自然界の物質は、循環しています。ここでは物質の循環について、詳しくお話しします。
物質の中でも、炭素と窒素の循環について解説します。この記事の最後には、入試問題がついてきます。
炭素の循環
[数研出版 生物基礎]
生き物は、必ず炭素からできています。
私たちの体を作る炭素は、もとを辿れば、空気中の二酸化炭素です。二酸化炭素が植物の光合成によって植物の体に取り込まれます。
動物たちは、植物を食べたり、他の動物を食べたりすることで体に炭素を取り入れます。
一連の流れは、
- 植物が光合成によって空気中の二酸化炭素を、体に取り入れる。
- 動物は、植物や動物をたべることで体に炭素を取り入れる。
- 呼吸によって、大気中に二酸化炭素が戻る。
また、植物の枯死体や動物の死骸は微生物によって分解されて、二酸化炭素になります。そして、大気中に二酸化炭素が戻ります。
化石燃料の燃焼
化石燃料の石炭や石油は、過去の生物が元でできているので燃やすと二酸化炭素が出ます。二酸化炭素濃度が上がってしまうと、地球温暖化が引き起こされてしまいます。
窒素の循環
[数研出版 生物基礎]
窒素の生物の体に含まれている元素です。窒素も炭素と同じく生態系内を循環しています。
炭素の循環の流れは、
- 植物が土壌中の硝酸イオンやアンモニウムイオンを、根から吸収。
- 植物が根から吸収した硝酸イオンやアンモニウムイオンを元に、有機窒素化合物(窒素が入っている物質)を合成。
- 動物は、この植物が作った有機窒素化合物を植物や動物を食べることで取り込む。
- 植物の枯死体や、動物の死骸は分解者によって分解される。
- 分解された死骸などが、硝化菌などによって硝酸イオンなどに変えられる。
- 再び植物によって硝酸イオンなどが利用される。
窒素同化
体外から取り入れた硝酸イオンやアンモニウムイオンを元に、有機窒素化合物を作ることを窒素同化といいます。
窒素固定
大気中の窒素は、窒素同士の結合が強いためそのまま使うことはできません。大気中の窒素から、植物が使うことができるアンモニアイオンなどを作ることを窒素固定といいます。
窒素固定をする生物は、
- アゾトバクター
- クロストリジウム
- 根粒菌
などがあります。
[数研出版 生物基礎]
脱窒
土壌中の硝酸イオンや亜硝酸イオンは植物に利用されます。しかし、ごく一部の硝酸イオンと亜硝酸イオンは脱窒素細菌によって窒素に変えられて、大気に戻ります。
このことを脱窒といいます。
炭素の循環と窒素の循環の違い
炭素の循環と窒素の循環は何が違うのでしょうか。
炭素の循環は、呼吸による二酸化炭素のやりとりが生物と大気の間で直接行われます。対して窒素の循環は、大部分は生物同士でのやりとりです。
炭素の循環の方が開放的で、窒素の循環は閉鎖的です。
入試問題にチャレンジ
生物の物質収支に関する次の問いに答えよ。
ある熱帯魚の飼育水槽では、市販の配合飼料を与え、時々水を交換するとともに、水槽にたまった排出物や飼料の残りなどの汚れを取り除いている。
[センター試験対策問題集 センター追試2004]
問1 配合飼料を食べた熱帯魚の体の働きとして正しいものを、次の①~④から1つ選べ。
- 有機物を合成して得たエネルギーを、運動などに利用する。
- 酸素によって無機物を酸化し、できた二酸化炭素を放出する。
- 飼料の有機物を材料にして、体を構成する有機物をつくる。
- 二酸化炭素と水から、有機物をつくる。
①は、有機物を「合成」でななく、「分解」してエネルギーを取り出します。
問2 配合飼料の原材料は穀物と海産の魚肉であった。
この配合飼料に含まれる物質の由来を整理して図1にまとめてみた。図中の2、3に入る語として適切なものを次の①~⑦からそれぞれ1つずつ選べ。
- ① 酸素
- ② 窒素
- ③ 二酸化炭素
- ④ オゾン
- ⑤ 窒素酸化物
- ⑥ 硫黄酸化物
- ⑦ メタン
2の矢印に、工業的窒素固定とあるので、2に入るのは窒素です。
まとめ
・ 炭素・窒素は自然界を循環している。
・ 窒素同化とは、体外から取り入れた硝酸イオンやアンモニウムイオンを元に、有機窒素化合物を作ること。
・ 窒素固定とは植物が使うことができるアンモニアイオンなどを作ること。
・ 脱窒とは、一部の硝酸イオンと亜硝酸イオンを、脱窒素細菌が窒素に変えて、大気に戻すこと。
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