インフレ・デフレについてわかりやすく解説(入試問題つき)【経済第14回】

今回は、インフレ・デフレについて取り上げます。

 

インフレ・デフレとは何かという基本的な部分から、インフレ・デフレが起こる原因や影響、物価を安定させるための政策まで幅広い内容を解説しました。

 

最後には入試問題も用意しているので、ぜひ最後までお読みください。

この記事からわかること

・インフレ・デフレの定義

・インフレ・デフレが起こる原因・影響について

・物価を安定させるための政策とは

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インフレとは

(深刻なインフレが起きたジンバブエの紙幣:wikiより)

インフレ(インフレーション)とは、物価が持続的に上昇することです。

 

インフレの種類は3つあります。緩やかな物価上昇が持続するクリーピング=インフレーション年に数%~数10%のペースで急速に上昇するギャロッピング=インフレーション短期間で物価が爆発的に上昇するハイパー=インフレーションです。

 

また、不況とインフレが同時に進行する現象は、スタグフレーションといいます。

 

インフレが起こる原因は、ディマンド・プル・インフレーションコスト・プッシュ・インフレーションの2つです。

 

ディマンド・プル・インフレーションは、通貨の過剰発行などにより、需要が供給を上回ることから生じるインフレのことを指します。コスト・プッシュ・インフレーションは、人件費や原材料、燃料などの生産費の上昇が原因となって起こるインフレです。

 

インフレによりモノの値段が上がれば、通貨の購買力が低下し、通貨価値が下落します。債務の負担が軽くなる一方、預貯金や給料を目減りさせ、年金受給者や生活保護世帯にも深刻な打撃を与えるのがデメリットです。

 

また、土地やビルなどの実物資産の価値は上昇するため、資産を持っている人とそうでない人との間で所得格差が拡大します。

デフレとは

(デフレ政策で深刻な経済危機に陥った1930年代のドイツ:wikiより)

デフレ(デフレーション)は、物価が持続的に下落することです。

 

通貨量や有効需要の減少により、需要が供給を下回ることから生じます。海外から安い原材料や商品が輸入されることも一因です。

 

デフレになると、商品が安く買える一方、企業の利潤が減って労働者の所得が減少するうえ、債務の実質的な負担は重くなるため、生活に苦しむ人が増え、不況が長引く要因にもなります。

 

S先生
S先生
ちなみに、デフレと景気悪化が悪循環に陥ることを、デフレスパイラルといいます。

物価安定政策

(日本銀行:wikiより)

物価安定のために必要な政策は、有効需要の大きさと市場の通貨量を適切な水準に保つことです。その実現には、財政政策によって政府支出を増減させることに加え、金融政策による的確な通貨管理も重要になります。

 

日本では、バブル崩壊後、デフレ傾向が続いていました。デフレ脱却を図るため、物価上昇率に一定の目標値を設定し、その目標を達成できるよう金融政策を進めています。

 

今回の範囲はここまでです。続いて入試問題を用意しているので、ぜひチェックしてみてください。

入試問題にチャレンジ

問1 傍線部ⓒ(物価上昇)に関連して、生徒Xは、物価の変動が国民生活に与える影響に関心をもち、その例として、インフレ(インフレーション)のケースについて調べ、次のメモにまとめた。メモ中の空欄【ア】~【エ】に当てはまる語句の組合せとして正しいものを、後の①~⑧のうちから一つ選べ。

 

メモ

物価の変動は私たちの消費に影響を与える。私たちが買い物をするときを考え、名目の消費支出額を一定とする。すべての財・サービスの価格が同じ比率で変化したとすると、物価上昇前と比較して、物価上昇後に消費できる数量は【ア】することになる。

物価の変動は、債権者や債務者に対しても影響を及ぼす。ある一定額のお金の貸借が行われている状況を想定する。金利が変化しなかったとして、貸借が行われた時点では想定されていなかったインフレが発生した場合について考える。このとき、インフレが発生しなかった場合と比較すると、債権者にとって経済的に【イ】に、債務者にとって経済的に【ウ】になる。

これは、支払われる金額が事前に確定しており、その後インフレが進行した場合、この債権・債務の価値が実質的に【エ】することになるからである。

 

① ア 増加 イ 有利 ウ 不利 エ 上昇

② ア 増加 イ 有利 ウ 不利 エ 下落

③ ア 増加 イ 不利 ウ 有利 エ 上昇

④ ア 増加 イ 不利 ウ 有利 エ 下落

⑤ ア 減少 イ 有利 ウ 不利 エ 上昇

⑥ ア 減少 イ 有利 ウ 不利 エ 下落

⑦ ア 減少 イ 不利 ウ 有利 エ 上昇

⑧ ア 減少 イ 不利 ウ 有利 エ 下落

2022年 共通テスト 本試験 政治・経済 第3問 問3より)

 

問2 下線部ⓒ(物価)の変動に関する記述として正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① スタグフレーションとは、不況とデフレーションとが同時に進行する現象のことである。

② デフレスパイラルとは、デフレーションと好況とが相互に作用して進行する現象のことである。

③ コスト・プッシュ・インフレーションは、生産費用の上昇が要因となって生じる。

④ ディマンド・プル・インフレーションは、供給が需要を上回ることにより生じる。

2017年 センター試験 本試験 政治・経済 第4問 問3より)


ア:支出額が一定で物価が上昇すれば買える量が減るので、消費できる数量は減少します。イ・ウ・エ:インフレになると、通貨の価値が減少するため、債務の実質的負担は軽くなります。つまり、債権・債務の価値は下落するわけです。よって債権者には不利に、債務者には有利になります。

 

答え③
①:スタグフレーションは、不況(スタグネーション)とインフレーションの同時進行現象のことです。②:デフレスパイラルは、不況と物価下落(デフレーション)が相互に作用して、スパイラル状の悪循環を起こすことです。④:ディマンド・プル・インフレーションは、需要が供給を上回ることにより生じるインフレです。問題文では、供給と需要が逆なので、間違いとなります。

まとめ

今回は、インフレ・デフレについて解説しました。

 

インフレ・デフレが発生する原因とその影響をしっかり理解しておきましょう。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

前回の記事「地球環境問題・エネルギー問題についてわかりやすく解説【経済第13回】」ですのでよければ読んでください。

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政治経済を理解するには「蔭山の共通テスト政治・経済」がおすすめです。政治経済の細かいところまで解説してくれるので、受験生はぜひとも一読をするとよいでしょう。

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