みなさん、こんにちは。今回のテーマは、憲法第14条で定められている法の下の平等です。
尊属殺人重罰規定違憲判決や国籍法違憲訴訟など、法の下の平等に関連した判例についてもわかりやすく解説しています。
また記事後半では入試問題も用意しているので、ぜひ最後までお読みください。
この記事からわかること
・法の下の平等とは何か
・法の下の平等を実現するために憲法で定められているルール
・法の下の平等に関する判例・法律
法の下の平等とは
(天秤:wikiより)
法の下の平等とは、制定する法の内容・国民に対する法の適用が平等でなければならないとする原則です。
憲法第14条1項では、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と定められています。
たとえ由緒ある家柄の人だからといって罪を免れることはあってはならないですし、合理的な理由がないのに人を差別する内容の法律を作ることも許されないということです。
法の下の平等を実現するために憲法で定められたルールには、①貴族制度の廃止②家族生活における両性の平等③選挙権の平等④教育の機会均等があります。
それぞれ憲法の条文を見ていきましょう。
まず①貴族制度の廃止については、第14条2項で「華族その他の貴族の制度は、これを認めない」と規定されています。
戦前の日本には華族制度が存在しており、華族には特権として身分の世襲や学習院への無条件入学が認められていました。また生活に困っている場合は政府から給付金が与えられるなど、幅広い面で優遇されていたわけです。
しかし華族制度は明らかに法の下の平等に反しているため、廃止されることになりました。
②家族生活における両性の平等については、第24条に定められています。
現在では男女平等がスタンダードな考え方になりつつありますが、かつては女性に対する偏見・差別的慣習がありました。
こうした女性差別を解消するため、憲法第24条1項には「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として…」と明記して、男女平等を謳っています。
③選挙権については、憲法第15条3項で「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。」と規定されています。
普通選挙とは、身分・性別・教育・信仰・財産・納税などで差をつけることなく、一般の成年者に選挙権を認める選挙です。
④教育の機会均等については、第26条で以下のように規定されています。
つまり国民には、身分・学力・財産に関係なく教育を受ける権利が保障されているということです。そして教育の機会均等を実現するための法律として、教育基本法や学校教育法が存在しています。
法の下の平等に関連した判例
(最高裁判所:wikiより)
法の下の平等に関する判例として代表的なのが、①尊属殺人重罰規定違憲判決②国籍法違憲訴訟③非嫡出子(婚外子)相続差別訴訟④衆議院議員定数不均衡訴訟の4つです。
尊属殺人重罰規定違憲判決
尊属殺人重罰規定違憲判決では、旧刑法第200条で定められていた尊属殺人罪の法定刑が刑法第199条の普通殺人罪よりも重い点が憲法に違反するかどうかが争われました。
1973年に最高裁は「刑法第200条の尊属殺の刑罰を死刑または無期懲役刑のみに限っているのは、普通殺に関する刑法第199条の刑罰に比べて著しく不合理な差別的取り扱いであり、憲法第14条第1項に違反して無効である」として、違憲判決を下しました。
国籍法違憲訴訟
国籍法違憲訴訟は、日本人の父と外国人の母から生まれた子どもの国籍取得について争われた事例です。かつて国籍法第3条1項は父母の婚姻により嫡出子となった場合は、日本国籍の取得を認めていました。
一方で父母が結婚していない婚外子の場合、日本国民である父から出生前に認知されていれば日本国籍を取得できますが、出生後に認知された場合は取得できませんでした。
しかし2008年に最高裁は、国籍法第3条1項が憲法第14条に定められている法の下の平等に反するとして違憲判決を下します。
よって国籍法第3条1項は改正され、父母が婚姻していなくても国籍取得が可能になりました。
非嫡出子(婚外子)相続差別訴訟
非嫡出子(婚外子)相続差別訴訟は、民法第900条4号ただし書きの規定が最大の争点でした。
当時民法第900条4号ただし書きでは、「非嫡出子の相続分は嫡出子の1/2とする」と規定されていました。
しかし2013年の最高裁判決では、「父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず…」とされ、民法第900条4号ただし書きは、憲法第14条1項に違反するとの判断が下されます。
現在では民法第900条4号ただし書きは一部削除されました。
衆議院議員定数不均衡訴訟
衆議院議員定数不均衡訴訟は、都市部と過疎地域の間で生じる一票の格差をめぐって争われた事例です。
最高裁は1976年に4.99:1、1985年に4.4:1の格差が、投票価値の平等に反する違憲状態であると認めました。
しかし選挙自体を無効にすると、国政に重大な支障をきたすおそれがあることから、選挙無効の訴えは退けられています。
法の下の平等に関する法律
(アイヌ:wikiより)
日本では差別解消に向けた法律の制定が進められています。
女性の地位については、1985年に男女雇用機会均等法、1999年には男女共同参画社会基本法が制定されました。ちなみに1985年は日本が女性差別撤廃条約に批准した年でもありますね。
部落差別に対しては1969年に同和対策事業特別措置法、アイヌの人々については1997年にアイヌ文化振興法が成立しました。
また障がい者の雇用を促進するため、障害者雇用促進法では事業主に法定雇用率の達成を義務づけています。法定雇用率は民間企業で2.3%、国・地方公共団体で2.6%です。(2021年3月以降の数字)
平等には形式的平等と実質的平等の2種類があります。
形式的平等とは、差別を一律に禁止して、どの人にも同等の機会を与えればよいとする考え方です。
一方実質的平等は各人が置かれている現実の状況を踏まえ、合理的な区別により結果の平等まで配慮すべきとする考え方のことを指します。
障害者雇用促進法の法定雇用率は、実質的平等を目指す措置です。
今回の範囲はここまでとなります。続いて入試問題を用意しているので、ぜひチェックしてみてください。
入試問題にチャレンジ
問 下線部ⓗ(法の下の平等)に関連して、日本で最高裁判所により違憲とされた法制度についての記述として誤っているものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 衆議院議員一人当たりの有権者数の格差が最大で約5倍となる議員定数の配分を定める。
② 参議院議員の被選挙権年齢を衆議院議員の被選挙権年齢より高く定める。
③ 婚外子の相続分を、嫡出子の相続分の2分の1とする。
④ 外国籍の母から出生した婚外子に、出生後に日本国民である父から認知されても父母の婚姻がなければ日本国籍を認めないこととする。
まとめ
今回は、法の下の平等について解説しました。
法の下の平等に関する判例については、何が争点だったのかを記事を読んでしっかりマスターしておきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「基本的人権と公共の福祉の関係についてわかりやすく解説(入試問題も用意)【政治第8回】」をご覧ください。
次回の記事「精神の自由についてわかりやすく解説(入試問題も用意)【政治第10回】」をご覧ください。
政治経済を理解するには「蔭山の共通テスト政治・経済」がおすすめです。政治経済の細かいところまで解説してくれるので、受験生はぜひとも一読をするとよいでしょう。
コメント