今回は、資本主義と社会主義を解説します。
資本主義・社会主義それぞれの特徴はもちろん、アダム=スミスやケインズ、マルクスといった有名な経済学者の学説についても扱いました。
最後には入試問題も用意しているので、ぜひ最後までお読みください。
この記事からわかること
・資本主義・社会主義それぞれの特徴
・アダム=スミス・ケインズ・マルクスらの経済思想
資本主義
(世界恐慌:wikiより)
資本主義とは
(アダム=スミス:wikiより)
資本主義は、個人で自由にお金儲けをしてもよいという考え方です。イギリスの産業革命がきっかけとなって確立し、西欧諸国やアメリカ、日本へと広がりました。
資本主義のもとでは、資本家が工場や機械などの生産手段を私的所有し、労働者を雇って商売ができます。また、利潤追求を目的とする自由競争が許されるのも特徴の1つです。
経済学者のアダム=スミスは、著書「国富論」のなかで自由競争のメリットを説いています。彼は国家が国民の経済活動に干渉しなくても、自由競争のもとで各人が自分の利益を追求すれば、神の見えざる手に導かれ、社会全体の利益も増進すると考えました。
ゆえにスミスは自由放任主義の立場をとり、国家が国内産業を保護して輸出を促進する重商主義政策を批判します。
また国家は、国防・治安維持・司法などの必要最小限の活動に専念すべきと主張しました。こうしたスミスの国家観を小さな政府といいます。
さらに、分業の利益を説き、分業こそが生産力を飛躍的に増大させるとした点も重要ですよ。
修正資本主義
(ケインズ:wikiより)
1929年の世界恐慌をきっかけに資本主義は、修正資本主義へと変容していきます。つまり、政府による経済活動への積極的な介入が求められるようになったわけです。
その最たる例としては、アメリカのフランクリン=ローズベルト大統領が実施したニューディール政策が挙げられます。ニューディール政策では、大規模な公共投資が行われ、失業者が減少しました。
こうした修正資本主義への転換の裏付けとなったのが、ケインズの理論です。彼は、著書「雇用・利子および貨幣の一般理論」で自由放任主義を批判し、生産水準は一国全体の有効需要で決まると説きました。
有効需要とは、貨幣の支出をともなう需要のことです。
ケインズは、失業をなくし完全雇用を実現するためには、政府が財政・金融政策によって積極的に経済活動へと介入し、有効需要を創出するべきと主張しました。
社会主義
(ベルリンの壁:wikiより)
社会主義とは
(マルクス:wikiより)
社会主義は、儲けたお金は国が管理してみんなで平等に分けようという考え方です。
社会主義のもとでは、生産手段は公有(社会的共有)となります。また、利潤追求や自由競争は否定され、国家の指令による中央集権的な計画経済によって資源や労働力が配分されることになるわけです。
マルクスは、著書「資本論」で、利潤・賃金・恐慌・失業などの観点から資本主義を批判します。
さらに彼は、自らの考え方を科学的社会主義と呼び、サン=シモンやフーリエらによるそれまでの社会主義(空想的社会主義)と区別しました。
初期の社会主義は資本主義に対する科学的な分析が不十分で、新しい社会に至るまでの道筋を示していなかったからです。
では社会主義のゴールとは、いったい何なのでしょうか?
それは、貧富の差や階級対立のない平等な社会を作ることです。
しかし、競争原理が働かないことによる技術革新の遅れや、労働者の勤労意欲の低下もあって、1960年代以降社会主義経済は停滞していきました。
社会主義の変容
(ゴルバチョフ:wikiより)
1990年に東西統一を果たしたドイツが資本主義経済の道を進んでいったのを筆頭に、社会主義経済は大きく変化していきます。
ソ連は、1980年代後半にゴルバチョフによりペレストロイカが進められたものの、1991年に崩壊しました。
中国は、1978年から始まった改革開放政策で経済特区の設定・株式制度の導入が行われるなど、社会主義市場経済を推進しています。
ベトナムは、ドイモイ(刷新)政策により市場経済が導入され、社会主義国初のASEAN加盟も果たしました。
まとめ
アダム=スミス・ケインズ・マルクスの3人について、それぞれの著書と彼らの思想をまとめました。日々の勉強にご活用ください。
今回の範囲はここまでです。続いて入試問題を用意しているので、ぜひチェックしてみてください。
入試問題にチャレンジ
問 下線部ⓒ(資本主義経済)に関連する学説を展開したアダム・スミスに関する記述として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 国内に富を蓄積するため保護貿易政策を行うことの必要性を説いた。
② 「経済学および課税の原理」を著し、貿易の自由化を重視した。
③ 財政政策や金融政策によって完全雇用が達成されることを説いた。
④ 「国富論(諸国民の富)」を著し、市場の調整機能を重視した。
まとめ
今回は、資本主義と社会主義について解説しました。
この記事を読んで資本主義・社会主義それぞれの特徴や、アダム=スミス・ケインズ・マルクスの経済思想を理解していただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「財政の役割や租税・公債の種類についてわかりやすく解説(入試問題つき)【経済第5回】」ですのでよければ読んでください。
次回の記事「日本経済の歴史についてわかりやすく解説(入試問題つき)【経済第7回】」をご覧ください。
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