需要・供給曲線について市場経済メカニズムをわかりやすく解説(入試問題つき)【経済第2回】

今回は、需要曲線や供給曲線について市場メカニズムや需給曲線のシフトを図表も交えて解説します。

 

また、市場のメカニズムの例外となる独占や寡占、外部不経済といった市場の失敗についても扱います。

 

最後には入試問題も用意しているので、ぜひ最後までお読みください。

この記事からわかること

・需要曲線・供給曲線それぞれのグラフが何を表しているのか

・需給曲線は、価格以外のどんな要因でシフトするのか

・市場の失敗とは何か

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市場とは?需要と供給について

市場とは、売り手と買い手が出会い、財やサービスを売買する場所です。市場にはいくつか種類がありますが、なかでも売り手と買い手が多数存在する市場を完全競争市場といいます。

完全競争市場では、商品の価格は需要と供給の関係で決まります。需要とは、ある商品を買おうとすることです。そして需要量は、市場で消費者(家計)が買いたいと思っている商品の量を指します。

(需要の法則)

商品の価格が上がれば、需要量は減ります。

 

たくさんのお金を払わないと買えないからです。逆に商品の価格が下がれば安く手に入るので、需要量は増えます。

 

このように価格が上がれば需要量が減り、価格が下がれば需要量が増えるというメカニズムを需要の法則といいます。

 

上の図を見ると、価格がP2のとき需要量はQ1ですが、価格がP1に下がると、需要量がQ2に増えていることがわかりますよね。

 

グラフで表すと右下がりの曲線になっています。つまり、需要曲線は需要の法則を表現しているわけです。

 

反対に供給とは、ある商品を売ろうとすることです。そして供給量は市場で生産者(企業)が売ろうとしている商品の量を指します。

(供給の法則:オリジナル)

商品の価格が上がると、供給量は増えます。

 

価格が上がれば利潤(儲け)が増えるからです。逆に商品の価格が下がると、価格が下がれば利潤が減るため、供給量が減ります。

このように価格が上がれば供給量が増え、価格が下がれば供給量が減る仕組みを供給の法則といいます。

 

上の図を見ると、価格がP1のとき供給量はQ1ですが、価格がP2に上がると供給量はQ2に増えていることがわかりますよね。

 

グラフで表すと、右上がりの曲線になっています。つまり、供給曲線は供給の法則を表現しているわけです。

(需要・供給の法則:オリジナル)

需要量が供給量より多い超過需要の場合、品不足になるため、価格は上がります。上のグラフでいうとQ3ーQ1だけ品不足になるので、価格が上昇して需要量は減り、供給量は増加していくわけです。

 

反対に供給量が需要量より多い超過供給の場合、売れ残りが生じて損になるため、価格は下がります。グラフでいうとQ3ーQ1だけ売れ残りになるので、価格が下落して需要量は増加し、供給量は減少していくわけですね。

 

このように超過需要で価格が上がり、超過供給では価格が下がるという仕組みを需要・供給の法則といいます。

 

こうして、均衡点Eで需要量と供給量が均衡します。この状態が市場均衡です。市場均衡状態のとき、グラフのP2を均衡価格、Q2を均衡取引量といいます。

 

このように、価格には需要と供給の不均衡を調整して、両者を均衡させようとする働きがあります。価格の自動調整機能(市場メカニズム)と呼ばれるので、覚えておきましょう。

 

需要と供給が一致している市場均衡では、品不足も売れ残りもありません。すべての経済資源が必要な人の手に最も効率的に配分されている状態こそが市場均衡なのです。

需要と供給の表

需要と供給の関係を表にまとめました。

日常の学習にお役立てください。

需要量供給量
商品の価格上昇減少増加
商品の価格下落増加減少

 

価格
需要量>供給量上昇
需要量<供給量下落

需給曲線のシフト

価格は同じでも、価格以外の要因が変化することで需要曲線・供給曲線そのものが移動することを需給曲線のシフトといいます。

 

まずは需要曲線のシフトから見ていきましょう。

(需要曲線のシフト:オリジナル)

需要曲線が右シフトする場合、需要量が増大したことを意味します。

 

上のグラフを見ると、需要曲線DDがD’D’に右シフトしたところ、均衡点AからBに移動していることがわかりますよね。すると均衡取引量がQ2からQ3に増え、均衡価格もP2からP3に上がります。

 

需要量を増大させる要因としては、以下の5つが挙げられます。

①所得の増加

②所得税の減税

③嗜好の変化(商品の流行)

④ライバル関係にある代替財の値上げ(例:米とパン、バターとマーガリンなど)

⑤補完財の値下がり(例:パンとバター、パスタとミートソースなど)

代替財とは、ある財の代用となる財のことで、補完財は、相互に補完して効用を得られる財のことです。

 

④ですが、例えばパンの代替財である米の価格が上がれば、相対的に安いパンの需要は高くなりますよね。つまり、ライバル関係にある代替財が値上げされれば、需要量は増えるというわけです。

 

⑤は、例えばバターの補完財であるパンが安くなれば、パンだけではなくバターも一緒に需要が増えるということを意味します。

 

反対に需要曲線が左シフトすると、需要量が減少したことを表します。

 

上のグラフを見ると、需要曲線DDがD’’D’’に左シフトしたところ、均衡点AからCに移動していることがわかりますよね。すると均衡取引量がQ2からQ1に減り、均衡価格もP2からP1に下がります。

