こんにちは。
今回は、孔子没後に登場した孟子と荀子の思想を解説します。
孟子と荀子の思想をはじめて学ぶ人にもキッチリ理解してもらえるよう、わかりやすく解説しました。
また記事の後半には、今回のテーマに関連した入試問題も用意しています。
この記事を読むだけで基本の理解・復習ができるので、最後まで読んでみてください。
この記事からわかること
・孟子と荀子の思想の違い
・孟子の思想【性善説・五倫・王道政治】
・荀子の思想【性悪説・礼治主義】
孟子と荀子の思想の違い
(孟廟:wikiより)
孔子が亡くなったあと、儒家はさまざまな立場に分かれていきます。
なかでも代表的な思想家が孟子と荀子です。
孟子と荀子は思想が異なります。
孟子は仁を重視するのに対して、荀子は礼を重視しました。
ではここから、孟子・荀子それぞれの思想について詳しく見ていきましょう。
孟子の思想(仁)
(孟子:wikiより)
性善説
孟子の思想で最も重要なのが、性善説です。
性善説とは、人間誰もが生まれつき善の素質をもっているとする考え方です。
善の素質のことを孟子は四端(したん)の心と表現します。
四端の心についての説明は以下のとおりです。
- 惻隠の心:他人の不幸を見過ごせない心。惻隠=「そくいん」と読む
- 羞悪の心:悪を恥じ、憎む心。羞悪=「しゅうお」と読む
- 辞譲の心:他者を尊重し、譲り合う心。辞譲=「じじょう」と読む
- 是非の心:正邪・善悪についての判断力。是非=「ぜひ」と読む
人間はみな四端の心をもっています。
ですが、何もしなくても善を実現できるわけではありません。
誰もがプロ野球選手になれる素質があるからといって、練習せずに全員がプロ野球選手になれるわけではないのと同じですね。
善を実現するためには、道徳を身につけるためのトレーニング(=修養)が必要です。
四端の心を修養によって伸ばすことで、四徳を獲得できます。
四徳は、文字通り4つの徳のこと。
具体的には、こんな感じです。
- 惻隠の心を修養によって伸ばすと、仁を獲得できる
- 羞悪の心を修養によって伸ばすと、義を獲得できる
- 辞譲の心を修養によって伸ばすと、礼を獲得できる
- 是非の心を修養によって伸ばすと、智を獲得できる
上記の仁・義・礼・智が四徳にあたります。
四徳を身につけると大丈夫になれます。大丈夫とは、「道徳を身につけた人物」という意味です。
徳を身につけた大丈夫は、浩然の気に満ちているとされます。浩然の気とは、体の中からわいてくる道徳的活力のことです。
五倫
孟子も儒家の人間なので、当然上下関係を重視します。
そのうえで基本的な人間関係を5つに分類し、それぞれの関係で守るべき道があると唱えました。
この道こそが五倫です。
五倫に関する具体的な説明は以下のとおり。
- 父子の親:父子間の親愛の情
- 君臣の義:君臣間の礼儀
- 夫婦の別:夫婦それぞれに異なる役割がある
- 長幼の序:年長者と年少者の間で守るべき道徳的な秩序
- 朋友の信:友人間の信頼
朋友の信だけが対等な関係で、ほかはすべて上下関係です。注意してくださいね。
王道政治
孟子の政治思想は、王道政治です。
王道政治は徳によって世の中を治めるべきだとする思想を指します。
一方、武力によって世の中を治めるべきだとする思想が覇道政治です。
王道政治は天命にもとづくのが特徴です。天命とは、天による命令のことです。
天とは、全宇宙の出来事をつかさどる存在です。ようは、この地に雨を降らせるのも、争いごとが起こるのもすべて天の意志によるものだというわけです。
孟子いわく、君主はこの天の意志(=天命)にかなった人物であるべきだとされます。天命にかなった人物=天子です。
民衆の意志によってわかります。
具体的にはこんな感じです。
かりに君主が民衆の支持を失った場合には、天命にかなった人物へと君主をかえる必要があります。
これを易姓革命といいます。
「天『命』が『革』まり(あらたまり)、王朝の『姓』が『易』わる(かわる)」から易姓革命と覚えてください。
革命には禅譲と放伐の2つがあります。
禅譲とは、君主がみずから王位を譲ること。
「ぜんじょう」と読みます。
放伐とは、武力によって君主を追放することです。
「ほうばつ」と読みます。
孟子は禅譲・放伐いずれも肯定しています。
武力に訴える覇道政治を否定しているにもかかわらず、放伐を肯定している点には注意が必要です!
荀子の思想
(荀子:wikiより)
孟子の性善説とは対照的に、荀子は性悪説を主張します。
性悪説とは、人間のもっている本来の性質は悪であるとする考え方です。
ただし人間はみな悪人だと言っているわけではありません。
人間は欲深く利己的な存在だからこそ、善を実現するには修養が不可欠だと荀子は言います。
では人間が正しく生きるためには、どうすればいいのでしょうか?
荀子は、社会規範である礼によって人間がもっている悪い性質を矯正する必要があると説きました。
このように礼にもとづく教育や日々の習慣などによって、人間の悪い本性を矯正すべきだとする考え方を礼治主義といいます。
礼治主義は弟子である韓非子を通じて、法家に影響を与えています。
入試問題にチャレンジ
問 下線部ⓒに関連して、孟子の思想の記述として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 王は民衆の仁義礼智を当てにせず、武力によって世の中を治めるべきだとする王道思想を説いた。
② 人間の本質は善であるので、王は徳によって民衆を平等に愛するべきだとする兼愛思想を説いた。
③ 王が徳に反する政治を行うなら、民衆の支持を失い、天命が別の者に移るという易姓革命を唱えた。
④ 浩然の気に満ちた大丈夫が王となって、民衆の幸福の実現を目指すという覇道政治を唱えた。
①:武力によって世の中を治めるべきだとする政治思想は、王道思想(王道政治)ではなく覇道思想(覇道政治)です。
孟子の政治思想は王道思想であり、覇道思想を否定しています。
②:兼愛思想を説いたのは墨子です。
④:浩然の気に満ちた大丈夫が王となり、民衆の幸福の実現を目指すべきとする政治思想は覇道政治ではなく王道思想です。
まとめ
今回は、孟子と荀子の思想について解説しました。
学習内容のおさらいです。
孟子と荀子の思想の違い
・孟子=仁を重視⇔荀子=礼を重視
孟子の思想
・すべての人間には生まれつき善の素質があるとする性善説を唱えた。
・孟子の説いた五倫とは、父子の親・君臣の義・夫婦の別・長幼の序・朋友の信を指す。
・また、武力に訴える覇道政治を否定し、徳によって世の中を治めるべき(=王道政治)だと主張した。
・ただし民主の支持を失った君主を武力によって追放することは認めている。
荀子の思想
・性悪説を唱え、善を実現するには人間のもつ悪い性質を礼によって矯正する必要があると説いた。
孟子と荀子の思想をマスターするための第一歩として、上記の6点をおさえておきましょう。
記事を読んで内容を理解したら問題を解いてアウトプットすることもお忘れなく。
最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「孔子の教えを初学者向けに超わかりやすく簡単に解説【倫理第16回】」をご覧ください。
次回の記事「道家の思想(老子・荘子)をわかりやすく簡単に解説【倫理第18回】」をご覧ください。
共通テスト対策本は「蔭山の共通テスト倫理」がおすすめです。図解・イラスト付きで読みやすいので、受験生はもちろん、倫理をはじめて学ぶ人もご一読ください。
コメント