国際社会の成立過程と国際法の種類についてわかりやすく解説【政治第27回】

今回のテーマは、国際社会と国際法です。この記事では以下の内容が学べます。

 

この記事からわかること

・国際社会の成立過程

・国際法の種類

・国際裁判所の種類

 

初学者にも理解できるよう、わかりやすく解説しました。

 

また記事の後半には、今回のテーマに関連した入試問題を用意しています。この記事を読めば、国際社会と国際法の内容をマスターできるので、最後まで読んでみてください。

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国際社会の成立過程

国際社会の成立過程(ウェストファリア条約:wikiより)

現在地球上には190を超える国々が存在し、各国は平等な立場に立つ主権国家として国際社会を形成しています。

 

主権国家が成立したのは、1648年のウェストファリア条約締結以降です。

 

ウェストファリア条約とは、三十年戦争を終了させるための講和条約のことを指します。ドイツのウェストファリアにておこなわれた会議で成立しました。

 

ウェストファリア条約により、それまで絶大だったローマ教皇の権威が弱まり、国家に権力が集中するようになります。

 

とはいえ、成立当初の主権国家は絶対王政にすぎませんでした。しかし市民革命の時代を経て、国民主権に基づく国民国家が次々と誕生しました。

 

国際社会と国内社会って、何が違うの?
たなかくん
たなかくん

 

国際社会と国内社会の違いは、下記の表にまとめているのでご覧ください。

 

国際社会国内社会
条約・国際慣習法法の種類憲法・法律・条例など
なし(国家間での合意・国連での条約の制定はある)立法機関議会
国際司法裁判所・国際刑事裁判所など→強制力は弱い司法機関裁判所→強制的に管轄する
なし(国際機関が一部補完)行政機関政府

(国際社会と国内社会の違い:オリジナル)

国際社会の秩序を保つための方法

国際社会の秩序を保つための方法(グロティウス:wikiより)

国際法

17世紀になると、国際社会に法を整備することで国家間のトラブルを解決しようとする考え方が生まれました。

 

最初に国際法の必要性を主張したのは、国際法の父と呼ばれているオランダのグロティウスです。

 

彼は三十年戦争の悲惨な状況を目の当たりにし、戦時中においても国家は一定のルールに従って行動しなければならないと主張しました。

 

国際法は、国家どうしのトラブルを解決するために必要な法律なんだね。確かに国際法がなかったら、国家間の紛争が過激化する可能性もあるからね。
たなかくん
たなかくん

 

国際法には、条約国際慣習法の2種類があります。

 

条約とは文書による国家間の合意です。条約・協定・規約など名称を問いません。

 

国際慣習法とは、国際社会で繰り返された慣行が多数の国家によって一般的に認められ、国際的なルールとなったものです。主な例としては、公海自由の原則や外交特権があげられます。

国際裁判

国際紛争を解決するための手段は、国際法だけではありません。国際裁判も紛争を解決するうえで重要な手段の1つです。

 

現在オランダのハーグに、国際司法裁判所常設仲裁裁判所が設置されています。

 

国際司法裁判所は、1945年に設立された常設の司法裁判所です。裁判には両当事国の合意が必要であるため、裁判に付されない紛争が多いなどの問題点を抱えています。

 

S先生
S先生
ちなみに日本は、南極海での調査捕鯨問題でオーストラリアから訴えられ、国際司法裁判所の当事国となったことがあります。判決結果はオーストラリアの勝訴でした。

 

常設仲裁裁判所は、1901年に設立されました。「常設」とありますが、実際は常設の裁判機関ではありません。国際紛争の当事国の合意によって法廷が設置されます。

 

国際司法裁判所と常設仲裁裁判所以外にも、国際裁判所は多数あります。主な例は、国際刑事裁判所国際海洋法裁判所です。

 

国際刑事裁判所は、集団殺害罪・戦争犯罪・人道に対する犯罪といった重大な国際犯罪をおこなった個人を裁く初の常設裁判所です。2003年にオランダのハーグで設立されました。日本は2007年に加盟しています。

 

国際海洋法裁判所は、国連海洋法条約の解釈や適用に関する国家間紛争の解決を目的として設置された裁判所です。1996年にドイツのハンブルクで設立されました。

入試問題にチャレンジ

問1 下線部ⓓ(国際裁判)に関する記述として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 日本は、人道に対する犯罪等を行った個人を裁く国際刑事裁判所に未加盟である。

② 日本は、国際司法裁判所において行われる国際裁判の当事国になったことがある。

③ 様々な国際紛争の解決のため19世紀末に採択された条約に基づいて設立された常設仲裁裁判所は、現在では廃止されている。

④ 様々な国際紛争のうち、特に海に関する紛争の解決を役割とする国際裁判所の設立は、見送られてきている。

2016年 センター試験 本試験 現代社会 第6問 問4より)

 

問2 下線部ⓐ(国際法)に関する記述として適当でないものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① 慣習国際法(国際慣習法)とは、国家間の慣行が法として認められた不文法である。

② 国家間の合意を明文化した文書には、条約や協定、憲章、規約、議定書など様々な名称のものが存在する。

③ 国際司法裁判所は、紛争当事国が裁判を行うことに同意しない限り、裁判を行うことができない。

④ 条約が国連総会で採択された場合には、それと同時に条約としての効力が発生するので、各国の批准は必要ない。

2013年 センター試験 本試験 現代社会 第6問 問1より)

問1:②
①:日本は2007年に国際刑事裁判所に加盟しています。
③:常設仲裁裁判所は現在でも存続しているので、誤りです。
④:海に関する紛争の解決を役割とする国際裁判所としては、1996年に国際海洋法裁判所が設置されています。
問2:④
国連総会で採択された場合であっても、条約は関係各国の批准があってはじめて効力が生じるので誤りです。

まとめ

今回は、国際社会と国際法について学習しました。学習内容のおさらいです。

 

  • 1648年にウェストファリア条約が締結されたことを機に、主権国家が成立した。
  • 国際法には、国家間の合意を明文化した条約と、国家間の慣行が法として認められた国際慣習法の2種類がある。
  • 主な国際裁判所の例としては、国際司法裁判所・国際刑事裁判所・常設仲裁裁判所などがある。

 

とくに条約と国際慣習法の違いや、国際裁判所の種類についてはこの記事を繰り返し読んでしっかりマスターしておきましょう。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

前回の記事「選挙制度とは?日本の選挙制度の仕組みや問題点についてわかりやすく解説【政治第26回】」をご覧ください。

選挙制度とは?日本の選挙制度の仕組みや問題点についてわかりやすく解説【政治第26回】
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次回の記事「国際連盟の成立と崩壊についてわかりやすく解説(入試問題付き)【政治第28回】」をご覧ください。

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政治経済を理解するには「蔭山の共通テスト政治・経済」がおすすめです。政治経済の細かいところまで解説してくれるので、受験生はぜひとも一読をするとよいでしょう。

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