 

需要量を減少させる要因としては、

所得の減少②所得税増税③流行の終わり④代替財の値下げ⑤補完財の値上がり

が挙げられます。

 

続いて、供給曲線のシフトについても見ていきましょう。

(供給曲線のシフト:オリジナル)

供給曲線が右シフトする場合、供給量が増大したことを意味します。

 

上のグラフを見ると、供給曲線SSがS’S’に右シフトしたところ、均衡点AからBに移動していることがわかりますよね。すると均衡取引量がQ2からQ3に増え、均衡価格はP2からP1に下がります。

 

供給量を増大させる主な要因としては、以下の4つが挙げられます。

技術革新②原材料費の値下げ③法人税の減税④生産設備の拡大

逆に供給曲線が左シフトすると、供給量が減少することを表します。

 

上のグラフを見ると、供給曲線SSがS’’S’’に左シフトしたところ、均衡点AからCに移動していることがわかりますよね。すると均衡取引量がQ2からQ1に減り、均衡価格もP2からP3に上がります。

 

供給量を減少させる要因としては、

原材料費の値上げ②法人税の増税③生産設備の縮小

などが挙げられます。

 

最後に、消費税や酒税といった間接税を課された場合、供給曲線がどのように変化するかも見ていきましょう。

(間接税の影響:オリジナル)

企業は課税されるぶん(t円)だけ、価格に上乗せして商品を販売するため、供給曲線は左上にシフトします。上のグラフを見ると、均衡点AからBに移動し、均衡取引量はQ1からQ0に減り、均衡価格はP1からP2に上昇していることがわかります。

需給曲線のシフトの表

需要曲線供給曲線
右シフト需要量↑供給量↑
左シフト需要量↓供給量↓

市場の失敗

市場の失敗は、市場メカニズムでは解決できない問題のことです。

 

代表例は、主に3つあります。

 

一つ目は、独占や寡占の弊害です。企業間の競争力が弱まり、大企業の価格支配力を持つと、価格の自動調整機能が働きにくくなってしまいます。つまり、価格が一定になりがちです。

 

S先生
S先生
独占の形態には、同一産業の複数企業が価格・生産量などについて協定を結ぶカルテル、同一産業の大企業が合併して巨大化するトラスト、持株会社が株式所有により異業種の多くの企業を支配するコンツェルンがあります。

 

二つ目は、外部不経済です。公害などのようにマイナスの影響を与えるものを指します。逆にプラスの影響を与えるものを外部経済といいます。近くに果樹園ができたおかげで養蜂業者の蜂蜜の収穫が増加したケースはまさにその典型例といえるでしょう。

 

このように、ある経済主体が市場を通さないで他の経済主体に何らかの影響を与えることを外部効果といいます。

 

三つ目は、公共財の供給です。公共財とは、道路・公園・図書館といった社会資本や、国防・警察・義務教育などのサービスを指します。

 

多くの人が同時に利用でき(非競合性)、税金を払っていない人(フリーライダー)の利用を排除することが難しい点が特徴です。公共財は、市場では利益が出にくく、企業による供給が期待できません。だからこそ政府が財政活動を通じて提供するわけです。

 

今回の範囲はここまでです。続いて入試問題を用意しているので、ぜひチェックしてみてください。

入試問題にチャレンジ

問 下線部ⓖに関連して、次の図には、ある財の完全競争市場における当初の需要曲線と供給曲線とが表されている。いま、この市場において、均衡点がAからBに移動したとしよう。このような均衡点の変化を生じさせた要因として最も適当なものを、下の①~④のうちから一つ選べ。

① この財を消費する消費者の所得が増加した。

② この財に対する消費者の人気が高まった。

③ この財にかけられる税が引き上げられた。

④ この財を生産する技術が向上した。

2017年 センター試験 本試験 政治・経済 第4問 問7より)

正解:④ 均衡点がAからBに移動するためには、供給曲線が右にシフトしなければいけませんね。そうすると、供給曲線を右にシフトさせる要因となるものは④となります。①・②はともに、需要曲線を右シフトさせる要因で、③は供給曲線を左にシフトさせる要因なので、間違いです。
正解:④ 均衡点がAからBに移動するためには、供給曲線が右にシフトしなければいけませんね。そうすると、供給曲線を右にシフトさせる要因となるものは④となります。①・②はともに、需要曲線を右シフトさせる要因で、③は供給曲線を左にシフトさせる要因なので、間違いです。

 

① 「誰が誰に対して出しているものなのか」をア~ウ一つずつ見ていくことが重要なポイントです。まずはアですが、これは企業が家計に対して出すものですから、Aに入るのはアだとわかります。そうするとXに入るのは「家計」ということになりますね。Xに家計が入るということは、Yには「政府」が入ることになります。また、政府が企業に対して払う代金は、賃金ではなく補助金なので、Cにはウが入ります。残ったBにはイが入るので、正解は①です。

まとめ

今回は市場メカニズムや需給曲線がどんなときに移動するのかについて解説しました。

 

今回学んだ範囲は経済分野のなかでもとりわけ重要な項目です。

 

この記事を読んで、需要曲線・供給曲線それぞれのグラフが何を表しているのか、需給曲線がシフトするのはどんなタイミングか、理解していただければと思います。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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