今回のテーマは、青年期です。この記事では以下の内容が学べます。
この記事からわかること
・青年期の歴史
・青年期の特徴
・青年期の発達課題
初学者にも内容を十分に理解してもらえるよう、わかりやすく解説しました。
また記事の後半には、今回のテーマに関連した入試問題を用意しています。この記事を読めば、青年期とは何かがはっきりわかりますよ。最後まで読んでみてくださいね。
青年期とは
(青年期:wikiより)
青年期とは、子どもから大人になるまでの途中の時期を指します。
人間の発達過程は下記のとおりです。
- 第一次性徴(生まれてすぐ)
- 第一反抗期(3~4歳ごろ)
- プレ青年期(10~14歳ごろ)
- 青年前期(14~17歳ごろ)
- 青年後期(17~23歳ごろ)
- プレ成人期(23~30歳ごろ)
順を追って解説します。
※年齢はあくまでも目安です。個人差があることを理解しておいてください。
まず第一次性徴とは、生まれつき見られる男女の違いのことです。生まれてすぐの時点で性別を判断する要素が何なのかを考えてみるとわかりやすいと思います。
2つ目の第一反抗期とは、3〜4歳ごろにあらわれる最初の反抗期です。「イヤー!」とダダをこねる行動は、第一反抗期の典型ですね。
3つ目のプレ青年期とは、心身発達上の大きな変化が生じる10歳〜青年期に入る手前(14歳ごろ)の期間です。そして中学生ごろからいよいよ青年期に入ります。
そして青年後期を経て、プレ成人期へと続いていくわけです。
近年では社会の文明化とともに、青年期が長期化しています。社会の複雑化・高度化により、大人になるために必要な知識が増えたからです。進学率の上昇からも青年期の長期化がうかがえます。
青年期の歴史
(バンジージャンプ:wikiより)
青年期が出現したのは、産業革命期のころと考えられています。それまでは何らかの通過儀礼を経て、いきなり大人の仲間入りをしていました。
南太平洋にあるバヌアツ共和国でおこなわれているバンジージャンプは通過儀礼の典型例ですね。日本の成人式も通過儀礼の一種です。
またフランスの歴史学者アリエスによると、子どもは7歳くらいから「小さな大人」とみなされていたといいます。中世のヨーロッパでは、「子ども」は存在していなかったというわけです。
青年期の特徴
(レヴィン:wikiより)
青年期の特徴は、下記の3つです。
- 第二次性徴
- 自我が芽生える
- 異性を含めた友人関係が深まる
1つずつ解説します。
第二次性徴
12〜13歳ごろから身体的で急激な変化が起こります。生まれてすぐの第一次性徴に対して、こちらは第二次性徴と呼ばれます。
青年は身体面の発達が著しい反面、精神的には未熟で経済的にも自立していません。青年期とは、非常に不安定な時期なのです。
ゆえにドイツの心理学者レヴィンは、青年をマージナルマン(境界人)と呼びました。
自我のめざめ
自我が芽生えると、親の保護・監督から離れて、一人の独立した人間になろうとする衝動にかられます。精神的な親離れが始まるわけです。
強い自我意識は、時として周囲の大人に対する反抗的な態度により表面化することもあります。3〜4歳ごろの第一反抗期に対して、こちらは第二反抗期と呼ばれます。
一方、フランスの思想家ルソーは青年期を「第二の誕生」と定義しました。
また自我が目覚めると、周囲からの視線を強く意識するようになります。あなたも実際には見られているわけではないのに誰かに見られているような気がするといった経験はありませんか?
