道家の思想(老子・荘子)をわかりやすく簡単に解説【倫理第18回】

今回のテーマは、道家の思想です。

この記事では以下の内容が学べます。

 

この記事からわかること

・道家とは【老子と荘子が大成した思想】

・老子の思想【無為自然・柔弱謙下・小国寡民】

・荘子の思想【万物斉同】

 

道家の思想をはじめて学ぶ人にもキッチリ理解してもらえるよう、わかりやすく解説しました。

 

また記事の後半には、今回のテーマに関連した入試問題も用意しています。

この記事を読むだけで基本の理解・復習ができるので、最後まで読んでみてください。

 

S先生
S先生
今回の内容は世界史でも取り扱っています。

 

世界史を学習している方はこちらの記事「夏、殷、周、秦王朝までを一気に解説!春秋の諸子百家なども細かく解説!歴代王朝の覚え方も!(世界史B)」もチェックしてみてください。

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道家とは【老子と荘子が大成した思想】

道家とは【老子と荘子が大成した思想】(老子:wikiより)

道家は、老子荘子が大成した思想です。

老荘思想ともいわれます。

 

ではここから老子・荘子それぞれの思想を見ていきましょう。

老子の思想【無為自然・柔弱謙下・小国寡民】

老子の思想【無為自然・柔弱謙下・小国寡民】(老子:wikiより)

老子は生没年が不明で、実在も疑われている伝説的な人物です。

彼は儒家を徹底的に批判し、自然との一体化を説きました。

 

老子の思想で重要なのは以下の3つです。

  1. 無為自然
  2. 柔弱謙下
  3. 小国寡民

無為自然

無為自然とは、無理に人為的なことをしないで、自然のままに生きることです。

人為=自然の状態に人の手が加わること。

老子の言う「人為」とは、人間がつくった以下のようなものを指します。

  • 道徳
  • 礼儀
  • 学問
  • 知識
  • 文化

老子は上記をすべて否定しました。

 

老子の思想は、儒家の思想とは対照的です。

儒家が仁義などの道徳や礼を重視するのに対し、老子は道徳や礼が世の乱れの原因になったと主張します。

 

では、なぜ老子は人為を否定したのでしょうか?

 

答えは、知識が発達すると人間の欲望が際限なく肥大してしまうからです。

 

老子は、人間の作った道徳・知識・文化は人間本来のあり方をゆがめてしまうものと考えます。

 

そこで、人為を否定し自然のままに生きることを説きました。

ようは、「ありのままの自分として生きなさい」と言うわけです。

 

S先生
S先生
儒家の説く道が人為的な道徳規範だったのに対し、老子の説く道は万物を育む根源的な自然そのもの

 

老子の道は感覚や言葉によってとらえられないことから、「」であるともいわれます。

柔弱謙下

老子が考える人間の理想の生き方は、柔弱謙下です。

柔弱謙下とは、ひたすら謙虚で他人と争わない生き方を指します。

 

老子の考え方が反映された言葉が「上善は水のごとし」です。

 

水は常に低いほうに流れながら万人に恵みをもたらしていますよね。

当然争うことはしません。

 

また水は、容器にあわせて形を変える柔軟さと、巨大な岩に穴をあけるほどの強い力をあわせもっています。

 

老子は、水のように謙虚で他人と争わない生き方を理想としました。

小国寡民

老子の政治思想は、小国寡民です。

天下統一するような大国ではなく、人口も少なく自給自足できる程度のつつましい国を理想としました。

 

老子は、無為自然の考えを政治にも応用し、為政者が政治をしなくても社会が安定するのが望ましいと説いています。

この考え方を無為の治といいます。

荘子の思想【万物斉同】

荘子の思想【万物斉同】(荘子:wikiより)

荘子の思想で重要なのは、万物斉同です。

万物斉同とは、すべてのものはみな同じとする考え方のこと。

「ばんぶつせいどう」と読みます。

「斉」は「等しい」という意味です。

 

荘子は、人間界における善悪・美醜などの価値判断を無意味なものとして否定します。

ようは、人間のつくった基準を絶対視すべきではないと説いたわけです。

 

S先生
S先生
ちなみに、万物斉同を認識した人物を「真人」といいます。

 

荘子の思想がよくあらわれているたとえ話があります。

胡蝶の夢」です。

内容は以下のとおり。

ある日、荘子はチョウになった夢を見ていた。夢から覚めて荘子は気づく。「自分はチョウになった夢を見ていたが、本当は荘子になった夢を見ているチョウなのではないか」と。

「胡蝶の夢」からわかるのは、夢と現実の区別など無意味だということです。

無意味だからこそ、あるがままの世界をあるがままに生きればいいと考えます。

 

荘子が目指したのは、逍遥遊(しょうようゆう)です。

逍遥遊とは、あらゆる差別を超越した世界で一切のこだわりを捨て、チョウのように楽しく気ままに遊ぶ境地のこと。

 

逍遥遊にたどりつくにはどうすればいいの?
たなかくん
たなかくん

 

逍遥遊にたどりつくには、修行が必要です。

この修行を心斎坐忘といいます。

「心斎」とは心を無にすることで、「坐忘」とは自分というものを忘れることを指します。

入試問題にチャレンジ

問 下線部ⓕに関連して、道家のもう一人の代表的思想家荘子の思想を述べたものとして適当でないものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

① この世界は、道がおのずから現れたものであり、そこには対立や差別はない。この認識に立ち、一切の欲望や分別から自由になった人が真人である。

② この世界は、道がおのずから現れたものであるので、己の心を虚にして、心身とも天地自然と一体になる境地が理想である。

③ この世界は、道がおのずから現れたものであるのに、人間がそれを有用だとか無用だとか判断するのは、自己の価値観に囚われているためである。

④ この世界は、道がおのずから現れたものであり、人間社会の秩序も道にかなっている。この認識に立った、社会規範にかなう行為が重要である。

2006年 センター試験 本試験 倫理 第2問 問7より)

正解:④
孔子の説いた道の説明です。
①:万物斉同論の内容です。
②:逍遥遊の内容です。
③:無用の用の内容です。

 

正解:①
自然に従って生きる」「欲望や快楽などの情念によって動かされない」などの記述が最大のヒントです。
②:「魂の三部分間の葛藤や分裂が克服され」の記述が誤りです。プラトンが提唱した「魂の三分説」を念頭に置いた記述と見られます。
③:中庸の大切さについて説いたのは、ストア派ではなくアリストテレスです。
④:エピクロス派のアタラクシア(心の平静)に関する記述です。

まとめ

今回は、道家の思想について解説しました。

学習内容のおさらいです。

 

老子の思想

・儒家の人為的道徳を否定し、無為自然に生きることを説いた。

 

・ひたすら謙虚で他人と争わない生き方(=柔弱謙下)を理想とする。

 

・天下を統一する大国より、人口も少なく自給自足できる程度の国を理想とする。

荘子の思想

・人間のつくった価値基準を否定(≒万物斉同)し、あらゆる差別を乗り越えた境地(≒逍遥遊)を目指す。

 

・逍遥遊の境地にたどりつくためには、心斎坐忘という修行が必要である。

 

道家の思想をマスターするための第一歩として、上記の5点をおさえておきましょう。

記事を読んで内容を理解したら問題を解いてアウトプットすることもお忘れなく。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

前回の記事「孟子と荀子の思想の違いを超わかりやすく解説【倫理第17回】」をご覧ください。

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