沖積平野?扇状地?三角州…なんかどこかで聞いたことがあるような言葉ですよね。沖積平野とは、河川の堆積作用によって生じた地形をさします。そして、この沖積平野は人類の歴史と発展の中において文明を発展させる原動力となり、社会が豊かかつ便利になるにあたってとっても役立ってきた地形なんです。
今回は社会を発展させる原動力である沖積平野という地形について解説したいと思います。この沖積平野には三角州、扇状地、氾濫原がに分かれるのですが、各々入試に必要な範囲で解説します。しかも、三角州の種類でカプス三角州など細かい説明だけでなく図をふんだんに取り入れイメージのしやすい形に作成しました。
沖積平野を学ぶということは地理を学ぶだけでなく、歴史や政治経済を理解するのにも十分役に立つと思いますので、地理を学んだことのない人も一緒に理解していきましょう。
この記事を10分で読んでりかいできること・受験に必要な範囲の沖積平野とは何かを理解できる
・三角洲の種類であるカプス状・円弧状・鳥趾状について理解できる。
・氾濫原とは何か図入りで理解できる
沖積平野とは…文明のふるさと
(沖積平野の一例 (新潟県・越後平野)出典:地理院地図|国土地理院)
沖積平野とは、河川の堆積作用(河川が砂を運び、それが蓄積すること)によって生じた平野のことで、一般的に利水がしやすいうえに、平たんでかつ肥沃な土壌であることから農耕に適しています。沖積平野の越後平野については以下の写真みたいな感じです。
写真で取り上げた越後平野は現在、日本有数の稲作地帯(米どころ)として有名ですね。世界の文明もその多くは河川の流域を発祥としていますので(例えば世界史で習うメソポタミア文明など、四大文明はいずれも河川沿いで発祥しました)、沖積平野は文明のふるさとといえます。
また、文明が発祥することから沖積平野には都市が形成されることも多いです。ただ、豪雨などでたびたび水害の被害に見舞われることも多く、さらに地盤そのものも非常に軟弱であり、地盤沈下や地震の際には液状化現象が発生するなど、災害には非常に弱い地形であるともいえます。
例えば、越後平野では1964年の新潟地震発生時には大規模な液状化現象が発生し、多くの建物が倒壊してしまいました。
沖積平野には様々な種類のものがあり、扇状地、氾濫原、三角州などにその詳細を区分することができます。これらは私たちの身近にも多く存在し、またよく利用されています。そこで、次の章からはそれらを詳しく説明していきたいと思います。
三角州…カプス状・円弧状・鳥趾状、土砂がもたらす河口の地形
三角州の一例(広島県広島市 太田川)出典:地理院地図|国土地理院
三角州とは、河川によって運搬された土砂が河口付近に溜まったことで形成された地形のことで、デルタとも呼ばれる地形のことを言います。その名前の通り、三角形状の地形が形成されていきますが、三角州だからといって必ずしも三角形状の地形になるというわけではありません。河川が供給する土砂が三角形状に堆積するとは限らないからです。
例えば、三角州の海に面する海岸線が海の波によって浸食され河口付近を頂点にとがるような形状になることがあります。こうして形成された三角州はカプス状三角州と呼ばれます。カプス状三角州の一例としてイタリア・デウェレ川河口があります。
(イタリア・デウェレ川河口)Google Mapsより編集、一部加工(2020年2月15日最終閲覧)
反対に、波の浸食作用が弱く、堆積部分が削られにくい場合もあります。この場合は鳥の趾(あし)のように土砂が堆積することもあります。こうして形成された三角州は鳥趾状(ちょうしじょう)三角州と呼ばれます。鳥趾状三角州の一例としてアメリカ・ミシシッピ川河口があります。
アメリカ・ミシシッピ川河口Google Mapsより編集、一部加工(2020年2月15日最終閲覧)
一方で、カプス状三角州同様、波の浸食作用によって堆積部分が削られるものの、上流からの土砂の供給が豊富にあるため、削り取られたところが再び砂で埋まるということも生じます。このように、波による浸食作用と河川の運搬作用のバランスが取れた場合、三角州の河口部が円弧上に広がることがあります。こうして形成された三角州は円弧状三角州と呼ばれます。円弧状三角州の一例としてエジプト・ナイル川河口があります。
円弧状三角州の一例(エジプト・ナイル川河口)Google Mapsより編集、一部加工(2020年2月15日最終閲覧)
氾濫原…洪水が生み出すなだらかな平野
氾濫原の一例(新潟県新潟市・阿賀野川流域)出典:地理院地図|国土地理院
氾濫原とは洪水発生時に流水が河川などから越水し、氾濫する範囲にある平野のことで、沖積平野のうち洪水発生時に浸水する範囲を示します。氾濫原は河川によって自然に作られる堤防(微高地)である自然堤防やその自然堤防の後ろに広がる低地である後背低地などの微地形の集合体です。
氾濫原を構成する堆積物は川の運んできた未固結の物質からなるもので、とくに蛇行州の発達によって側方への堆積が促進されます。洪水時に上流側から運ばれてきた物質の堆積は側方への堆積に比べて少ないものの、自然堤防や後背湿地などの形成には大きな役割を果たします。
自然堤防では居住地などの、後背低地では水田などの土地利用が見られます。空中写真や地形図で氾濫原を判読する際には、土地利用からの判読を主な手段として用います。例えば上図は新潟県新潟市の阿賀野川流域の氾濫原の空中写真です。
河川沿いに線上に集落が形成されているのが読み取れますね。その線上の集落の位置しているところが、自然堤防です。そして、その周辺で水田として利用されているのが後背低地となるわけです。ところで、画像上部の河川から離れたところで円弧状の集落が読み取れますよね。
これは、かつてはその付近を河川が流れていた名残です。ただし近年では土木技術等の発達により、後背湿地でも居住地の土地利用が見られることがあります。
扇状地…谷の出口に開く土砂の扇
扇状地の一例(山梨県勝沼地区)出典:地理院地図|国土地理院
扇状地とは狭い山間部を流れる急流の河川が広い平坦な土地に出た際に、その流れが弱まることにより山間部から河川によって運搬されてきた土砂が扇状に堆積し形成された土地のことを言います。
河川が洪水の度に流路を変えるため、結果として長い年月をかけて広く、扇状に堆積するため、扇状に広がりを持つ地形が形成されるのです。扇状地の中には、海岸線まで扇状地が形成されているものもあります。
海岸まで到達した扇状地の一例(富山県黒部川流域の扇状地)出典:地理院地図|国土地理院
扇状地は上流部から順に扇頂、扇央、扇端に区別され、それぞれ違った土地利用を示します。扇端部分には扇頂で伏流する伏流水が湧水となって湧き出ることから集落や水田が作られることが多く、反対に水がしみこみやすい扇央部分では、水分をあまり必要としない作物の栽培に適していることから果樹園等で利用されることが多いです。
ただ、近年では土地改良がなされて水田として利用されている地域もあります。
まとめ
沖積平野は人類の歴史とその社会的な発展に大いなる影響を与えてきました。沖積平野なしに、人類はここまでの文明を築くことは不可能に近かったでしょう。
現在でも沖積平野では多くの農作物が生産されますし、一方では日本をはじめ世界各国の主な都市は基本的にこの沖積平野にあることが多く、沖積平野は文明の中心地としての機能を有しているといえます。
沖積平野と向き合ってきた人類の歴史に思いをはせながら、一度沖積平野を探訪してみるのはいかがでしょうか。
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