今回のテーマは、哲学の誕生です。この記事では以下の内容が学べます。
この記事からわかること
・哲学が誕生するまでの歴史
・ギリシャ神話の主要な作者
・主な自然哲学者(タレス・ピタゴラスなど)の考え
初学者にも内容を十分に理解してもらえるよう、わかりやすく解説しました。
また記事の後半には、今回のテーマに関連した入試問題を用意しています。この記事を読めば、基本の理解から復習までしっかりできるように構成しているので、最後まで読んでみてください。
哲学とは【誕生までの歴史】
(ゼウス神殿:wikiより)
哲学とは世界や人間など、あらゆる物事を根本から探求する学問です。
哲学が誕生する前、世界で起きる出来事は神話(ミュトス)によって説明されていました。
例えば、雷=主神ゼウスが投じる武器といった感じです。
このように、哲学が生まれる以前には神話的世界観が人々を支配していました。当時の人々は、すべての現象が神々の意思によって起きていると考えていたわけです。
ここで、有名なギリシャ神話をいくつか紹介しておきます。
- ホメロス:「イリアス」「オデュッセイア」(いずれも叙事詩)
- ヘシオドス:「神統記」「仕事と日々」
- ソフォクレス:「オイディプス王」「アンティゴネ」
しかし前6世紀ごろになると、ロゴス(理性)によって世界を合理的に説明しようとする人々が現れます。哲学の誕生です。
哲学というと、現在は「仕事に対する哲学」「人生哲学」のように、価値観や人生観を意味する言葉として使われることも多いですね。
しかし最初の哲学は、自然を探求するものでした。自然を探求する哲学なので、自然哲学といいます。
主な自然哲学者【タレス・ピタゴラスなど】
(ヘラクレイトス:wikiより)
自然哲学者は、世界のあらゆる現象をすべて説明できるような、万物の根源(=アルケー)を求めました。ここでは主な自然哲学者と彼らが万物の根源をどこに求めたのかを解説します。
主な自然哲学者と彼らの主張は以下の表のとおりです。
自然哲学者 | 主張 |
タレス | 万物の根源=水 |
ピタゴラス | 万物の根源=数 |
ヘラクレイトス | 万物の根源=火/「万物は流転する」 |
パルメニデス | 「有るものはあり、有らぬものはあらぬ」 |
デモクリトス | 万物の根源=原子(アトム)・空虚(ケノン) |
エンペドクレス | 万物の根源=土・水・火・空気 |
自然哲学者の祖でもあるタレスは、万物の根源は水であると主張しました。
一方、ピタゴラスは万物の根源を数に求めます。そして音楽的な美は数の秩序によって成り立っていると捉えました。
ヘラクレイトスは、自然界は常に変化すると考えます。彼がのこしたとされる言葉「万物は流転する」(パンタ・レイ)は有名ですね。
また変化するモノの象徴として火を取り上げ、火こそが万物の根源だと主張しました。さらに、変化の背後には一定の法則性があると捉えていたこともおさえておきましょう。
ヘラクレイトスとは対照的に、パルメニデスは「世界は不変不動である」と主張しました。彼の有名な言葉に「有るものはあり、有らぬものはあらぬ」があります。これは有から無になることはないという意味です。
デモクリトスは、万物の根源を原子(アトム)と空虚(ケノン)に求めました。アトムとは、「これ以上分割できないもの」を意味します。デモクリトスは、さまざまな種類の原子が空虚の中を飛び回っていると考えたのです。
エンペドクレスは、万物の根源=土・水・火・空気だと主張します。そして、これらの4元素が愛と憎しみによって分離・結合すると考えました。
入試問題にチャレンジ
問 下線部ⓕに関連して、古代ギリシア・ローマにおける哲学者についての記述として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① ヘラクレイトスは、万物の根源は火であるとしたうえで、「万物は流転する」と唱え、その絶えず変化する様子に法則性は認められず、調和した秩序は見せかけのものにすぎないと主張した。
② パルメニデスは、論理的思考に基づいて、在るものは常に在ると説き、世界に起きる変化や生成は見かけだけの現象にすぎず、存在するものはただ一つであって、生成も消滅もしないと主張した。
③ プラトンは、この世に生まれた人間の魂を、感覚の世界に囚われ、イデアを忘却してしまったものと考え、イデアの世界はいかなる手段によっても知ることができないとする二世界説を唱えた。
④ マルクス・アウレリウスは、ローマ皇帝であると同時に、自らも哲学を修め、この世の現象は原子の不規則な動きによって構成されているという原子論の考えを発展させた。
①:「その絶えず変化する様子に法則性は認められず、」以降の文章が誤りです。ヘラクレイトスは、万物が一定の法則性に従って変化しているとしたうえで、そこに調和した秩序が成り立っていると主張しました。③:プラトンは、イデアはエロース(真理や理想を追い求める本能的な欲求)の力で想起できると考えたので、「イデアの世界はいかなる手段によっても知ることができない」の記述が間違いです。なおプラトンについて詳しく知りたい方はこちらの記事「プラトンの思想(イデア論など)についてわかりやすく解説【倫理第6回】」をご覧ください。④:原子論の考えを発展させたのは、デモクリトスです。
まとめ
今回は、哲学が誕生するまでの歴史と主要な自然哲学者について解説しました。学習内容のおさらいです。
・哲学が誕生する以前、世界で起こるすべての現象は神話(ミュトス)によって説明されていた。しかし紀元前6世紀ごろになると、理性(ロゴス)によって世界を理解しようとする動きが進んだ。
・主な自然哲学者は、タレス・ピタゴラス・ヘラクレイトス・パルメニデス・デモクリトス・エンペドクレスである。
哲学が誕生するまでの大まかな流れはしっかり理解しておきましょう。
また自然哲学者については、万物の根源をどこに求めたのか、一人ひとり区別して覚えておいてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「人間心理のメカニズム(防衛機制など)についてわかりやすく解説【倫理第3回】」をご覧ください。
次回の記事「ソクラテスの思想(無知の知など)についてわかりやすく解説【倫理第5回】」をご覧ください。
共通テスト対策本は「蔭山の共通テスト倫理」がおすすめです。図解・イラスト付きで読みやすいので、受験生はもちろん、倫理をはじめて学ぶ人もご一読ください。
コメント