プラトンの思想(イデア論・魂の三分説・国家論)をわかりやすく解説【倫理第6回】
倫理
今回は、プラトンの思想について解説します。この記事で学べる内容は下記のとおりです。
この記事からわかること
・イデア論
・魂の三分説と国家論
初学者にも内容を十分に理解してもらえるよう、わかりやすく解説しました。
また記事の後半には、今回のテーマに関連した入試問題を用意しています。この記事を読めば、基本の理解から復習までしっかりできるよう構成しているので、最後まで読んでみてください。
プラトンの思想
(プラトン:wikiより)
プラトン(前427〜前347)はソクラテスの弟子であり、ソクラテスの思想を発展させ、西洋哲学に大きな影響を与えた人物です。
プラトンの思想でおさえておきたいのは、下記の2つです。
1つずつ解説しますね。
イデア論
そもそもイデアとは?
(イデアとは:オリジナル)
イデアとは、感覚ではとらえられない永遠不変の真の実在です。
例えば、美しい花・美しい絵画・美しい音楽は視覚や聴覚を通してとらえられますが、美そのものは決して見えないですよね。
このような「〇〇そのもの」こそが、イデアの正体です。
イデアは理性によってとらえられます。
プラトンからしてみれば、人間が実際に見たり聞いたりしている個々の事物は、イデアの影にすぎないのです。
ゆえに彼は感覚に惑わされず、理性を働かせて事物の本質たるイデアに目を向けるべきだと主張しました。
イデア論の本質【三角形を例に考えてみよう】
では、三角形を例に考えてみましょう。
(三角形のイデア:オリジナル)
私たちが実際に作図した三角形は、厳密にいえば三角形ではありません。厳密な三角形であれば、0.01mmのズレも許されないですからね。
ですが実際は上記の図のようにわずかながらゆがみがあります。
つまり、私たちが普段見ている三角形は三角形のようなものにすぎないのです。
では、私たちはなぜ「三角形のようなもの」を見て三角形だと認識できるのでしょうか?
答えは、理性によって「三角形=3本の線分からなる図形」と認識しているからです。
ゆえにたとえ不完全な形であっても、三角形を三角形だと認識できるわけですね。
しかし人間は時として、感覚でとらえられる事物をイデアだと勘違いしてしまうことがあります。
まるで洞窟の中にいて外の世界を知らない囚人が、壁に映る影絵を見て本物だと思い込むかのように。
個々の事物を本物だと思い込んでしまう人間の姿を、プラトンは上記の洞窟の比喩を用いて戒めました。
理性によってイデアを認識するというのがどういうことかわかった。
じゃあ、そもそもなんで理性によってイデアを認識できるの?
人間は真理や理想を追い求める本能的な欲求(=イデアへの憧れ)をもっているからです。真理や理想を追い求める本能的な欲求をエロースといいます。
プラトンはエロースの力を借りれば、イデアを想起(アナムネーシス)できると考えました。個物はイデアと似ているので、イデアを思い出すことができるというわけです。
最終的に人間の魂は、イデアの中のトップオブトップである善のイデアを知ろうと努めます。そして善のイデアを知ることこそが人間の最高の幸福と説きました。
善のイデアが何なのかよくわからない方は下記の図をご覧ください。
(善のイデアとは:オリジナル)
魂の三分説と国家論

魂の三分説(オリジナル)
魂の三分説とは、魂を理性・気概・欲望という3つの性質に分ける考え方です。
理性には知恵、気概には勇気、欲望には節制とそれぞれに対応する徳(すぐれた部分)があります。知恵・勇気・節制の3つがバランスよく実現している状態が正義です。
知恵・勇気・節制・正義をあわせて四元徳といいます。
そして魂と同様、国家も以下の3つに分けられます。
統治者は知恵、防衛者は勇気、生産者は節制が必要とされます。
プラトンは、各階級が身につけるべき徳をしっかり手に入れれば、理想国家が生まれると考えました。
理想国家の実現には、統治者がその他の階級を指導していかなければなりません。ゆえに統治者が哲学を学ぶ、もしくは哲学者が統治者となることを理想としました。(哲人政治)
プラトンは、アテネ民主制に対して批判的でした。
なぜか?
それはアテネ民主制により、自身の師であるソクラテスが死に追いやられたからです。
プラトンは、知恵のない民衆が国家のあり方を決めるなどもってのほかだと考えていました。なので、アテネ民主制に公然と批判の目を向けたわけです。
入試問題にチャレンジ
問 下線部ⓑに関して、プラトンについての説明として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① イデアの認識を確実にするのは、理性ではなく、憧れという欲求であると説き、イデアへの憧れに衝き動かされた魂を、翼を持った一組の馬と御者が天上に飛翔する姿になぞらえた。
② この世に生まれる前は無知であった人間の魂が、この世に肉体を持って生まれてきた後、感覚に頼ることでイデアを完全に知ることができるようになると論じた。
③ 感覚的次元に囚われた魂を、暗闇の中で壁に映し出された影を真実と思い込む洞窟内の囚人の姿になぞらえ、感覚的世界からイデアへと魂を向け変える必要があると説いた。
④ 理想国家のあり方を、理性と欲望が調和した魂の姿と類比的に論じ、そのような国家では、全ての人が哲学を学び優れた市民となることで、統治する者とされる者の関係が消滅すると述べた。
(2020年 センター試験 本試験 倫理 第2問 問2より)
まとめ
今回は、プラトンの思想について解説しました。学習内容のおさらいです。
・人間はイデアへの憧れ(エロース)をもっており、理性によってイデアをとらえることができる。
・魂は理性・気概・欲望の3つからなり、それぞれ知恵・勇気・節制という徳をもっている。
・プラトンは理想的な国家のあり方として、哲学者が統治者となるか、統治者が哲学を学ぶかのいずれかでなければならないとした。
プラトンの思想をマスターするための第一歩として、上記の3点をしっかりおさえておきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「ソクラテスの思想(魂への配慮・無知の知など)についてわかりやすく解説【倫理第5回】」をご覧ください。

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