今回は、通貨制度と金融について解説します。
通貨の種類や役割・信用創造・金融政策(金利政策・支払準備率操作・公開市場操作)を中心に扱いました。
最後には入試問題も用意しているので、ぜひ最後までお読みください。
この記事からわかること
・通貨の種類・役割及び通貨制度の種類
・金融とは何か
・信用創造の仕組み
・金融政策の種類
・金融ビッグバンとは
通貨
(五百円玉:wikiより)
まずは、通貨から見ていきましょう。
通貨には、現金通貨と預金通貨の2種類があります。現金通貨は、日本銀行が発行する紙幣と政府が発行する硬貨のことです。預金通貨は、当座預金や普通預金などを指します。
通貨には、基本的な機能が3つあります。財やサービスの値打ちを図る価値尺度・商品流通の仲立ちをする交換手段・経済的な価値を保存する価値貯蔵です。
ほかにも、普通預金を利用して公共料金の支払いを行うなど、現金を動かさずに信用取引を決済させる支払手段という機能があるので、覚えておいてください。
また、通貨制度には、金本位制と管理通貨制度があります。
金本位制とは、金を通貨価値の基準とする制度です。1816年にイギリスで始まり、日本でも1897年に採用されました。中央銀行が金との交換を保証された兌換銀行券を発行し、金の価値によって通貨価値の安定を図ります。インフレのリスクが少ない反面、通貨発行量が中央銀行の金保有量によって制約されるのがデメリットです。
一方、管理通貨制度とは、中央銀行が金の保有量とは関係なく通貨発行量を管理できる制度です。1929年の世界恐慌がきっかけに、各国は管理通貨制度へと移行しました。金と交換されない不換銀行券を発行し、中央銀行が金保有量と関係なく通貨を発行できるというメリットがあります。景気調整に必要な通貨量を十分供給できる反面、インフレを引き起こしやすいのが難点です。
続いては、金融について解説します。
金融
(日本銀行:wikiより)
金融とは
金融とは、資金が余っているところから必要なところへ融通する活動のことです。
企業が資金を調達する方法は3つあります。減価償却積立金や社内留保といった内部資金を崩して使う自己金融・企業が社債や株式を発行して直接外部資金を調達する直接金融・銀行などからの借入によって資金を調達する間接金融です。
こうした資金の貸し借りを仲介しているのが、民間の銀行です。
市中銀行では、企業や家計から預金として資金を預かる預金業務・受け入れた預金を元にしてお金を貸し出す貸出業務が行われています。このほか、銀行を通じた送金や口座振替、手形・小切手を使った支払いなどによって資金の決済を行う為替業務も重要な仕事の1つです。
信用創造
信用創造とは、銀行が貸出を繰り返すことで、銀行全体として最初に受け入れた預金額の何倍もの預金通貨を作り出すことです。
(信用創造の例:オリジナル)
市中銀行は、はじめに受け入れた預金(本源的預金)の一部を支払準備金として保有し、残りを企業や家計に貸出します。この貸出を繰り返して、本源的預金の何倍もの預金通貨を生み出すのが信用創造というわけです。
では簡単なモデルケースとして、銀行Aに本源的預金が100万円あり、支払準備金が10%の場合を考えてみましょう。
銀行Aは本源的預金100万円の10%にあたる10万円を支払準備金として保有し、残りの90万円を貸出に回しました。
この90万円を受け取ったある企業が、今度は別の銀行Bに全額預金したと仮定します。すると銀行Bは、90万円のうち10%にあたる9万円を支払準備金として保有し、残りの81万円を貸出に回すことになりますよね。
続いてこの81万円が同じように銀行Cに預金されたとします。
こうして、貸出と預金を銀行A→銀行B→銀行C…と繰り返すと最終的には預金総額はどうなるでしょうか?