異性を含めた友人関係が深まる
くりかえしですが、青年期は自我が目覚める時期です。なので、周囲の大人の世界に対して違和感や圧迫感を覚え始めます。
そして他人に自分を理解してもらいたいと願うようになり、自分のことをわかってくれる友人を欲します。結果として、友人関係が深まっていくのです。
要するに、青年期は不安的な時期である一方、他者との関係の中で人間として大きく成長できる時期でもあるわけですね。
青年期の発達課題【アイデンティティの確立】
(エリクソン:wikiより)
アメリカの心理学者エリクソンが青年期の発達課題としてあげたのは、「アイデンティティの確立」です。
発達課題とは、人生の各段階で獲得すべき心理的特質のことです。エリクソンよりも前に、アメリカの心理学者ハヴィガーストが提唱しています。
エリクソンは人生を8段階にわけ、各段階での発達課題を下記のように提示しました。いわゆるライフサイクル論と呼ばれるものです。
発達段階 | 発達課題と対抗要素 |
乳児期 | 基本的信頼vs不信 |
幼児期 | 自律性vs恥・疑惑 |
児童期 | 主体性vs罪悪感 |
学童期 | 勤勉性vs劣等感 |
青年期 | 自我同一性(アイデンティティ)vs同一性拡散 |
成人期 | 親密性vs孤立 |
壮年期 | 世代性vs停滞 |
老年期 | 自我の統合vs絶望 |
(表:エリクソンのライフサイクル論)
ちなみに、対抗要素とは発達課題をクリアするために乗り越えるべき壁のことだと思ってください。乳児期を例にすると、不信感を克服することで信頼感が得られるという感じです。
エリクソンは人生の8段階の中でも、とくに青年期を重視しています。
彼は、青年期こそさまざまな経験を通してアイデンティティを確立する時期だと主張しました。アイデンティティとは、わかりやすくいえば自分らしさのことです。
もちろんほかの発達課題と同様、アイデンティティの確立も簡単にはいきません。時には同一性拡散(アイデンティティの危機)におちいることもあります。
例としては下記のとおりです。
- 「自分は何のために生きているのか?」と深く思い悩む
- 対人不安におちいる
しかし、こうした苦しみは「本当の自分」を見つけるために必要なプロセスでもあります。だからこそ青年期は、社会的責任や義務から猶予されているわけです。
エリクソンは、青年に与えられた上記のような猶予期間を心理・社会的モラトリアムと呼びました。
今のうちにいろんなことを経験するのは大事なんだな。よし!いっぱい遊んで恋するぞ!
勉強することも忘れずに…
青年期にまつわるキーワード【超重要】
(若者の失業率:wikiより)
青年期に関連する主要キーワードは下記のとおりです。
- モラトリアム人間
- ピーターパン・シンドローム
- パラサイト・シングル
- フリーター
- ニート
モラトリアム人間
モラトリアム人間とは、大人としての責任を負うことを意識的に回避し、いつまでも子どもであり続けようとする人間像を指す言葉です。
心理学者の小此木啓吾が命名しました。
ピーターパン・シンドローム
ピーターパン・シンドロームとは、大人への成長を拒む男性のことを指します。モラトリアム人間の類義語です。
アメリカの心理学者カイリーが命名しました。
パラサイト・シングル
パラサイト・シングルは、修学期間を終えた後も、何らかの理由で親元を離れることなく暮らしている独身者のことを指します。
フリーター
フリーターは、和製英語「フリー・アルバイター」の略です。主にパートやアルバイトで働く若者を指すことが多いですね。
ニート
ニートとは、英語の「Not in Employment, Education or Training」の頭文字をとった言葉です。教育・雇用・職業訓練のいずれにも参加していない若者のことをいいます。
フリーターとの違いは、収入の有無です。フリーターには収入がありますが、ニートは一切働いていない者を指します。
入試問題にチャレンジ
問 下線部ⓓ(青年期)に関して、青年期の発達に関する記述として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① ルソーは、「ライフサイクル」という語を用いて、乳児期から青年期を経て成熟期(老年期)に至る八つの期からなる人間の発達について論じた。
② 青年期に、親をはじめとする大人の保護や監督から離れ、精神的に自立していくことは、「心理的離乳」と呼ばれる。
③ ユングは、子どもから大人への過渡期にあり、子どもの集団にも大人の集団にも安定した帰属意識をもてない青年を「境界人」と呼んだ。
④ エリクソンによる「心理・社会的モラトリアム」とは、アイデンティティを確立できず、自分がどのような人間なのかを見失った状態を指す。
①:ライフサイクル論を提唱したのは、ルソーではなくエリクソンです。
③:青年を「境界人」と呼んだのは、ユングではなくレヴィンです。
④:心理・社会的モラトリアムとは、現代社会が青年に対して経済的・社会的責任や義務を免除している期間のことを指します。
国連総会で採択された場合であっても、条約は関係各国の批准があってはじめて効力が生じるので誤りです。
まとめ
今回は、青年期の特徴と課題について解説しました。学習内容のおさらいです。
・青年期が出現したのは産業革命期になってから。それまでの子どもたちは何らかの通過儀礼を経て、大人の仲間入りをしていた。
・青年期の特徴は、以下の3つ。
- 第二次性徴
- 自我が目覚める
- 異性を含めた友人関係が深まる
・エリクソンが青年期の発達課題(獲得すべき心理的特質)として提示したのは、アイデンティティの確立である。
この記事を読んで青年期についての内容をインプットできたら、問題演習を通じてアウトプットすることも忘れないようにしましょう。
前回の記事「人間とは何か?各哲学者が考えた定義を徹底比較!【倫理第1回】」をご覧ください。
次回の記事「人間心理のメカニズム(防衛機制など)についてわかりやすく解説【倫理第3回】」をご覧ください。
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