ある場所に生息する植物全体のことを植生といいます。植生の多様性を勉強する上での土台になる知識が植生の区分です。
この記事では、植生の区分について解説します。森林の階層構造についても解説します。
記事の最後には、入試問題がついています。是非、最後まで読んで入試問題を解いて理解度を確かめてみてください。
植生
地球上の陸地の大部分には、植物が生えています。このようなある場所の地表を覆う植物の集まりを、植生といいます。
植生は地域ごとに違います。
植生の違いは、年降水量と年平均気温に大きく影響されます。
植生の分類
〔数研出版 チャート式 生物・生物基礎〕
植生の全体を眺めた時の見た目を、相観といいます。相観を特徴づけているのは、背が高く植生を広く覆っている植物です。
このような上から見て、地面を覆っている割合が大きい植物をを優占種といいます。植生は相観によって、森林・草原・荒原の三つに大別できます。
実際の自然の様子を想像しながら考えてみましょう。
森林
年間降水量が多い地域には、樹林が密に生えた森林ができます。
地球のおよそ30%を占めます。
森林は、熱帯樹林・照葉樹林・夏緑樹林・針葉樹林などに分類されます。
高さごとにそれぞれ葉を茂らせる植物の種類は異なり、階層構造になっています。
草原
草原は、草本植物が中心に生えている植生です。
降水量が少なく、樹木が生育できないような地域に広がります。
草原は、世界的にはサバンナ・ステップがよく知られています。
草原の階層構造は、森林に比べて単純です。
背の高い草の層の下に、背の低い草の層や地表層が見られるだけです。
荒原
荒原は、高山や極地、溶岩流の跡地などによく見られる植生です。荒原には、植物がまばらにしか生えません。
植物があまり生育していないため、土壌は発達していません。
荒原には、砂漠とツンドラがあります。
熱帯夜温帯の降水量が極めて少なく、乾燥の激しい地域は砂漠になります。
また、極端に気温の低い高緯度の地域にはツンドラが見られます。
森林の階層構造
〔数研出版 生物基礎 〕
森林の内部は、階層構造になっています。森林の最上部を覆うのところは、林冠といいます。
地面に近いところは、林床といいます。
日本の発達した森林の地上部分では、高い方から
の順で四層の階層構造が見られます。
これらに、コケ植物や菌類の生息する地表層と土壌が発達する地中層を加えると、6層になります。
陽生植物と陰性植物
林冠から林床に下がるにしたがって、到達する光の量が少なくなっていきます。
光の量に適応した植物が、それぞれの層に生育しています。
日なたの光の強いところで生育する植物を、陽生植物といいます。
比較的に光の弱いところで生育する植物を、陰生植物といいます。
また、明るいところで育つ樹木を陽樹、暗いところで育つ樹木を陰樹といいます。
林床は、光が届きにくいので、林床付近に生育するような低木や草本には陰生植物が多いです。
陽生植物は、呼吸量が大きく、光補償点(植物が生きていくのに最低限必要な光の量)が高くなります。
陰生植物は、呼吸量が小さく、光補償点(植物が生きていくのに最低限必要な光の量)が低くなります。
入試問題にチャレンジ
【問題】
図2は関東地方の里山の林の模式図である。高木層はコナラ、林床の一部にはアズマネザサが密生して繁茂し、その他の場所では、シラカシの幼木が成長している。
問1 図2のコナラとシラカシの光合成は、どの植物のタイプか、次の①・②からそれぞれ選べ。
① 陰生植物 ② 陽生植物
林床の方が光が届きにくく、陰生植物が主に育ちます。高木層にあるコナラは、明るいところで育つ陽生植物です。
問2 図2の林床にコナラの幼木が見られないのはなぜか。その理由として当てはまるものを、次の①~④から選べ。
① コナラは陰樹なので、呼吸量が多く光補償点が低いため、幼木は光補償点よりも光が弱い林床では育たないから。
② コナラは陽樹なので、呼吸量が多く光補償点が高いため、幼木は光補償点よりも光が弱い林床では育たないから。
③ コナラは陰樹なので、呼吸量が少なく光補償点が低いため、幼木は光補償点よりも光が弱い林床では育たないから。
④ コナラは陽樹なので、呼吸量が少なく光補償点が高いため、幼木は光補償点よりも光が弱い林床では育たないから。
(センター試験対策問題集 東邦大2005 改)
まとめ
・ 植生とは、ある場所の地表を覆う植物の集まりのこと。
・ 植生には、森林・草原・荒原がある。
・ 日なたの光の強いところで生育する植物を、陽生植物といいます。
・ 比較的に光の弱いところで生育する植物を、陰生植物といいます。
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