今回は、外国為替について取り上げます。
外国為替とは何かという基本的な部分や、円高もしくは円安になった場合にどんな影響が生じるのかなどを重点的に解説しました。
最後には入試問題も用意しているので、ぜひ最後までお読みください。
この記事からわかること
・外国為替とは何なのか
・為替レートを決めるシステムの種類
・円高・円安について(生じる影響など)
外国為替とは
(ドッジ:wikiより)
外国為替とは、円やドルなどの異なる通貨を交換することです。
そして通貨を交換する場所を外国為替市場といいます。外国為替市場は、銀行間で通貨を交換するインターバンク市場と、個人・企業などの顧客相手に通貨を交換する対顧客市場の2種類です。
じゃあ為替レートって何?
為替レートとは、1ドル=100円のような通貨の交換比率のことを指します。
為替レートを決定するシステムは、固定相場制と変動相場制の2つです。
固定相場制は、為替レートを固定して変動幅を一定の枠内にとどめるシステムなのに対し、変動相場制は、通貨の需要・供給関係によって為替レートが変動する為替相場のことをいいます。
日本では当初、1949年のドッジ=ラインにより、為替レートが1ドル=360円に固定されていました。
しかし、ドルの信用が低下したことを受け、1973年に変動相場制へと移行したという歴史があります。
円高・円安とは
(外国為替市場:wikiより)
円高・円安というワードを新聞やニュースで聞いたことがあるけど、どういうことなのかイマイチわからないなぁ。
円高・円安という言葉は耳にしたことがあるかもしれませんが、それが何を意味するのかわからない人もいるかと思います。
そこで円高・円安とは何かという基本を詳しく解説しているので、ぜひチェックしてみてください。
円高・円安とは
円高とは、他国通貨に対する円の価値が高くなることです。逆に円安とは他国通貨に対する円の価値が低くなることをいいます。
では、1ドル=150円が1ドル=100円になるとどうなるでしょうか?
1ドルの価値が50円分安くなるので、相対的に円の価値が高くなりますよね。だから円高(ドル安)ということになります。
逆に1ドル=100円が1ドル=150円になるとどうでしょう。1ドルの価値が50円分高くなるので、相対的に円の価値は下がります。つまり円安(ドル高)ということになるわけです。
円高・円安の影響
円高になると、日本の輸出量が減る一方、輸入量が増加します。
1ドル=150円が1ドル=100円になったとしましょう。すると1台150万円する日本車の海外での価格はどうなるでしょうか?
1ドル=150円の場合、150万÷150=1万ドルですが、1ドル=100円だと150万÷100=1.5万ドルになります。
価格が上がるわけですから、外国では日本車が売れなくなりますよね。だから円高では、日本の輸出量が減少してしまうわけです。
逆に1万ドルの外車は150万円(1万×150)から100万円(1万×100)と安くなるので、輸入量は増加します。
一方、円安になると、日本の輸出量が増える反面、輸入量が減少します。
1ドル=100円が1ドル=150円になった場合、1台150万円する日本車の海外での価格は1.5万ドルから1万ドルへ下がるので、輸出量は増加しますよね。
逆に1万ドルの外車は100万円から150万円に上がるため、輸入量は減少するわけです。
今回の範囲はここまでとなります。続いて入試問題を用意しているので、ぜひチェックしてみてください。
入試問題にチャレンジ
問1 下線部ⓔ(グローバル化)に関連して、為替レートの決まり方を説明する考え方の一つとして、購買力平価説がある。購買力平価説によれば、仮に2国を取り上げた場合、この2国通貨間の為替レートは、どちらの通貨を用いても同一商品を同じだけ購買できるような水準になる。ここで、日本とアメリカで販売されている同一のスマートフォンが当初日本では1台9万円、アメリカでは1台900ドルで販売されていた。その後、価格が変化して、日本では8万円、アメリカでは1,000ドルになった。このスマートフォンの価格に関して購買力平価説が成り立つ場合、円とドルとの為替レートはどのように変化したか。正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 当初1ドル=100円だった為替レートが1ドル=80円となり、円高ドル安となった。
② 当初1ドル=100円だった為替レートが1ドル=80円となり、円安ドル高となった。
