朱子学と陽明学の違いを超わかりやすく簡単に解説【倫理第20回】
倫理
今回のテーマは、朱子学と陽明学です。
この記事では以下の内容が学べます。
この記事からわかること
・朱子学とは【朱子が大成した学問】
・陽明学とは【王陽明が創始した学問】
・朱子学と陽明学の違い【性即理と心即理・格物致知の解釈の違い】
朱子学・陽明学をはじめて学ぶ人にもキッチリ理解してもらえるよう、わかりやすく解説しました。
また記事の後半には、今回のテーマに関連した入試問題も用意しています。
この記事を読むだけで基本の理解・復習ができるので、最後まで読んでみてください。
朱子学とは【朱子が大成した学問】
(朱子:wikiより)
朱子学とは、宋王朝の時代の儒者である朱子(朱熹)が大成した学問です。
宋学ともいわれます。
朱子学には重要な理論があります。
それが理気二元論です。
理気二元論とは【宇宙のすべては理と気から成り立っている】
理気二元論とは、宇宙のすべては理と気から成り立っているとする考え方です。
理と気に関する説明は下記のとおり。
- 理:人間を含む万物を支配する原理・法則
- 気:物質を構成する要素
理は五感ではとらえられない(が、確実に存在する)ものなのに対し、気は五感でとらえられるものです。
性即理【理は性にあり】
この理気二元論を、朱子は人間の心にもあてはめます。
まず、人間の心は性と情にわかれます。
性とは、人間の理性的部分、言いかえると人間の本性です。
万物を支配する原理・法則である理は、この性に備わっているとされます。
こうした朱子学の考え方を性即理といいます。
人間の本来の心(=本然の性)は、善をなす意欲に満ちた純粋なものです。
かつての孟子も同様のことを指摘しています。
孟子について詳しく知りたい方はこちらの記事「孟子と荀子の思想の違いを超わかりやすく解説【倫理第17回】」をチェックしてみてください。
つまり、朱子学は性善説の立場に立っているわけです。
ところが、現実の人間はさまざまな感情や欲望により、本然の性がゆがんでしまっています。
この感情や欲望の部分こそが情です。
居敬窮理【心を本来のあるべき姿に戻す修養の方法】
では、どのようにして感情や欲望によってゆがんだ心をあるべき姿(本然の性)に戻せばよいのでしょうか?
答えは、居敬窮理です。
居敬とは、静坐などにより心をしずめて修養すること。
ちなみに静坐とは、心を落ち着かせて静かに座ること。静坐=「せいざ」と読みます。
窮理とは物事の理を窮めることです。
窮める=「きわめる」と読みます。
ようは、儒教経典の読書により物事の理を徹底的に知り尽くすことを説いたわけです。
窮理=格物致知とも呼ばれます。
結論、居敬窮理により心を本来のあるべき姿に戻す教えこそが朱子学です。
陽明学とは【王陽明が創始した学問】
(王陽明:wikiより)
陽明学は、明王朝の時代の儒学者である王陽明が創始した学問です。
かつて王陽明は朱子学を学んでいました。
しかし、朱子学が心を性と情にわけてしまうところに納得がいかず、朱子学を批判する立場となったのです。
心即理【心はすべて理である】
(性即理と心即理の違い:オリジナル)
朱子学は心を性と情にわけ、性に理が備わっていると考えます(性即理)。
上の図でいうと左側ですね。
一方陽明学は、心を性と情にわけることはせず、心をまるごと肯定します。
心は理性・欲望・感情が一体となっていきいきと働くもの。
理性だけではなく、欲望や感情もすべてひっくるめて一つの心であると解釈するわけです。
そしてこの心そのものがすべて理であると考えます。
上記のような考え方が心即理です。
致良知【良知を磨くには実践あるのみ】
人間の心には生まれつき善悪を判断する力が備わっています。
善悪を判断する力=良知です。
しかし、良知を発揮できるかどうかは本人次第。
日々の生活のなかで絶えず良知を磨くことが必要です。
良知を磨くには書物を読むだけでは不十分で、とにかく実践が求められます。
実践によって良知を実現させることを致良知といいます。
覚えておきましょう。
また陽明学では、何かを知る際、単に知識として頭で理解するだけでは足りないとされます。
実践ができてはじめて真の知といえるのです。
このように知ることとおこなうことを表裏一体としてとらえることを知行合一といいます。
朱子学と陽明学の違い【性即理と心即理・格物致知の解釈の違い】
(王陽明:wikiより)
朱子学と陽明学の違いは、2つあります。
一つは、理がどこにあると考えるか。
朱子学は心を性と情にわけ、性に理があると考えます(性即理)。
一方陽明学は、理性・欲望・感情すべて含めて心であり、心そのものに理があると解釈しますよね(心即理)。
そしてもうひとつ、格物致知についての解釈にも違いがあります。
朱子は格物致知を「知を致すは物に格る(いたる)にあり」と読みました。
これは「真の知を獲得するためには、一つひとつの物の道理を徹底的に知り尽くす必要がある」という意味です。
一方、王陽明は格物致知を「知を致すは物を格す(ただす)にあり」と読みました。
これは「良知を発揮するためには、心を磨いて正しくする必要がある」という意味です。
上記のように格物致知の解釈についても違いがあるので、おさえておきましょう。
入試問題にチャレンジ
問 下線部ⓒに関して、朱熹(朱子)の理と気についての説明として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 心のなかにのみ存在する理を規範とし、非物質的な気を媒介として、物質としての万物が形成される。
② 万物に内在する理を規範とし、物質的な気が運動することによって、万物が形成される。
③ 心のなかにのみ存在する理を規範とし、物質的な気が運動することによって、万物が形成される。
④ 万物に内在する理を規範とし、非物質的な気を媒介として、物質としての万物が形成される。
(2019年 センター試験 本試験 倫理 第2問 問3より)
まとめ
今回は、朱子学と陽明学について解説しました。
学習内容のおさらいです。
・朱子学は、居敬窮理により心を本来のあるべき姿に戻す教え
・陽明学は、日々の生活で良知を実践することを通して、善を実現することを重視する学問。
・朱子学と陽明学の違い
①理がどこにあると考えるか(朱子学:性即理⇔陽明学:心即理)
②格物致知の解釈
(朱子学:書物を読み、物の道理を徹底的に知り尽くす⇔陽明学:実践により心を磨く)
朱子学・陽明学をマスターするための第一歩として、上記の3点をおさえておきましょう。
記事を読んで内容を理解したら問題を解いてアウトプットすることもお忘れなく。
最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「墨家・法家・陰陽家について初学者向けに超わかりやすく解説【倫理第19回】」をご覧ください。

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次回の記事「ルネサンスについて超わかりやすく簡単に解説【倫理第21回】」をご覧ください。
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