今回は、公害について取り上げます。
公害とは何かという基本的な部分から、環境基本法で定義されている典型7公害・公害の歴史・世界の公害まで、幅広い内容を解説しました。
最後には入試問題も用意しているので、ぜひ最後までお読みください。
この記事からわかること
・公害とは何か
・典型7公害について
・公害の歴史
・日本における公害対策
・世界で起きている公害
公害とは
(土壌汚染:wikiより)
公害とは、企業の生産活動によって生活環境や健康などに被害が生じることです。1993年に制定された環境基本法では、大気汚染・水質汚濁・土壌汚染・騒音・振動・地盤沈下・悪臭を典型7公害として定めています。
次の項目からは公害の歴史や対策について見ていきましょう。
公害の歴史
(田中正造:wikiより)
日本初の公害問題は、明治時代の足尾銅山鉱毒事件までさかのぼります。
足尾銅山鉱毒事件とは、銅・硫酸・亜鉛などの鉱毒が渡良瀬川に流入し、農作物を中心に大きな被害をもたらした事件です。栃木県出身の衆議院議員田中正造は、この問題を追及し続け、天皇への直訴まで行いました。
高度成長期になると、日本の公害問題が深刻化し、全国でさまざまな産業公害が発生します。とりわけ、水俣病・新潟水俣病・イタイイタイ病・四日市ぜんそくは四大公害と呼ばれ、訴訟が提起されました。結果は、すべて被害者側の全面勝訴でした。
下記の表は四大公害の発生時期・場所・症状などをまとめたものです。日々の学習にぜひご活用ください。
表(オリジナル)
公害対策
(大気汚染:wikiより)
高度成長期は、各地で公害問題が発生したことを受け、反公害の世論が高まった時代でもありました。
政府は公害問題に対処するため、1967年に公害対策基本法を制定し、事業者・国・地方公共団体の責務を明確化します。
1970年には、1968年に制定された大気汚染防止法の改正や、水質汚濁防止法の制定など、公害対策に関する14もの法律を整備しました。翌1971年には環境庁が発足し、1973年には公害健康被害補償法が制定されます。
環境基準では、有害物質の濃度を規制する濃度規制だけではなく、排出される有害物質の総量を一定地域ごとに規制する総量規制も認められるようになりました。
1993年には、公害対策基本法に代わり、環境基本法が成立します。公害対策基本法と環境基本法の違いは、国や地方公共団体、事業者だけではなく、国民にも環境保全の責務を課している点です。非常に重要な点なのでおさえておいてください。
続いて1997年には、環境アセスメント法が制定されます。これにより、国や企業が大規模な開発を行う際は、環境への影響を事前に調査・評価し、地域住民に説明したうえで環境保全の対策をとることが義務づけられました。
このほか、1999年にはダイオキシン類対策特別措置法、2006年には石綿健康被害者救済法が制定されました。
公害を防止する原則は大きく2つあります。
1つ目は、汚染者負担の原則です。汚染者負担の原則とは、公害防止費用は汚染発生者が負担すべきであるという考え方で、1972年に経済協力開発機構が採択したルールでもあります。
2つ目は、無過失責任主義です。故意・過失に関わらず、加害企業が損害賠償責任を負うべきとする考え方のことを指します。
世界の公害
(ロンドンスモッグ:wikiより)
公害が起こっているのは日本だけではありません。世界でも深刻な公害問題が起きています。
代表的なのが、1952年にイギリスで発生したロンドンスモッグです。石炭による硫黄酸化物が原因で大気汚染が進行し、1万人以上が死亡した、史上最悪規模の公害事件として知られています。
このほかにも、先進地域では大気汚染、途上国では森林や水質の劣化が進むなど、各地でさまざまな公害が起きており、大きな社会問題となっているのが現状です。
近年では、スウェーデンやドイツ、イギリスを中心に、二酸化炭素の排出量に対する課税(炭素税)が導入されるなど、対策が進められています。
今回の範囲はここまでです。続いて入試問題を用意しているので、ぜひチェックしてみてください。
入試問題にチャレンジ
下線部ⓔ(環境対策)に関連して、国際的な環境保全の取組みや日本における郊外への対策についての記述として適当でないものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① モントリオール議定書とは、フロンの生産や消費を規制した国際条約である。
② 汚染者負担の原則とは、公害の発生源である企業が被害の補償費用や汚染の防止費用を負担するという考え方である。
③ 足尾銅山から排出された鉱毒による被害をうけて、公害対策基本法が制定された。
④ アスベスト(石綿)による被害をうけて、石綿健康被害救済法(アスベスト新法)が制定された。
まとめ
今回は、公害問題について解説しました。
この記事を通して、公害の歴史や日本での公害対策をしっかり理解していただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「農業・中小企業問題についてわかりやすく解説(入試問題も解説)【経済第8回】」ですのでよければ読んでください。
次回の記事「消費者問題についてわかりやすく解説(入試問題も用意)【経済第10回】」をご覧ください。
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