今回は、EU・ASEANなどの地域的経済統合について取り上げます。
とくにEUについては成立までの歴史や締結された条約についても詳しく解説しました。また、ASEAN・TPPといったEU以外の経済統合についても紹介しています。
最後には入試問題も用意しているので、ぜひ最後までお読みください。
この記事からわかること
・EC・EUが成立するまでの歴史
・世界の経済統合について(ASEAN・NAFTA・TPPなど)
EUとは
(欧州連合加盟国:wikiより)
欧州連合(EU)とは、ヨーロッパを中心に27か国が加盟する政治・経済統合体です。EUが発足するまでには長い歴史があり、それは第二次世界大戦直後にまでさかのぼります。
EC成立までの歴史
(チャーチル:wikiより)
終戦後の1946年、イギリスのチャーチルが「ヨーロッパ合衆国構想」を提唱したことをきっかけに、ヨーロッパを統合しようとする動きが加速しました。
こうしたなかで、1952年に設立されたのが欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)です。1950年にフランスが提案したシューマンプランをきっかけに作られました。
フランス・西ドイツ・イタリア・ベルギー・オランダ・ルクセンブルクの6か国が石炭・鉄鋼を共同で管理することで、資源をめぐる争いを防ぐのが狙いでした。
そして1957年にはECSCに参加した6か国がローマ条約を締結し、翌1958年には欧州経済共同体(EEC)と欧州原子力共同体(EURATOM)が設立されました。
イギリスはどうしたの?
イギリスは、EECに対抗するため、1960年にスウェーデン・ノルウェー・デンマーク・スイス・オーストリア・ポルトガルと欧州自由貿易連合(EFTA)を結成しました。
しかし、のちにEUに移る国が増えたこともあり、現在はノルウェー・スイスのほか、のちに加盟したアイスランド・リヒテンシュタインの4か国のみとなっています。
そして1967年、ECSC・EEC・EURATOMの3つが合体して、EUの前身である欧州共同体(EC)ができました。
ECの主な取り組みは、域内関税の撤廃と対外共通関税の採用です。
1968年に関税同盟が成立し、域内では関税・輸入制限が撤廃された一方、域外からの輸入品にはどの加盟国も共通の関税をかける仕組みが導入されました。
ほかにもECでは、通貨統合に向けての取り組みも進められ、1979年には域内で固定相場制をとる欧州通貨制度(EMS)が発足します。
また、1987年にはローマ条約に代わるECの憲法として単一欧州議定書が発効されました。
この間に多くの国がECへ加盟を果たします。1973年にはアイルランドに加え、EFTAを脱退したイギリス・デンマーク、1981年にギリシャ、1986年にスペイン・ポルトガルが加盟しました。
EU成立・施策
(欧州連合:wikiより)
そして1992年にマーストリヒト条約が調印され、翌年ついにEUが発足します。
これでようやくサービス・モノ・労働力・カネの自由な移動が可能になったわけです。
1998年には欧州中央銀行(ECB)が設立され、1999年には単一通貨ユーロが導入されました。
また、同年には、ローマ条約とマーストリヒト条約の修正条約として、アムステルダム条約が発効されます。
マーストリヒト条約では共通外交・安全保障政策において全会一致制が採用されていたのに対し、アムステルダム条約では多数決制が導入されました。
さらに、2000年にはEUの東欧拡大に備えた新たなEU基本条約としてニース条約が合意されます。
そして2004年にはEU憲法が採択されました。しかし、フランス・オランダの未批准により、発効のめどが立たない状況が続いたため、EUは2009年にリスボン条約を発効します。
リスボン条約では、EU大統領・EU外相が新設されるなど制度改革が行われたことを覚えておきましょう。
21世紀以降もEUへの加盟国は増え続けましたが、2016年6月にイギリスは国民投票でEUからの離脱が決まり、2020年1月、加盟国として初めてEUから脱退しました。
世界の経済統合
(TPP:wikiより)
EUだけではなく、世界各地で経済統合が進められています。
東アジアでは1967年に東南アジア諸国連合(ASEAN)が発足しました。
