生物基礎のテスト勉強をしているときにこんな疑問はないですか?
- グリフィスの実験がよくわからない。
- アベリーの実験について詳しく教えて欲しい。
- ハーシーとチェイスの実験は結局どういうことなの?
- 遺伝子の本体にせまる歴史的実験が全体的によくわからない。
- どんな感じで入試問題で出るのか教えてほしい。
こんなお悩みを解決できるようにわかりやすく解説します。
- 本記事の内容グリフィスの実験
- アベリ―の実験
- ハーシーとチェイスの実験
- 遺伝子の本体を見つけた実験に関する入試問題
ぜひ、参考にして下さい。
グリフィスの実験
1928年に、グリフィスは肺炎球菌の形質を人為的に変えられることに気づきました。
肺炎双球菌とは?
肺炎双球菌は肺炎を引き起こす細菌のことで、、名前のとおり2個の球場の細菌(双球)から構成されています。
肺炎双球菌には、S型菌とR型菌の2種類があります。
S型菌には2個の細胞を包むようなカプセル(被膜)があり、肺炎を引き起こす性質があります。
一方R型菌ではこのカプセルがなく、病原性がありません。
抑えておきたいこととしては、カプセルを持つS型の菌はS型菌の分裂によってでき、カプセルのないR型菌はR型菌の分裂によってできるということです。
グリフィスの研究結果
グリフィスの研究では、以下の結果になりました。
- S型菌を注射→ネズミは死ぬ
- R型菌を注射→ネズミは生きたまま
- 加熱殺菌したS型菌を注射→ネズミは生きたまま
- 加熱殺菌したS型菌とR型菌を混ぜて注射→ネズミは死んで、生きたS型球菌が発見された
ここで、注目してほしいのは4番です!
死んだS型菌、R型菌を注射しても病原性はないはずなのに、ネズミは死んで、生きたS型菌が見つかるのはおかしいですよね。
これは、死んだS型菌が生き返ったのではありません。(3番の実験より)
S型菌の遺伝子が、R型菌に移動して、R型菌の形質がS型菌の形質に変化したということが考えられました。
このように、ある細胞に、別の種の系統の遺伝子が入ることによって、その細胞の形質が変わることがあります。
このような形質の変化は、細菌の遺伝的性質の変化であると考え、この現象を形質転換と名付けられました。
アベリ―の実験
グリフィスの実験のあと、ネズミに注射をしなくても、生きたR型菌と死んだS型菌を混ぜて培養するだけで、生きたS型菌ができることがわかりました。
しかし、このときには、遺伝子の正体が何かはまだわかりませんでした。
そこで、アベリ―らはS型菌の抽出液をR型菌の培地に混ぜる実験を行いました。
すると、以下のような結果になりました。
- S型菌の抽出液を無処理でR型菌に混ぜた→R型菌とS型菌が生じた
- S型菌の抽出液にタンパク質分解酵素とR型菌を混ぜた→R型菌とS型菌が生じた
- S型菌の抽出液にDNA分解酵素とR型菌を混ぜた→R型菌のみしか生じなかった
注目すべきは3番です!
DNAを分解したときだけS型菌が生じなかったことから、遺伝子の正体はDNAであることこが示されました。
ただ、まだこのときは遺伝子の本体はタンパク質であると思われてたことから、アベリ―の実験結果はそれほど高い評価を得ることができませんでした。
ハーシーとチェイスの実験
そのあと、ハーシーとチェイスによって、さらに「遺伝子の本体はDNAである」ということを証明する実験を行いました。
具体的には、T2ファージと呼ばれるウイルスを用いて行われました。
ウイルスの一種であるT2ファージとは
バクテリオファージは細菌に寄生するウイルスのことで、T2ファージは大腸菌に寄生します。
ウイルスを簡単にまとめると、「自身の細胞を持たず、他の生物の細胞内で増殖する構造体」のことです。
ウイルスは細胞膜で囲まれた細胞を持っていないことから、真核生物や原核生物には含まれません。
生命活動に必要なエネルギーを取り出したり、自分の体内環境を一定に保つ仕組みを持っておらず、生きている細胞内に寄生して、増殖・子孫を残していきます。
ウイルスの一種であるT2ファージには以下のような特徴があります。
- 頭部にはタンパク質をDNAがほとんど50%ずつ含まれている
- 大腸菌の表面に付着すると、T2ファージの物質が大腸菌に注入される
- 20分ぐらい経過すると大腸菌の細胞壁が溶けて、中から多数の子ファージが出る
このウイルスを使ってハーシーとチェイスは以下のような実験を行いました。
ハーシーとチェイスの実験結果
ハーシーとチェイスの実験とその結果は以下のようになりました。
- T2ファージのタンパク質とDNAのそれぞれに標識(目印)を付けて、大腸菌に感染させた
- 感染させた2,3分後にかき混ぜた→T2ファージの殻が大腸菌の表面から剥がれ落ちた
- 遠心して大腸菌を沈殿させると、上の液にはT2ファージのタンパク質が、T2ファージのDNAはの目印は大腸菌の沈殿中に検出された
この結果から、T2ファージは大腸菌に感染したときに大腸菌内に注入され、子ファージを作るの能力がある物質はDNAであることがわかりました。
つまり、遺伝子の本体はDNAであることが証明されました。
T2ファージが増殖する仕組み
ハーシーとチェイスの実験のあと、T2ファージに関する様々な研究が行われました。
そして、T2ファージの増殖のしくみは以下の図のようになります。
遺伝子の本体に関する歴史的実験の入試問題
それでは、今回解説した「遺伝子の本体に関する歴史的入試問題」が実際にどのように出題されているのか紹介していきます。
今回紹介する問題は、2020年センター試験生物基礎の第一問の問4の問題です。
遺伝子の本体を見つけた実験に関する入試問題
問:「オ」~「ク」に入る語句を考えてみましょう。
解答・解説
それでは、問題の解答・解説をしていきます。
どうでしょうか、選ぶことができたでしょうか。
まず、「オ」と「カ」に関してはグリフィスの実験の内容。
殺菌したはずのS型菌がR型菌と混ぜて注射すると、生きたS型菌が見つかり、形質が変わったことから、このことを形質転換と呼ばれるようになりました。
また、「キ」と「ク」はエイブリー(アベリ―)らの実験ですね。
タンパク質を分解してもS型菌は出現した(形質転換が起こった)が、DNAを分解するとS型菌は出現しませんでした(形質転換は起こらなかった)。
このことから、「遺伝子の本体はDNAであることがわかった」ということでしたね。
まとめ
というわけで以上です。今回は、「遺伝子の正体に迫る歴史的実験」について紹介しました。
誰がどんな実験をしたかなど覚えづらいところもあるかもしれません。
しかし、歴史的なところはストーリーと一緒に覚えると覚えやすくなります。
もし忘れたら、またこの講義に戻ってきて、ぜひ今後の勉強に役立てて下さい。
今回も最後までありがとうございました。
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