今回のテーマは、ユダヤ教です。この記事では以下の内容が学べます。
この記事からわかること
・ユダヤ教誕生までの歴史
・ユダヤ教の特徴
ユダヤ教についてはじめて学ぶ人にもキッチリ理解してもらえるよう、わかりやすく解説しました。
また記事の後半には、今回のテーマに関連した入試問題も用意しています。この記事を読むだけで基本の理解・復習ができるので、最後まで読んでみてください。
ユダヤ教とは
(ユダヤ教:wikiより)
ユダヤ教とは、旧約聖書を聖典とするユダヤ人の民族宗教です。
ちなみに「ユダヤ人」とは、バビロン捕囚(ほしゅう)以降の呼び名です。外国人からはヘブライ人と呼ばれていました。またユダヤ人は自らをイスラエル人と呼んでいました。
つまり、ユダヤ人・ヘブライ人・イスラエル人は同じ民族なのです。
ユダヤ教が生まれた場所は、わずかな植物しか育たない過酷な砂漠地帯です。
このような厳しい環境を生き抜くため・民族的な苦難の意味を説明するための教えとして、ユダヤ教が生まれました。
では次からはユダヤ教が誕生するまでの歴史について詳しく見ていきましょう。
ユダヤ教誕生までの歴史
(アブラハム:wikiより)
イスラエル人は紀元前15世紀ごろにカナンへ移住しました。
カナンに定着しなかった一部のイスラエル人はエジプトへ移住したものの、のちに彼らは奴隷にされてしまいます。
しかし預言者モーセに導かれて、紀元前13世紀ごろにカナンへと戻りました。
そして紀元前11世紀にはイスラエル王国を建国し、栄華を誇ります。
ですが王国はほどなくして分裂し、紀元前6世紀には、新バビロニア王国によってイスラエル人は強制的に集団移住させられました。
上記の事件をバビロン捕囚といいます。
しかしイスラエル人たちは苦難の中でも信仰を捨てませんでした。彼らは帰国を許されると、神様への感謝の気持ちを新たにし、エルサレムの地に神殿を再建しました。
ユダヤ教成立の瞬間です。
ユダヤ教の特徴
(ユダヤ教:wikiより)
ユダヤ教の特徴は下記の4つです。
- イスラエル人と唯一神ヤハウェとの契約を核とする
- 民族宗教
- 律法の遵守による救済を主張
- 選民思想
ユダヤ教は、イスラエル人と唯一神ヤハウェとの契約を核とする民族宗教です。ユダヤ人のみを救済の対象としている点に注意してください。
ちなみに契約とは、神に与えられたルールである律法のことです。
ユダヤ教の教えでは、律法を守り通せば万能の存在である神が救済してくれるとされています。
そしてユダヤ教徒は次のように考えます。
神様は自分たちを選んで救ってくれるのだから、いかなる苦難も試練として引き受けなければならないと。
上記のような考え方を選民思想といいます。
律法の主な内容は、預言者モーセがシナイ山で神から授かったとされる十戒のなかで示されています。
十戒の内容は以下のとおりです。
- あなたには、わたしをおいてほかに神があってはならない。
- あなたはいかなる像も造ってはならない。
- あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。
- 安息日を心に留め、これを聖別せよ。
- あなたの父母を敬え。
- 殺してはならない。
- 姦淫してはならない。
- 盗んではならない。
- 隣人に関して偽証してはならない。
- 隣人の家を欲してはならない。
ではユダヤ教徒全員が律法をきっちり守ったかというと、必ずしもそうではありませんでした。ユダヤ人の中には、ヤハウェ以外の神を信仰する者もたびたび現れたのです。
すると神は「お前たちは私を裏切った」と宣告し、厳しい罰を与えました。たとえば、物語「ノアの方舟」に出てくる大洪水のお話があげられます。
当時の神は、裁きの神・怒りの神としての性質を強くもっていました。ゆえにユダヤ教では、神に対する恐怖心や尊敬の気持ちが人々を正しい方向に導くものと考えられていたわけです。
とはいえ、人々の信仰心が徐々に薄らぎつつあるのも事実でした。そこで登場したのが預言者です。
預言者とは、神の言葉を預かる者のことで、「予言者」とは異なるので注意してください。預言者の例としては、先ほど紹介したモーセやイザヤ、エレミヤがいます。
預言者は人々の堕落に警鐘を鳴らすと同時に、希望も語りました。
神様が正しい者とそうでない者を区別する最後の審判が近づいており、その終末の日にはメシア(救世主)が現れると主張したのです。
そして「神の国は近づいた。悔い改めよ」と説き、メシアを名乗る人物が現れます。その人物こそがイエスです。
イエスについては次回の記事「イエスの教え(隣人愛など)をわかりやすく簡単に解説【倫理第10回】」で解説します。
入試問題にチャレンジ
問 下線部ⓐ(貧富)に関連して、金品の所有や利得の追求についての教えや思想の説明として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① ソクラテスは、魂を優れたものにするよう配慮しさえすれば、金銭をできるだけ多く自分のものにしようとする欲求は自然と満たされる、という福徳一致の考えを示した。
② イスラーム教では、あらゆるものは究極的には神の所有物とされるが、人にはそれを用いる権利が与えられており、貸した金から利子を得ることも広く認められていた。
③ ユダヤ教では神からモーセに授けられた十戒を遵守することが求められ、その十戒のなかには、盗みを禁じる規定や、隣人の家を欲することを禁じる規定があった。
④ 仏教では、所有欲が執着として否定され、欲しいものが得られないという苦悩は、所有欲があるから生じるのであり、執着を絶つためには徹底した苦行が必要であるとされた。
①:福徳一致とは、徳を知る者だけが真の意味で幸福になれることを意味します。人間にとっての徳は、魂を優れたものにすること(=善く生きること)であり、金銭欲とはまったく異なるものです。ソクラテスについて復習したい方は、こちらの記事「ソクラテスの思想(魂への配慮・無知の知など)についてわかりやすく解説【倫理第5回】」を読んでみてください。
②:イスラーム教では、利子を得ることが厳しく禁じられています。イスラーム教についてはこちらの記事「イスラーム教とは?教えの特徴についてわかりやすく簡単に解説【倫理第12回】」を読んでみてください。
④:仏教で苦行は否定されています。
まとめ
今回は、ユダヤ教について解説しました。学習内容のおさらいです。
・ユダヤ教とは、旧約聖書を聖典とするユダヤ人の民族宗教。
・ユダヤ教は、唯一神ヤハウェとイスラエル民族との契約によって成立する。
・神に与えられたルールである律法を守ることで、メシアによる救済を待望した。
ユダヤ教の基本をマスターするための第一歩として、上記の3点をしっかりおさえておきましょう。最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「ヘレニズム哲学とは?思想の特徴を超わかりやすく解説【倫理第8回】」をご覧ください。
次回の記事「イエスの教え(隣人愛など)をわかりやすく簡単に解説【倫理第10回】」をご覧ください。
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