日中戦争までの流れ(満州事変・盧溝橋事件など)をわかりやすく解説【日本史第78回】

今回は満州事変から日中戦争に至るまでの過程について解説します。

 

五・一五事件や二・二六事件など、国内の出来事についてもあわせて取り扱いました。

 

最後には入試問題も用意しているので、ぜひ最後までお読みください。

この記事からわかること

・柳条湖事件がきっかけとなって、満州事変が起きた。

・犬養毅が五・一五事件で暗殺され、政党政治は一旦終わりを迎えた。

・満州国が国際連盟に認められなかったため、1933年に日本は国際連盟から脱退した。

・天皇親政を目指す皇道派により、二・二六事件が起きた。

・盧溝橋事件を契機として、日中戦争が勃発した。

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満州事変

(柳条湖事件:wikiより)

1931年、奉天郊外の柳条湖で南満州鉄道が爆破される事件が起きます。柳条湖事件です。

 

実際は日本側が爆破したにもかかわらず、中国のしわざに見せかけ、軍事行動を開始しました。(満州事変

 

若槻内閣は、不拡大方針を声明します。不拡大方針とはできれば戦争はしないという方針のことです。

 

しかし軍は無視します。事態の収拾に自信をなくした内閣は、結局総辞職することになりました。

五・一五事件

(犬養毅:wikiより)

続いて立憲政友会の犬養毅を首相とする内閣が発足します。戦前最後の政党政治です。

 

犬養内閣は、まず金輸出を再禁止します。すると円の価値が下がり、外国の通貨と比べて円が安くなるため、日本の品物がお買い得になり、輸出が大幅に伸びました。

 

また犬養内閣時代の1932年には、満州国が建国されます。関東軍は満州の主要地域を占領し、清朝最後の皇帝溥儀を満州国の執政にたてました。

 

しかし、不拡大方針をとる犬養は満州国承認に消極的でした。犬養は軍と対立した結果、同年の五・一五事件で暗殺されてしまいます。

 

S先生
S先生
五・一五事件と同じ1932年には、右翼の血盟団員が三井合名会社理事長を暗殺した事件が起きました。これを血盟団事件といいます。

国際連盟脱退

(斎藤実:wikiより)

犬養が暗殺されたことにより、政党政治は終わりを迎えます。続いて首相に就任したのは、海軍の軍人であった斎藤実です。斎藤は、1932年に日満議定書で満州国を承認します。しかし、世界は満州を「国」として認めません。

 

なぜでしょうか?

 

日本が満州を植民地にしているからですね。国際連盟はリットン調査団を派遣し、その報告をもとに満州国を認めないという判断を下しました。これを機に日本は、国際連盟から脱退します。1933年のことでした。

 

斎藤の後を受け、岡田啓介が首相に就任します。岡田もまた海軍の軍人です。

 

1934年にワシントン海軍軍縮条約の破棄を、アメリカに通告します。また、1936年にはロンドン海軍軍縮会議も脱退しました。こうして徐々に日本は、国際社会から孤立することになります。

二・二六事件

(二・二六事件:wikiより)

日本が国際社会から孤立していくなか、国内では、陸軍内の派閥対立が激化していました。

 

政党・財閥・官僚機構と協調して政治統制を進めることを目指す統制派と、天皇親政を目指す皇道派が対立しており、このうち皇道派が大きな事件を起こします。二・二六事件です。

 

二・二六事件とは、皇道派による国家改造・軍部政権樹立を目的としたクーデタのことを指します。高橋是清・斎藤実・渡辺錠太郎らが殺害されました。

 

のちに鎮圧されたものの、二・二六事件をきっかけに、岡田内閣は総辞職に追い込まれます。

「皇道」派が「行動」をするわけだね。
たなかくん
たなかくん
S先生
S先生
・・・・

 

二・二六事件を契機に、陸軍の政治的発言力が強まっていきます。

 

 

岡田の後を受けた広田弘毅内閣は、陸軍の要求をのんで成立した内閣です。広田はまず、「広義国防国家」をスローガンに掲げ、軍備拡張を図ります。また、軍部大臣現役武官制を復活させました。このように、広田内閣は軍人の喜ぶことをするわけです。

 

さらに、ソ連を中心とする共産主義国家を仮想敵にして、ドイツと日独防共協定を締結します。

 

広田の後を受けることになったのは、宇垣一成です。しかし宇垣が総理大臣になることに反発した陸軍が陸軍大臣を出さなかったため、宇垣内閣は成立しませんでした。幻の内閣です。

 

そののち、林銑十郎内閣が発足しますが、短命に終わりました。

日中戦争

(近衛文麿:wikiより)

林の後は、第一次近衛文麿内閣です。近衛内閣が発足した直後、盧溝橋事件が起き、日中両軍が衝突し、いよいよ日中戦争へと向かいます。1937年のことです。

 

戦争前、中国では、国民政府と中国共産党が対立していたものの、西安事件をきっかけに、内戦を中止していました。そして第二次国共合作で、国民政府と中国共産党が提携し、抗日民族統一戦線を成立させます。

 

これを受け、当初不拡大方針をとっていた近衛内閣は、一転戦線を拡大しました。

 

日本は南京を占領します。対する国民政府は武漢、重慶へと逃げました。この状況を見た近衛内閣は、「国民政府を対手とせず」との声明を出します。国民政府との交渉による和平の道を自ら断ち切ったわけです。

 

続いて近衛内閣は、東亜新秩序を掲げます。東亜新秩序とは、日・中・満州の3か国が結束してアジアの中心になりましょう、ということです。あくまで建前ですけどね。そしていよいよ時代は第二次世界大戦に入っていくことになります。

 

最後に入試問題を用意しているので、ぜひチェックしてみてください。

入試問題にチャレンジ

下線部ⓕ(「今や支那事変の推移は、長期戦の備えを一層堅くするがために物心両面にわたり、ますます国家の総力をあげて、事変の目的達成に一路邁進するを要する情勢にある」)に関して述べた次の文a~dについて、正しいものの組合せを、下の①~④のうちから一つ選べ。

a 日中戦争は「大東亜共栄圏の建設」を目的として開始された。

b 近衛首相による「国民政府を対手とせず」との声明は、同政府との交渉による和平の道を閉ざした。

c 「挙国一致」をスローガンに、国民の戦意高揚と戦争協力を促す運動が行われていた。

d 日中戦争勃発後、ただちにアメリカは石油の対日輸出を禁じた。

① a・c ② a・d ③ b・c ④ b・d

2016年 センター試験 本試験 日本史B 第6問 問6より)

正解:③ a「大東亜共栄圏の建設」を目的として行われた戦争は、日中戦争ではなく、太平洋戦争です。d日中戦争が勃発したのは1937年、アメリカが石油の対日輸出を禁じたのは1941年なので、「ただちに」とはいえません。よって誤りです。したがってb・c(③)が正解となります。

まとめ

五・一五事件で犬養毅が暗殺されて以降、日本は軍備拡張を進め、国際社会から孤立していきます。

 

そして盧溝橋事件をきっかけに日中戦争が勃発し、いよいよ第二次世界大戦へと進んでいくことになるわけです。

 

今回の内容はここまでとなります。最後までお読みいただきありがとうございました。

 

前回の記事「大戦景気から昭和恐慌までをわかりやすく解説【日本史第77回】」ですのでよければ読んでください。

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