みなさん、こんにちは。数学ⅠAのコーナーです。今回のテーマは【中線定理】です。
定理の証明は、よく問題に出されます。中線定理も例外ではなく、しっかりと証明方法を押さえておくのが良いでしょう。今回は、三平方の定理による証明、余弦定理による証明、ベクトルによる証明、座標平面による証明と4つの証明方法を解説します。
さらに今回の記事では中線を求める演習問題も用意しました。しっかりと最後まで読んで理解していきましょう。
中線の長さが求められるようになることはもちろん、自分がやりやすい証明方法を見つけられるようにがんばりましょう!
・中線定理の証明がわかる
・自分で実際に中線定理の証明ができる
・演習問題を通じて自分で実際に中線定理を使える
中線定理とは?
中線とは、頂点と向かい合う辺の中点を結ぶ線のこと。
下の図では、点線で示したAMが中線にあたります。
$$AB^{2}+AC^{2}=2\left(AM^{2}+BM^{2}\right)$$
中線定理の証明
それでは三平方の定理による証明、余弦定理による証明、ベクトルによる証明、座標平面による証明について中線定理をみていきいます。
各々しっかりと理解してきましょう。
三平方の定理による証明
今回は、図のようにAB<ACとして考えます。(AB=AC, AB>ACのときも同様に証明できます。)
頂点Aから辺BCにおろした垂線の足をHとします。
△ABHにおいて、三平方の定理より
$AB^{2}=BH^{2}+AH^{2}$
$=\left(BM-HM\right)^{2}+AH^{2}$
$=BM^{2}-2BM HM+HM^{2}+AH^{2}$ …①
△AHCにおいて、三平方の定理より
$AC^{2}=CH^{2}+AH^{2}$
$=\left(HM+MC\right)^{2}+AH^{2}$
BM=CMなので
$=HM^{2}+2BMHM+BM^{2}+AH^{2}$ …②
①②より
$AB^{2}+AC^{2}=BM^{2}-2BM HM+HM^{2}+AH^{2}+HM^{2}+2BM HM+BM^{2}+AH^{2}$
$=2\left(BM^{2}+HM^{2}+AH^{2}\right)$ …③
△AHMにおいて、三平方の定理より
$AM^{2}=HM^{2}+AH^{2}$ …④
③④より
$AB^{2}+AC^{2}=2\left(AM^{2}+BM^{2}\right)$
余弦定理による証明
△AMBにおいて余弦定理より
$\cos ∠AMB=\frac{AM^{2}+BM^{2}-AB^{2}}{2AM BM}$
△AMCにおいて余弦定理より
$\cos ∠AMC=\frac{AM^{2}+CM^{2}-AC^{2}}{2AM CM}$
$\cos ∠AMB=-\cos ∠AMC$, BM=CMより
$AM^{2}+BM^{2}-AB^{2}=-AM^{2}-BM^{2}+AC^{2}$
式を整理すると
$AB^{2}+AC^{2}=2\left(AM^{2}+BM^{2}\right)$
ベクトルによる証明
$\vec{MA}=\vec{a}$, $\vec{MB}=\vec{b}$とおくと、$\vec{MC}=-\vec{b}$
$\vec{AB}=\vec{AM}+\vec{MB}$, $\vec{AC}=\vec{AM}+\vec{MC}$なので
$AB^{2}+AC^{2}=|-\vec{a}+\vec{b}|^{2}+|-\vec{a}-\vec{b}|^{2}$
$=2|\vec{a}|^{2}+2|\vec{a}|^{2}$
$=2BM^{2}+2AM^{2}$
式を整理すると
$AB^{2}+AC^{2}=2\left(AM^{2}+BM^{2}\right)$
座標平面による証明
Mを原点とする座標平面で考えましょう。Aの座標を(a, b)、Cの座標を(c, 0)とすると、Bの座標は(-c, 0)
$AB^{2}+AC^{2}=\left(a+c\right)^{2}+b^{2}+\left(a-c\right)^{2}+b^{2}$
$=2a^{2}+2b^{2}+2c^{2}$ …①
$2\left(AB^{2}+BM^{2}\right)=2\left(a^{2}+b^{2}+c^{2}\right)$ …②
①②より
$AB^{2}+AC^{2}=2\left(AB^{2}+BM^{2}\right)$
中線定理を忘れてしまったときどう対応する?
「中線を求める問題が出たのに、中線定理を忘れてしまった…。」
そういう場合は、二等辺三角形で考えてみましょう。
AB=x, AC=x, BC=2yの二等辺三角形があるとします。
このとき、AMを中線とすると、$AM^{2}=x^{2}-y^{2}$
中線定理の左辺が$AB^{2}+AC^{2}$だということさえ覚えていたら、$AB^{2}+AC^{2}=2x^{2}$なので、$AM^{2}=x^{2}-y^{2}$に何を足せば$2x^{2}$になるか考えればよいことになります。
$AM^{2}=x^{2}-y^{2}$に$y^{2}$すなわち$BM^{2}$を足せば、$x^{2}$となります。
よって、$AB^{2}+AC^{2}=2x^{2}=2\left(AM^{2}+BM^{2}\right)$と中線定理が導けます。
中線定理を忘れても思い出せるように、中線の大きさを$AB^{2}+AC^{2}$を使って導けることを押さえておきましょう。
中線定理を利用する練習問題
問題
△ABCにおいて、辺BCの中点をMとする。次の(1)(2)の場合、中線AMの大きさを各々答えなさい。
(1)AB=5, BC=6, CA=4の場合
(2)AB=5, BC=8, CA=7の場合
解答
$AM^{2}=\frac{41}{2}-9=\frac{23}{2}$
AM>0より
$AM=\frac{\sqrt{46}}{2}$
$AM^{2}=\frac{74}{2}-16=21$
AM>0より
$AM=\sqrt{21}$
今回のまとめ
今回は、中線定理について解説しました。
証明方法を4つ紹介しましたが、やりやすい方法を見つけられましたか?ベクトルや座標平面を用いた証明はなじみがなかったかもしれませんが、意外とかんたんだと気付いた方も多いでしょう。
今後も、定理を勉強するときは、その証明方法まで合わせて理解するようにしましょう。
今回もおつかれさまでした。
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