今回は、国民所得や景気循環について解説します。
GDPとGNIの関係・三面等価の原則・ストックとフローの違い・景気循環における波の種類・経済成長率の求め方など、幅広いトピックを扱いました。
最後には入試問題も用意しているので、ぜひ最後までお読みください。
この記事からわかること
・GDPとGNIの関係・それぞれの違いは何か
・三面等価の原則とは
・ストックとフローの違い
・景気循環の流れ 景気循環の波にはどんな種類が存在するのか
・経済成長率の求め方
国民所得とは?GDPとGNIについて
受験生で国民所得についてよく理解ができないという人が多いです。
そこで、まずGDPとGNIについて解説していきます。
GDPとGNIの関係
GDP(国内総生産)は、国内で一定期間(通常は1年)に生産された付加価値の合計です。
一方、GNI(国民総所得)は、国民が一定期間(通常は1年)に新たに生産した付加価値の合計を指します。
GDPとGNIの関係は以下の式で表されます。
海外からの純所得は、その国の国民が海外で稼いで海外からの所得(賃金・利子・配当など)の受け取りと、外国人が国内で稼いだ海外に対する所得の支払を引いた差額です。
これを踏まえて、①の式を書き換えると、
GNI=GDP+(海外からの所得-海外に対する所得)
GNI=GDP+海外からの所得-海外に対する所得
となります。
GNIは「国民」総所得なので、日本国民が海外で稼いだ海外からの所得が含まれるものの、GDPは「国内」総生産なので含まれません。
逆にGNIは「国民」総所得なので、外国人が日本国内で稼いだ海外に対する所得は含まれないものの、GDPは「国内」総生産なので含まれます。
だから、GDPに海外からの所得を足して、海外に対する所得を引いたものがGNIとなるわけです。
生産によって獲得された所得は、その生産に関わった人たちに賃金・利子・配当などの形で分配され、消費や投資の形で支出されます。
生産国民所得・分配国民所得・支出国民所得は、国民所得の流れを三つの面から捉えたものであり、その額は理論上同じです。これを国民所得の三面等価の原則といいます。
なお、GDPなどの指標は市場で取引される財やサービスのみを計算したものであるため、ボランティアや家事労働など市場を介さない活動は含まれません。
また土地や株の値上がり益のように、生産活動により生み出された価値とは評価できないものもカウントしないので注意が必要です。
こうした問題点があることを踏まえ、国民の福祉水準を正確に示すための指標が考案されています。
GDPから公害などのマイナス項目を引き、レジャーや家事労働などのプラス項目を加えた国民純福祉(NNW)や、GDPから環境悪化分を差し引いたグリーンGDPがその典型例です。
フローとストック
ある時点(通常は年末)に一国が保有する実物資産(非金融資産)と対外純資産の合計を国富といいます。
実物資産の例は、住宅・生産設備・在庫をはじめ、道路・港湾・上下水道などの社会資本・土地・地下資源・漁場などです。
なお、国内の預金をはじめとする金融資産は、日本全体にとって財産であるのと同時に、誰かの負債にあたるため、相殺されてゼロになるため、国富にはカウントされません。
対外純資産は、ある時点(年末)に日本が海外に保有する対外資産と外国が日本に保有する対外負債の差額です。
国富のように特定時点(年末)に一国が保有する資産の合計をストックといいます。対照的に、国民所得のように一定期間における経済活動の成果がフローです。
国富が増加すれば、翌年の国民所得を増大させる要因になり、逆に国民所得の増大が民間投資や公共投資による場合は、住宅・工場・社会資本の増加を意味するので国富の増大につながります。
つまり、国民所得と国富は密接な関係にあるのです。
景気循環
(景気循環:オリジナル)
経済は周期的に上昇と下降を繰り返しますが、これを景気循環といいます。景気循環は、好況→後退→不況→回復の4局面に区分されます。
ではそれぞれの特色を見ていきましょう。
好況期には商品がよく売れることに加え、物価や利子率も上昇します。また、企業は設備投資を行い、工場を拡充するため、雇用も拡大し賃金も上がります。
