今回のテーマは、孔子の教えです。
この記事では以下の内容が学べます。
この記事からわかること
・孔子が登場した時代的背景【乱世の時代に社会のあり方を説く】
・孔子の教え【仁と礼の実践】
・孔子の理想とする政治【封建制・徳治主義】
孔子の教えをはじめて学ぶ人にもキッチリ理解してもらえるよう、わかりやすく解説しました。
また記事の後半には、今回のテーマに関連した入試問題も用意しています。
この記事を読むだけで基本の理解・復習ができるので、最後まで読んでみてください。
孔子が登場した時代的背景【乱世の時代に社会のあり方を説く】
(春秋・戦国時代:wikiより)
孔子の教えを紹介する前に、孔子が登場した時代的背景から見ていきましょう。
かつて中国では周王朝が実力と権威をもっていましたが、異民族の侵略を受けて衰退しました。
以降の時代を春秋・戦国時代といいます。
春秋・戦国時代を一言で表現すると戦乱・下克上の時代で、社会が乱れていました。
このような乱世の時代に登場したのが諸子百家です。
諸子百家とは、社会のあり方・人間の生き方についての指針を示す思想家集団を指します。
諸子百家の代表が儒家であり、儒家の祖こそが孔子です。
ではここから孔子の教えを解説していきますね。
孔子の教え【仁と礼の実践】
(孔子:wikiより)
孔子が説いた人間のすべき生き方=道とは、仁です。
仁とは【親愛の情】
仁とは、親愛の情です。
「親愛」=「親しい者への愛」のことを指します。
では孔子の考える「愛」とは何なのでしょうか?
孔子の考える愛の基本は忠恕という言葉で表現されます。
忠恕の読み方は「ちゅうじょ」です。
「忠」は偽らざる心です。
まごころのことだと思ってください。
「恕」とは他者を思いやることです。
つまり忠恕とは、まごころから他者に配慮することを意味します。
ようは、「心から相手を思いやりなさい」と孔子は説いたわけです。
孝悌とは【仁の基本】
また孔子は、「孝悌なるものは、それ仁の本なるか」と述べています。
言いかえると、仁の基本は孝悌であると言っているわけです。
ちなみに孝悌は「こうてい」と読みます。
「孝」は父母によく仕えることで、「悌」は兄によく仕えること。
つまり、「家族を何より大事にしなさい」と孔子は説いたわけです。
結論、儒家が大事にしたものは以下の2つなのでおさえておきましょう。
- 身近な者への愛
- 目上の人への敬意
礼とは【社会規範・仁の表れ】
仁=親愛の情で、愛の基本が忠恕だとわかった。
だけど仁を実践するにはどうすればいいの?
ただ「心から他者に配慮しよう」と思うだけでもいいの?
仁は単なる心がけではなく、礼として目に見える形で現れなくてはなりません。
礼とは社会規範のことです。
周王朝の創始者の弟である周公旦がつくりました。
私たちもあいさつをするときには頭を下げる=礼をしますよね。
ようは、あいさつや礼(礼儀)は、他者を思いやる内面の心=仁が形として外面に現れたものなのです。
孔子は、世の乱れの原因を礼が失われたことに求めました。
なので、仁だけではなく礼の実践もあってこそ意味があると考えたわけです。
ちなみに、仁と礼を身につけた人物のことを君子といいます。
また君子以上に仁と礼をきわめた存在は聖人と呼ばれます。
先ほど登場した周公旦も聖人です。
孔子の理想とする政治【封建制・徳治主義】
(周:wikiより)
孔子は周王朝の封建制を復活させようとしました。
封建制とは、土地を介して結ばれた主従関係に基づく社会の仕組みを指します。
中国の封建制では、君主と諸侯(領主)が血縁関係で結ばれていました。
家来はもちろん王の一族も諸侯だったので、家族的なつながりがありました。
ところが、周王朝が没落し家族的な社会秩序が失われたことから、孔子は封建制の再興を図ったわけです。
また理想的な政治のあり方として、孔子がかかげたのが徳治主義です。
徳治主義とは、徳のある君主が政治をおこなえば、君主の徳が人民にも波及するという考え方を意味します。
ようは、政治をおこなう者が率先して徳を身につけなければならないということです。
逆にいえば、人民がすさむのは政治をおこなっている者に徳がないからだと孔子は考えました。
入試問題にチャレンジ
問 下線部ⓓの孔子が説いた仁の実践として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 人間の道徳性を現実化しようとする、根源的な気力を養い育てていく。
② 柔和でへりくだった態度をとり、周囲の人と極力争わないように努める。
③ 名称とそれが示す具体的な事柄とを一致させて、社会秩序を強固にする。
④ 自分勝手な欲望に打ち勝ち、古の理想的な行動基準に自分を従わせる。
孔子の言葉「己に克ちて礼に復る(克己復礼)を仁となす」(=自分の欲望をおさえて、礼を実践することが、すなわち仁である)どおりの説明です。
①:孟子が説いた浩然の気の説明です。
②:老子が説いたとされる柔弱謙下の説明です。
③:諸子百家の1つである名家の考え方です。
「自然に従って生きる」「欲望や快楽などの情念によって動かされない」などの記述が最大のヒントです。
②:「魂の三部分間の葛藤や分裂が克服され」の記述が誤りです。プラトンが提唱した「魂の三分説」を念頭に置いた記述と見られます。
③:中庸の大切さについて説いたのは、ストア派ではなくアリストテレスです。
④:エピクロス派のアタラクシア(心の平静)に関する記述です。
まとめ
今回は、孔子の思想について解説しました。
学習内容のおさらいです。
・孔子の説いた道=仁であり、仁とは親愛の情である。
・礼とは仁が目に見える形で現れたものであり、礼の実践と内面的な心(仁)が両方そろってはじめて君子になれる。
・孔子は政治のあり方として徳治主義を説くと同時に、封建制の復活を目指した。
孔子の教えをマスターするための第一歩として、上記の3点をおさえておきましょう。
記事を読んで内容を理解したら問題を解いてアウトプットすることもお忘れなく。
最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「上座部仏教と大乗仏教の違いをわかりやすく簡単に解説【倫理第15回】」をご覧ください。
次回の記事「孟子と荀子の思想の違いを超わかりやすく解説【倫理第17回】」をご覧ください。
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