とは、国会議員の活動に対して相当額の報酬を受け取れる特権です。憲法第49条に規定されています。
ちなみに歳費とは、給料のことです。
不逮捕特権
不逮捕特権とは、国会の会期中に逮捕されない特権です。
ただし会期中であっても、
・院外での現行犯の場合
・議院の承諾がある場合
は逮捕されます。
また会期前に逮捕された場合でも、議院からの要求があれば会期中は釈放されなければいけません。
不逮捕特権は憲法第50条に明記されています。
免責特権
免責特権とは、議院内で行った発言・表決について院外で責任を問われない特権です。ただし院内では懲罰を受ける場合があります。
免責特権が規定されているのは憲法第51条です。
今回の範囲はここまでです。続いて入試問題を用意しているので、チェックしてみてください。
入試問題にチャレンジ
問 下線部ⓑ(議会)に関して、日本の国会に関する記述として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 国会の議決により、内閣総理大臣および国務大臣は指名される。
② 国会改革の一環として、副大臣による答弁が廃止され、政府委員による答弁が導入されている。
③ 国会は、法律や政令を制定する権限を有する。
④ 国会の両議院は、それぞれ、立法に関する事項や行政機関の活動が適切に行われているかなどを調査するため、国政調査権を有する。
まとめ
今回は、国会の仕組み・種類・権限・国会議員の特権について解説しました。
国会は受験でも頻出のジャンルなので、この記事を何回も繰り返し読んでマスターしてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「戦後日本の安全保障体制についてわかりやすく解説(入試問題付き)【政治第17回】」をご覧ください。
次回の記事「内閣の仕組み・権限についてわかりやすく解説(入試問題も解説)【政治第19回】」をご覧ください。
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