預金総額は、本源的預金÷支払準備率で求められるので、
つまり、1,000万円まで預金総額を増やせるとわかります。
では、本源的預金と比べてどのぐらい増えたかというと、預金総額-本源的預金より、
すなわち、900万円が新たに信用創造されたということになります。
金融政策
日本銀行(日銀)は、市中に通貨を供給したり、金融政策によって通貨量を調整したりして、景気の安定を図っている、日本の中央銀行です。
日銀は、唯一の発券銀行として紙幣(日本銀行券)を発行しているほか、政府の銀行として国庫金の出納などを行っています。また、銀行の銀行として市中銀行から預金の預かり・貸出を行うのも日銀の重要な役割です。
日銀は、物価の安定を図り、景気変動を調整するため、通貨量をコントロールする政策を実行します。これこそが金融政策です。
金融政策には、金利政策・支払準備率操作・公開市場操作の3つがあります。順番に見ていきましょう。
まず金利政策とは、日銀が市中銀行へお金を貸し出す際の金利を上下させて、通貨量をコントロールする方法です。
不況期には金利を下げます。すると市中銀行は日銀から資金を借りやすくなるので、貸出が増加しますよね。逆に好況期には金利を上げて、市中銀行が日銀から資金を借りにくくすることで、貸出を減少させています。
続いて支払準備率操作とは、日銀に預け入れる預金(支払準備金)の割合を上下させる方法です。
不況期には日銀が支払準備率を下げるので、市中銀行の貸出が増加するのに対し、好況期には日銀が支払準備率を上げるため、市中銀行の貸出が減少します。
最後に公開市場操作とは、日銀が金融市場で国債や手形などを売買することで、通貨量をコントロールする方法です。
不況期には買いオペレーション(買いオペ)を行います。買いオペレーションとは、日銀が市中銀行から国債や手形を買うことです。日銀が市中銀行から国債や手形を買えば、日銀が代金を支払ったぶんだけ市中銀行の貸出を増やせます。
では好況期はどうするでしょうか?
逆のことをするわけですね。買いオペの反対、売りオペレーション(売りオペ)をします。売りオペとは、日銀が市中銀行に国債や手形を売ることです。日銀が市中銀行に国債や手形を売れば、日銀が代金を受け取るぶんだけ市中銀行の貸出を減らせます。
まとめ
日銀は、不況期には景気を回復させるため、金融緩和政策を行い、通貨量を増大させます。そのために日銀が市中銀行へお金を貸し出す際の金利・支払準備率を引き下げ、買いオペを実施して市中銀行の貸出を増加させるわけです。
逆に好況期には、景気の過熱やインフレを防止するため、金融引き締め政策を行い、通貨量を抑制します。そのために市中銀行へお金を貸し出す際の金利・支払準備率を引き上げ、売りオペを実施して市中銀行の貸出を減少させるわけですね。
日銀の金融政策を表にまとめましたので、日々の学習にご活用ください。
不況期 | 好況期 | |
金利政策 | 市中銀行に対する貸出金利を下げる | 市中銀行に対する貸出金利を上げる |
支払準備率操作 | 支払準備率下げる | 支払準備率上げる |
公開市場操作 | 買いオペレーション | 売りオペレーション |
金融ビッグバン
かつての日本の金融機関は、旧大蔵省によって保護される反面、自由競争が制限されていましたが、1980年代以降、金融の自由化が進みました。
なかでも、1990年代後半の金融改革のことを金融ビッグバンといいます。当時の橋本龍太郎内閣が「フリー・フェア・グローバル」をスローガンに掲げ、改革が進められました。
まずは、外国為替業務の自由化です。これにともない、個人・デパートなど、誰でも自由に外貨の両替ができるようになりました。
1997年に独占禁止法が改正されます。これにより、他企業の株式を所有することを主要業務とする持株会社が解禁されたほか、銀行・保険・証券の相互参入が認められるようになりました。
翌1998年には大蔵省から金融管理部門が分離され、金融監督庁が設置されます。2000年には金融庁に改組されました。
今回の範囲はここまでです。続いて入試問題を用意しているので、ぜひチェックしてみてください。
入試問題にチャレンジ
問 下線部ⓓに関連して、次の表のように、銀行Aが2,000万円の預金(本源的預金)を受け入れ、支払準備率を20パーセントとして企業に貸し出すとする。この貸出金は、企業の取引の支払いに充てられ、支払いを受け取った別の企業によって銀行Bに全額、預金されるとする。銀行Bはこの預金をもとに企業への貸出しを行い、同様の過程を経て、銀行Cに預金がなされる。銀行の支払準備率をすべて20パーセントで一定とすると、この過程が次々と繰り返された場合、信用創造で作り出された銀行全体の預金の増加額として正しいものを、下の①~④のうちから一つ選べ。
①4,000万円②4,880万円③8,000万円④9,600万円
まとめ
今回は、通貨制度と金融について解説しました。
とくに信用創造がどんな仕組みなのか、好況期・不況期にそれぞれどのような金融政策が行われているのかをしっかり理解しておきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「国民所得・景気循環についてわかりやすく解説(入試問題演習も)【経済第3回】」ですのでよければ読んでください。
次回の記事「財政についてわかりやすく解説(入試問題つき)【経済第5回】」をご覧ください。
政治経済を理解するには「蔭山の共通テスト政治・経済」がおすすめです。政治経済の細かいところまで解説してくれるので、受験生はぜひとも一読をするとよいでしょう。
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