次に、後退期です。後退期に入ると、需要が伸び悩み、在庫が増えて生産・投資・雇用は縮小します。後退が急激に進行すると恐慌が発生します。代表的な例は、1929年に起こった世界恐慌です。
不況期に入ると、消費や投資の需要が冷え込み、物価が低下します。企業の倒産も増えて失業率が上昇し賃金も下落します。
不況期を抜けると回復期です。需要が回復して在庫が減少し、好況期へ向けて生産が拡大していきます。
また景気循環の波は4種類あり、それぞれ発見者にちなんだ名前がつけられています。
まず、キチンの波は、企業の在庫投資の変動を主原因とする約40ヶ月周期の短期波動です。
次に、ジュグラーの波は、7~10年周期の中期波動です。企業の設備投資の増減が主原因といわれています。
続いて、クズネッツの波は約20年周期の波動です。主原因は、住宅や商業店舗の建て替えなどの建築投資といわれています。
最後は、約50年周期の長期波動であるコンドラチェフの波です。主原因は大規模な技術革新といわれています。
まとめ
景気循環の4つの波を表にまとめました。日々の勉強にお役立てください。
周期 | 主原因 | |
キチンの波 | 約40ヶ月 | 在庫投資の変動 |
ジュグラーの波 | 7~10年 | 設備投資の増減 |
クズネッツの波 | 約20年 | 建築投資(住宅や商業店舗の建て替えなど) |
コンドラチェフの波 | 約50年 | 大規模な技術革新 |
経済成長
経済成長率は、GDPの対前年増加率です。今年のGDPが前年に比べ何%増えたかを示します。
経済成長率の公式は以下のとおりです。
例えば、前年のGDPが100兆円で、今年が120兆円とすると今年のGDPは前年より20兆円増加したことになります。だから、経済成長率は20%(=20兆÷100兆×100)となるわけです。
経済成長率には名目と実質の2種類があります。
名目成長率は、物価変動の影響を考慮しない名目GDPの増加率です。上の公式に前年と今年の名目GDPの値を入れて求めます。
実質成長率は、物価変動の影響を考慮した実質GDPの増加率です。上の公式に前年と今年の実質GDPの値を入れて求めます。
こちらの公式は、実質GDPが問われている問題で、問題文に名目GDPしか与えられていない場合に使える公式です。
これを使って、前年と今年の名目GDPを実質GDPに変換して実質成長率を求めます。(GDPデフレーターは問題文に与えられています。)
今回の範囲はここまでです。続いて入試問題を用意しているので、ぜひチェックしてみてください。
入試問題にチャレンジ
問 下線部ⓖに関連して、景気循環の類型とそれが起こる主な要因についての記述として正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① クズネッツの波は、技術革新を主な要因として起こるとされる景気循環である。
② コンドラチェフの波は、在庫投資の変動を主な要因として起こるとされる景気循環である。
③ キチンの波は、建設投資の変動を主な要因として起こるとされる景気循環である。
④ ジュグラーの波は、設備投資の変動を主な要因として起こるとされる景気循環である。
まとめ
今回は、国民所得・景気循環について見てまいりました。
この記事を読んで、GDPとGNIの関係やフロー・ストックの違い、景気循環で登場した4つの波・経済成長率の求め方を理解していただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「需要曲線・供給曲線についてわかりやすく解説(入試問題つき)【経済第2回】」ですのでよければ読んでください。
次回の記事「金融(通貨制度・信用創造・金融政策など)についてわかりやすく解説【経済第4回】」をご覧ください。
政治経済を理解するには「蔭山の共通テスト政治・経済」がおすすめです。政治経済の細かいところまで解説してくれるので、受験生はぜひとも一読をするとよいでしょう。
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