国際経済体制(ブレトンウッズ体制など)についてわかりやすく解説【経済第18回】

今回は、国際経済体制を取り上げます。

 

ブレトンウッズ体制ができた背景や崩壊の原因、IMF・IBRD・GATTそれぞれの役割について詳しく解説しました。

 

最後には入試問題も用意しているので、ぜひ最後までお読みください。

 

S先生
S先生
ブレトンウッズ体制は、固定相場制・変動相場制がしっかり理解できていないと難しく感じる内容です。固定相場制・変動相場制を一度復習しておきたい方はこちらの記事「外国為替(円高・円安)についてわかりやすく解説(入試問題つき)【経済第17回】」をチェックしてみてください。

この記事からわかること

・ブレトンウッズ体制とは何か~確立した背景

・ブレトンウッズ体制が崩壊した要因

・IMF・IBRD・GATTそれぞれの役割

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ブレトンウッズ体制とは

(ブレトンウッズ:wikiより)

ブレトンウッズ体制が確立した背景

1930年代の世界恐慌をきっかけに主要国はブロック経済を形成します。

 

ブロック経済とは、共通の通貨を使う主要国とその植民地の間だけで行われる排他的な貿易体制です。

 

当時は輸入の制限を目的とした関税の引き上げが実施されたほか、他国との貿易を有利に進めるため、自国通貨を意図的に割安にする動きも見られました。こうした保護主義的な貿易政策が、第二次世界大戦の経済的な要因となったわけです。

 

そこで、アメリカを中心とした連合国は、第二次世界大戦末期の1944年にブレトンウッズ協定を結びます。

 

ブレトンウッズ協定を受けて設立されたのが、国際通貨基金(IMF)と国際復興開発銀行(IBRD)です。

 

国際通貨基金は、為替相場の安定を目的に創設された機関で、加盟国に為替制限の撤廃を促します。

 

国際復興開発銀行は、当初戦災国の復興を目的に設立されました。現在では、途上国の開発に対して長期間の融資を実施しています。

 

そして、ブレトンウッズ協定に基づく戦後の国際通貨体制こそがブレトンウッズ体制です。

 

ブレトンウッズ体制では、金との交換が保証されたドルを基軸通貨とする固定相場制が採用されます。簡単にいえば金と交換できる通貨をドルだけにしたということです。当初のレートは金1オンス(約31g)=35ドルでした。

 

田中くん
田中くん

じゃあ、円やポンドはどうやって金と交換するの?

 

 

ドル以外の通貨と金を交換する場合は、まずドル以外の通貨をドルと交換しなければなりません。そのうえでドルと金を交換するという流れですね。

 

(図:オリジナル)

そして、当時世界中の金の75%を保有していたアメリカが、ドルと金の交換を保証するというわけです。こうしてブレトンウッズ体制のもとで確立した固定相場制を金ドル本位制といいます。

ブレトンウッズ体制の崩壊

ブレトンウッズ体制は最初こそ順調に機能したものの、1960年代に入ると、ベトナム戦争への対外軍事援助や同盟国への資金援助などが原因で、アメリカから大量のドルが流出します。

 

さらに、西欧諸国や日本が復興したことを受け、アメリカの国際収支が悪化し、国のドル保有高が米国の金保有高を上回りました。

 

すると他国は次のように考えます。

 

「アメリカ、大丈夫なのか?アメリカがこのままの状態だったらドルを保有しておくより金と交換したほうがよいのでは?」

 

こうしてドルに対する信用がガタ落ちします。そして各国が次々にドルを金と交換した結果、アメリカの金保有量が減少しました。

 

このようにドルが基軸通貨としての信用を失われていくことをドル不安といいます。

 

そこで、IMFは対応に乗り出すべく、1969年に特別引出権(SDR)を創設しました。

 

特別引出権とは、国際収支が悪化した加盟国がIMFから配分されたSDRと引き換えに、他国から外貨を得られる権利です。

 

しかし、結局SDRはうまくいかず、1971年にアメリカのニクソン大統領がドルと金の交換停止を宣言(ニクソン・ショック)したことを受け、ブレトンウッズ体制は崩壊しました。

 

同年12月には先進国間でスミソニアン協定が締結され、ドルが切り下げられます。

 

しかし、それでもドル不安が続いたため、1973年には日本を含む主要国は変動相場制へと移行しました。

 

なお、正式に変動相場制への移行が承認されたのは1976年のキングストン合意なので、あわせておさえておきましょう。

 

また、1980年代には変動相場制のもとでドル高が進み、ドル高是正のために先進国の間でプラザ合意が締結されたことも覚えておいてください。

GATTとは

(GATT:wikiより)

ブロック経済の反省を踏まえて組織された機関は、IMFやIBRDだけではありません。1948年に発足したGATT(関税および貿易に関する一般協定)もその1つです。

 

