今回のテーマは、裁判員制度です。
裁判員制度の仕組みやメリット・デメリット、陪審制や参審制との違いについてわかりやすく解説しました。
裁判員制度ってどんな仕組みなんだろう?メリット・デメリットって?
あと陪審制や参審制とどう違うのか、わかりやすく解説してくれている記事はないかなぁ…
この記事は、上記のような悩みに応えます。記事を読むだけで裁判員制度のすべてがわかりますよ。
また記事の後半には関連する入試問題を用意しています。学習した内容の復習もできるので、最後まで読んでみてください。
この記事からわかること
・裁判員制度の仕組み(裁判員の選定方法・判決までの流れ)
・裁判員制度と陪審制・参審制との違い
裁判員制度とは
(裁判員制度:wikiより)
裁判員制度とは、一般国民から選ばれた裁判員が裁判に参加する制度です。
2004年に裁判員法が成立し、2009年に裁判員制度が導入されました。
裁判員制度の目的は、裁判に国民の多様な声を反映させるためです。
対象は刑事裁判で、裁判員は重大な刑事事件の第一審のみを担当します。
一般国民から抽選で選ばれた裁判員とプロの裁判官が、有罪・無罪の事実認定から量刑の決定までをおこないます。
裁判員制度による刑事裁判の流れ
裁判員制度による刑事裁判の流れは以下のとおりです。
① 裁判員候補者名簿の作成
↓
② 事件ごとに候補者を選ぶ
↓
③ 選任手続き
↓
④ 公判
↓
⑤ 評議
↓
⑥ 判決・終了
①~③は裁判員が選ばれるまでの流れ、④~⑥は裁判員裁判の流れです。
裁判員候補者名簿の作成
裁判員の候補者は20歳以上の有権者から選ばれ、本人に通知されます。
事件ごとに候補者をくじで選ぶ
候補者には、公判6週間前までに呼び出し状が送付されます。特別な事情がない限り、辞退は認められません。
辞退が認められるケースとしては、
- 70歳以上
- 学生
- 重い病気やケガ
- 親族などの介護や養育
- 葬儀
などがあります。
また以下の人は、裁判員に選出されません。
- 国会議員
- 国の行政機関の幹部
- 自衛官
- 被告人や被害者の親族
選任手続き
裁判所で選任手続きがおこなわれます。辞退した人を除き、候補者は裁判所に出頭しなければなりません。
ここでは裁判員6人のほか、補充裁判員も選任されます。
公判
基本は裁判員6名・裁判官3名が参加します。
裁判員は裁判官とともに、検察官・弁護人・被告人の話を聞き、提出された証拠を調べて証人や被告人に質問します。
なお裁判をスムーズに進めるために、公判前整理手続きがおこなわれる場合もあります。
公判前整理手続きとは、裁判が始まる前にあらかじめ争点や証拠を絞り込む準備手続きのことです。
評議
有罪か無罪か、有罪ならどのような刑罰に処すべきかを過半数で決定します。
ただし過半数には、少なくとも1人の裁判官の意見が含まれていることが必要です。
判決・終了
裁判官が被告人に判決を言い渡して裁判は終了です。
裁判員には任務終了後も、評議の際に出た意見や多数決の数について守秘義務が課せられています。
裁判員裁判のメリット・デメリット
主なメリットは以下の2つです。
- 国民の感覚が裁判に反映される
- 国民が司法制度を身近に感じられる
逆にデメリットとしては、精神的な負担が大きいことがあげられます。
具体例としては、下記のとおりです。
- 悲惨な証拠映像を目にしなければならない可能性がある
- 判決によって被告人の人生を変えてしまうという重い責任がともなう
また辞退率の高さも裁判員制度が抱える大きな課題の1つです。実際2020年は、66.3%という高い数値が出ています。
陪審制・参審制との違い
裁判員制度・陪審制・参審制の比較表(オリジナル)
陪審制とは、一般市民から選ばれた陪審員が裁判に参加する陪審制度のことです。アメリカやイギリスで採用されています。
裁判員制度との違いは、有罪・無罪の判断や量刑の決定を誰がおこなうのかという点です。
裁判員制度は裁判員・裁判官が共同で有罪・無罪の判断と量刑の決定をおこないます。
一方で陪審制では、陪審員だけで有罪か無罪かを判断したあと、裁判官が量刑を決定します。
また陪審制のほかに、参審制と呼ばれる制度もあります。
参審制とは、一般市民から選ばれた参審員が裁判官とともに、被告人の有罪か無罪かの判断や、量刑の決定をする制度です。ドイツやフランスで導入されています。
参審員が任期制という点がほかの制度とは異なる特徴です。
入試問題にチャレンジ
問 裁判に関心をもつ生徒Xは、元裁判官の教授による「市民と裁判」という講義にも参加した。講義後、Xは、図書館で関連する書籍などを参照して、日本の裁判員制度とその課題についてまとめた。次の文章中の空欄【ア】~【ウ】に当てはまる語句の組合せとして最も適当なものを、下の①~⑧のうちから一つ選べ。
裁判員制度は、一般国民が【ア】の第一審に参加する制度である。制度の趣旨として、裁判に国民の声を反映させることや、裁判に対する国民の理解と信頼を深めることなどがあげられる。裁判員は、有権者の中から【イ】に選任され、裁判官とともに評議し、量刑も含めた判断を行う。
裁判員制度が始まって10年以上経過した現在、裁判への参加をよい経験だったとする裁判員経験者の声や、市民の感覚が司法に反映されたとの意見など、肯定的な評価がある。だが、裁判員に【ウ】課せられる守秘義務や辞退率の高さなど、いくつかの課題も指摘されている。
① ア 重大な刑事事件 イ 事件ごと ウ 任務中のみ
② ア 重大な刑事事件 イ 事件ごと ウ 任務終了後も
③ ア 重大な刑事事件 イ 年度ごと ウ 任務中のみ
④ ア 重大な刑事事件 イ 年度ごと ウ 任務終了後も
⑤ ア 刑事事件および民事事件 イ 事件ごと ウ 任務中のみ
⑥ ア 刑事事件および民事事件 イ 事件ごと ウ 任務終了後も
⑦ ア 刑事事件および民事事件 イ 年度ごと ウ 任務中のみ
⑧ ア 刑事事件および民事事件 イ 年度ごと ウ 任務終了後も
ア:裁判員制度は、重大な刑事事件の第一審で実施されています。イ:裁判員は事件ごとにくじで選出されます。ウ:裁判員には任務終了後も、評議の際に出た意見や多数決の数について守秘義務が課せられています。
まとめ
今回は、裁判員制度について解説しました。おさえておきたいポイントは以下の3つです。
- 裁判員制度とは、一般国民のなかから抽選で選ばれた裁判員が裁判に参加する制度。裁判員は事件ごとに選出される。
- 裁判員制度では、裁判員と裁判官が一緒に話し合いをして、有罪か無罪の事実認定と量刑の決定がおこなわれる。
- 一方で陪審制は、陪審員だけで被告人の有罪・無罪を決定する。また参審制では、参審員が任期制で選ばれる。
この記事を読んで裁判員制度の仕組みをマスターしていただければ幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「司法権の独立とは?2つの意味をわかりやすく解説(入試問題付き)【政治第21回】」をご覧ください。
次回の記事「地方自治とは?団体自治と住民自治の違いについてわかりやすく解説【政治第23回】」をご覧ください。
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