③ 当初1ドル=100円だった為替レートが1ドル=125円となり、円高ドル安となった。
④ 当初1ドル=100円だった為替レートが1ドル=125円となり、円安ドル高となった。
(2019年 センター試験 本試験 政治・経済 第2問 問5より)
問2 下線部ⓗ(物価)に関連して、生徒たちは、次の図と図に関する説明を用いて、各国の物価水準の比率から外国為替レートを理論的に求める購買力平価説を学んだ。この説に基づいて算出される外国為替レート(1ドル=α円)を基準として考えるとき、20××年〇月△日における実際の外国為替レートの状態を表す記述として正しいものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
図
【図に関する説明】
・両国で販売されている「SEIKEIバーガー」はまったく同じ商品であり、それぞれの販売価格は、同一年月日(20××年〇月△日)のもので時差は考えない。
・両国の物価水準は「SEIKEIバーガー」の販売価格でそれぞれ代表される。
① 実際の外国為替レートは、1ドル当たり120円の円安ドル高である。
② 実際の外国為替レートは、1ドル当たり120円の円高ドル安である。
③ 実際の外国為替レートは、1ドル当たり21円の円安ドル高である。
④ 実際の外国為替レートは、1ドル当たり21円の円高ドル安である。
一つひとつの取引が「貿易・サービス収支」「第一次所得収支」「第二次所得収支」のどれに当てはまるのか、ていねいに分類していくことがポイントです。また、矢印の向きに注目することも重要ですよ。
まず1つ目の矢印「株式の配当」ですが、これはA国がB国に対して株式投資を行い、リターンとして配当を得たわけですから、第一次所得収支に該当します。
2つ目の矢印「医薬品のための無償資金援助」は、第二次所得収支です。
3つ目の矢印「特許使用料」は、貿易・サービス収支に当てはまりますね。
4つ目の矢印「外国人労働者による家族への送金」は、外国人労働者による母国への援助と考えると、第二次所得収支に該当します。
5つ目の矢印「国債の利子」は、先ほどの「株式の配当」と同様、第一次所得収支です。
最後の矢印「電気機器の輸入代金」は、貿易・サービス収支ですね。
これを踏まえて、「貿易・サービス収支」「第一次所得収支」「第二次所得収支」を算出します。
貿易・サービス収支は、特許使用料(25億ドル)と電気機器の輸入代金(35億ドル)です。特許使用料は矢印の向きから判断すると、B国からA国へお金が流入しているので、プラスになります。逆に電気機器の輸入代金はマイナスになるので、貿易・サービス収支は-10億ドル(=25-35)です。
第一次所得収支の、株式の配当(40億ドル)と国債の利子(10億ドル)はともにB国からA国へお金が流入しているわけですから、いずれもプラスになります。よって第一次所得収支は50億ドル(=40+10)です。
第二次所得収支の、医薬品のための無償資金援助(5億ドル)と外国人労働者による家族への送金(10億ドル)はいずれもB国へお金が流出しているため、マイナスになります。したがって第二次所得収支は-15億ドルです。(=-5-10)以上より、正解は③となります。
②・③:経常収支には、旅行や輸送によって生じる収支や、雇用者報酬・消費財の無償援助が含まれます。
④:直接投資は、金融収支に含まれるので、間違いです。
まとめ
今回は、外国為替について解説しました。
円高とは他国の通貨に対して円の価値が相対的に高くなることで、日本の輸出量が減る一方、輸入量が増加します。
逆に円安とは、他国の通貨に対して円の価値が相対的に低くなることです。日本の輸出量が増える反面、輸入量が減少します。
円高・円安のメカニズムをしっかり理解しておけば、ニュースや新聞をチェックするのがより楽しくなりますよ。
ぜひこの記事を読んで外国為替をマスターしていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「国際収支について(経常収支・金融収支など)わかりやすく解説【経済第16回】」ですのでよければ読んでください。
次回の記事「国際経済体制(ブレトンウッズ体制など)についてわかりやすく解説【経済第18回】」をご覧ください。
政治経済を理解するには「蔭山の共通テスト政治・経済」がおすすめです。政治経済の細かいところまで解説してくれるので、受験生はぜひとも一読をするとよいでしょう。
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