GATTはこれまで、自由無差別多角の3原則に基づき、自由貿易を推進してきました。具体的には、多国間の貿易交渉(ラウンド)を通じて、関税率の引き下げや輸入数量制限の撤廃などを行ってきました。

 

とくに1986~94年のウルグアイ=ラウンドでは、特許権・著作権などの知的財産権やサービス貿易に関する新しいルールが設けられたことを覚えておきましょう。

 

また、1995年にはGATTの後を受け継ぐ常設機関としてWTO(世界貿易機関)が設立されました。WTOはGATTと異なり、ネガティブ・コンセンサス方式を採用するなど、紛争処理機能を強化しているのが特徴です。2020年時点で164の国と地域がWTOに加盟しています。

 

S先生
S先生
ちなみにネガティブ・コンセンサス方式とは、全加盟国の反対がなければ採択される議決方式のことです。

 

2001年にはカタールでドーハ・ラウンドが開始され、貿易自由化や環境に配慮した開発ルール策定に関する交渉が進められました。

 

しかし、加盟国の増大などもあって交渉が難航し、交渉全体の妥結には至らないまま、2011年に閉幕しています。

 

今回の範囲はここまでです。続いて入試問題を用意しているので、ぜひチェックしてみてください。

入試問題にチャレンジ

問 下線部ⓑ(国際通貨体制)に関して、第二次世界対戦後の国際通貨体制に関する記述として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① ブレトンウッズ協定の下で採用された固定為替相場制は、金・ドル本位制と呼ばれる。

② 第二次世界対戦後の固定為替相場制が崩壊した背景には、アメリカの金保有量の過剰があった。

③ 主要各国が変動為替相場制への移行を余儀なくされるなか、固定為替相場制への復帰を図ろうとした国際合意として、キングストン合意がある。

④ 国際協調としてのプラザ合意は、変動為替相場制への移行後の米ドル安是正をその目的の一つとしていた。

2019年 センター試験 本試験 現代社会 第1問 問2より)

答え:③
一つひとつの取引が「貿易・サービス収支」「第一次所得収支」「第二次所得収支」のどれに当てはまるのか、ていねいに分類していくことがポイントです。また、矢印の向きに注目することも重要ですよ。
まず1つ目の矢印「株式の配当」ですが、これはA国がB国に対して株式投資を行い、リターンとして配当を得たわけですから、第一次所得収支に該当します。
2つ目の矢印「医薬品のための無償資金援助」は、第二次所得収支です。
3つ目の矢印「特許使用料」は、貿易・サービス収支に当てはまりますね。
4つ目の矢印「外国人労働者による家族への送金」は、外国人労働者による母国への援助と考えると、第二次所得収支に該当します。
5つ目の矢印「国債の利子」は、先ほどの「株式の配当」と同様、第一次所得収支です。
最後の矢印「電気機器の輸入代金」は、貿易・サービス収支ですね。
これを踏まえて、「貿易・サービス収支」「第一次所得収支」「第二次所得収支」を算出します。
貿易・サービス収支は、特許使用料(25億ドル)と電気機器の輸入代金(35億ドル)です。特許使用料は矢印の向きから判断すると、B国からA国へお金が流入しているので、プラスになります。逆に電気機器の輸入代金はマイナスになるので、貿易・サービス収支は-10億ドル(=25-35)です。
第一次所得収支の、株式の配当(40億ドル)と国債の利子(10億ドル)はともにB国からA国へお金が流入しているわけですから、いずれもプラスになります。よって第一次所得収支は50億ドル(=40+10)です。
第二次所得収支の、医薬品のための無償資金援助(5億ドル)と外国人労働者による家族への送金(10億ドル)はいずれもB国へお金が流出しているため、マイナスになります。したがって第二次所得収支は-15億ドルです。(=-5-10)以上より、正解は③となります。
正解:①
②:固定為替相場制が崩壊した要因は、アメリカの金保有量の減少にあります。各国のドル保有高がアメリカの金保有量を上回ったことでドルに対する信用が失われたわけです。③:キングストン合意は、変動相場制への移行を承認した国際合意なので、間違いとなります。④:プラザ合意はドル高是正が目的なので、誤りです。
答え:①
②・③:経常収支には、旅行や輸送によって生じる収支や、雇用者報酬・消費財の無償援助が含まれます。
④:直接投資は、金融収支に含まれるので、間違いです。

まとめ

今回は、国際経済体制について解説しました。

 

とくにブレトンウッズ体制に関しては確立した背景や崩壊に至った原因までしっかりおさえておきましょう。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

前回の記事「外国為替(円高・円安)についてわかりやすく解説(入試問題つき)【経済第17回】」ですのでよければ読んでください。

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