北アメリカでは、1992年にアメリカ・カナダ・メキシコが北米自由貿易協定(NAFTA) に調印しています。(1994年発効)
南アメリカでは、1995年にアルゼンチン・ブラジル・パラグアイ・ウルグアイの4か国で南米南部共同市場(MERCOSUR) が発足しました。
また、2016年2月に署名された環太平洋パートナーシップ協定(TPP)も重要ですね。
TPPは、太平洋周辺諸国間で関税をなくし、モノ・サービスなどの貿易自由化を目指す協定です。
しかし、2017年にアメリカがTPPを離脱したため、日本を含む11か国は2018年12月に新協定であるCPTPPを発効しました。
今回の範囲はここまでです。続いて入試問題を用意しているので、ぜひチェックしてみてください。
入試問題にチャレンジ
問 下線部ⓕ(ユーロ)に関連して、次のA~Dは、ヨーロッパにおける地域統合と共通通貨の導入とをめぐる出来事についての記述である。これらの出来事を古い順に並べたとき、3番目にくるものとして正しいものを、下の①~④のうちから一つ選べ。
A 欧州経済共同体(EEC)が発足した。
B 欧州中央銀行(ECB)が設立された。
C ユーロの紙幣および硬貨の流通が始まった。
D 欧州連合(EU)が発足した。
① A ② B ③ C ④ D
一つひとつの取引が「貿易・サービス収支」「第一次所得収支」「第二次所得収支」のどれに当てはまるのか、ていねいに分類していくことがポイントです。また、矢印の向きに注目することも重要ですよ。
まず1つ目の矢印「株式の配当」ですが、これはA国がB国に対して株式投資を行い、リターンとして配当を得たわけですから、第一次所得収支に該当します。
2つ目の矢印「医薬品のための無償資金援助」は、第二次所得収支です。
3つ目の矢印「特許使用料」は、貿易・サービス収支に当てはまりますね。
4つ目の矢印「外国人労働者による家族への送金」は、外国人労働者による母国への援助と考えると、第二次所得収支に該当します。
5つ目の矢印「国債の利子」は、先ほどの「株式の配当」と同様、第一次所得収支です。
最後の矢印「電気機器の輸入代金」は、貿易・サービス収支ですね。
これを踏まえて、「貿易・サービス収支」「第一次所得収支」「第二次所得収支」を算出します。
貿易・サービス収支は、特許使用料(25億ドル)と電気機器の輸入代金(35億ドル)です。特許使用料は矢印の向きから判断すると、B国からA国へお金が流入しているので、プラスになります。逆に電気機器の輸入代金はマイナスになるので、貿易・サービス収支は-10億ドル(=25-35)です。
第一次所得収支の、株式の配当(40億ドル)と国債の利子(10億ドル)はともにB国からA国へお金が流入しているわけですから、いずれもプラスになります。よって第一次所得収支は50億ドル(=40+10)です。
第二次所得収支の、医薬品のための無償資金援助(5億ドル)と外国人労働者による家族への送金(10億ドル)はいずれもB国へお金が流出しているため、マイナスになります。したがって第二次所得収支は-15億ドルです。(=-5-10)以上より、正解は③となります。
A:1958年・B:1998年・C:2002年・D:1993年なので、A→D→B→Cとなるので、正解は②です。
②・③:経常収支には、旅行や輸送によって生じる収支や、雇用者報酬・消費財の無償援助が含まれます。
④:直接投資は、金融収支に含まれるので、間違いです。
まとめ
今回は、EU・ASEANなどの地域的経済統合について解説しました。
なかでもEUの歴史については、ECSC・EEC・EURATOM→EC→EUという大まかな流れをしっかりおさえておいてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「国際経済体制(ブレトンウッズ体制など)についてわかりやすく解説【経済第18回】」ですのでよければ読んでください。
次回の記事「南北問題・南南問題についてわかりやすく解説(入試問題つき)【経済第20回】」をご覧ください。
政治経済を理解するには「蔭山の共通テスト政治・経済」がおすすめです。政治経済の細かいところまで解説してくれるので、受験生はぜひとも一読をするとよいでしょう。
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