今回は、儒家・道家以外で知っておきたい諸子百家について解説します。
この記事で学べる内容は以下のとおりです。
この記事からわかること
・墨家の思想【兼愛・非攻】
・法家の思想【法治主義】
・陰陽家の思想【陰陽五行説】
墨家・法家・陰陽家の思想をはじめて学ぶ人にもキッチリ理解してもらえるよう、わかりやすく解説しました。
また記事の後半には、今回のテーマに関連した入試問題も用意しています。
この記事を読むだけで基本の理解・復習ができるので、最後まで読んでみてください。
世界史を学習している方はこちらの記事「夏、殷、周、秦王朝までを一気に解説!春秋の諸子百家なども細かく解説!歴代王朝の覚え方も!(世界史B)」もチェックしてみてください。
墨家の思想【兼愛・非攻】
(ぱくたそ(www.pakutaso.com))
墨家は、墨子が創始した思想家集団です。
一時期、儒家と双璧をなすほどの勢力をもっていました。
墨家の思想で重要なのは以下の2つ。
- 兼愛
- 非攻
順番に解説します。
兼愛【無差別で平等な愛→儒家の仁を別愛と呼んで批判】
兼愛とは、万人をわけへだてなく愛することです。
墨子は儒家の説く愛を別愛と呼んで批判しました。
儒家の仁は親しい者(=肉親)とそうでない者との区別を設ける差別的な愛だと考えたからです。
墨子は儒家の説く愛にどうしても納得できませんでした。
そこで、無差別で平等な兼愛を説いたわけです。
墨子の説く兼愛は、相互扶助的な意味合いがあります。
まずは自分が人を愛し、相手の利益になることをすれば、自分も相手から愛され、利益を与えられるというのです。
お互いに利益を与え合うこと=交利といいます。
「兼愛を実現すれば交利が実現する。逆にいえば交利を実現するには兼愛が不可欠」
ようは、兼愛と交利は表裏一体なのです。
非攻【侵略戦争を否定】
墨子は非攻と呼ばれる非戦論を説き、侵略戦争を否定しました。
ただし、自衛のための戦争については否定していないので注意が必要です。
このほかにも墨家は、天命を否定したり、豪華な葬儀を批判したりとさまざまな面で儒家と対立しました。
法家の思想【法治主義】
(ぱくたそ(www.pakutaso.com))
法家の思想を大成させたのは、韓非子です。
韓非子は荀子から儒学を学び、師の性悪説を受け継ぎました。
性悪説って何だっけ?
と思った方は、「孟子と荀子の思想の違いを超わかりやすく解説【倫理第17回】」で復習してみてください。
法家の思想は、ズバリ法治主義です。
ほうびや刑罰といった法的制裁を活用(=信賞必罰)し、社会秩序の維持を目指しました。
法家の目的は、強大な中央集権国家の建設と富国強兵にあります。
厳しい法律で臣下や民衆を律して社会秩序を守ると同時に、君主への権力集中を図りました。
なお、のちに法家の法治主義を取り入れ、強大な中央集権国家を築いたのが秦の始皇帝です。
秦の始皇帝について学習したい方はこちらの記事「【世界史B】受験に役立つ中国史(秦〜前漢末)第二回」をどうぞ。
陰陽家の思想【陰陽五行説】
(ぱくたそ(www.pakutaso.com))
陰陽家は、陰陽五行説を唱えた思想家集団です。
陰陽五行説とは、陰陽説と五行説を合体したものを指します。
陰陽説とは、すべてのものは陰気と陽気という2つの「気」から成り立っているとする考え方です。
一方、五行説は自然界が五行で構成されているとする考え方を指します。
五行=木・火・土・金・水の5つの元素のこと。
つまり陰陽五行説は、2種類の気と五行により、自然や社会を説明しようとする思想なのです。
入試問題にチャレンジ
問 下線部ⓓに関して、諸子百家についての説明として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 墨子は、侵略戦争を有利に進めるために、自集団の中で習得した知識や技術を積極的に利用しようとして、各地を奔走した。
② 墨子は、道を重んずる立場から、無為自然の理想社会を目指し、自給自足の生活を送る小さな共同体の実現を説いて、各地を奔走した。
③ 孟子は各国を遊説して、人間は美醜や善悪といった区別や対立にこだわるが、本来、万物は平等であるという万物斉同の思想を説いた。
④ 孟子は各国を遊説して、君主は仁義に基づいた政治を行うべきであり、民衆に支持されない君主は、天命を失ったものとして追放されると説いた。
「孟子ってどんな人だっけ?」と思った方はこちらの記事「孟子と荀子の思想の違いを超わかりやすく解説【倫理第17回】」をチェックしてもう一度復習してみてください。
①:墨子は侵略戦争を否定しているので、「侵略戦争を有利に進めるために」が誤りです。
②:「無為自然の理想社会を目指し、自給自足の生活を送る小さな共同体の実現を説い」たのは、墨子ではなく老子です。
老子について復習したい方は、こちらの記事「道家の思想(老子・荘子)をわかりやすく簡単に解説【倫理第18回】」を読んでみてください。
③:万物斉同の思想を説いたのは、孟子ではなく荘子です。
荘子について詳しく知りたい方は、こちらの記事「道家の思想(老子・荘子)をわかりやすく簡単に解説【倫理第18回】」をチェックしてみてください。
まとめ
今回は、墨家・法家・陰陽家の思想について解説しました。
学習内容のおさらいです。
墨家の思想
・墨子は万人をわけへだてなく愛する兼愛を説き、儒家の仁を差別的な愛(=別愛)として批判した。
・戦争論では、いわゆる侵略戦争を否定したが、自衛のための戦争は肯定している。
法家の思想
・法治主義を説き、信賞必罰による社会秩序の維持を目指した。
陰陽家の思想
・2種類の気(陰気・陽気)と五行(木・火・土・金・水)により、自然や社会を説明しようとした。
墨家・法家・陰陽家の思想をマスターするための第一歩として、上記の4点をおさえておきましょう。
記事を読んで内容を理解したら問題を解いてアウトプットすることもお忘れなく。
最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「道家の思想(老子・荘子)をわかりやすく簡単に解説【倫理第18回】」をご覧ください。
次回の記事「朱子学と陽明学の違いを超わかりやすく簡単に解説【倫理第20回】」をご覧ください。
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