今回のテーマは、古代インド思想です。この記事では以下の内容が学べます。
この記事からわかること
・バラモン教の基本【カースト制を特徴とする宗教】
・カースト制の仕組み【バラモンを頂点とする身分制度】
・輪廻思想とはどんな思想か【前世の行いで来世の生まれが決まる】
・解脱の方法【結論:瞑想により梵我一如を自覚すること】
・バラモン教に対する批判【ヴァルダマーナ&ブッダの登場】
バラモン教についてはじめて学ぶ人にもキッチリ理解してもらえるよう、わかりやすく解説しました。
また記事の後半には、今回のテーマに関連した入試問題も用意しています。
この記事を読むだけで基本の理解・復習ができるので、最後まで読んでみてください。
バラモン教とは【カースト制を特徴とする宗教】
(バラモン教:wikiより)
バラモン教とは、カースト制と呼ばれる身分制度を基盤とするアーリア人の民族宗教です。
神々への賛歌「ヴェーダ」を聖典としています。
バラモン教の成立過程は下記のとおりです。
・紀元前15世紀、イラン北部地域に住んでいたアーリア人がインドに侵入
→先住民族を支配する過程でバラモン教が誕生!
カースト制【バラモンを頂点とする身分制度】
(カースト制:wikiより)
くりかえしですが、カースト制は身分制度のことです。
下記の4つの階級に分かれています。
- バラモン:祭祀階級
- クシャトリヤ:貴族・戦士階級
- ヴァイシャ:農民・商工業者
- シュードラ:奴隷階級
注:上にいくほど高い身分です。
カースト制の最大の特徴は厳格さにあります。
異なる階級では、結婚だけではなく食事の同席さえ認められないほど。
そんな4つの階級のなかでもバラモンは特権的な存在です。
バラモンとは、神々の魂をしずめるための儀式をおこなう人々を指します。
アーリア人は、神々のまつり方によって人間の幸・不幸が決まると考えていました。
ゆえにバラモンは特別な存在になったわけです。
輪廻思想【前世の行いで来世の生まれが決まる】
(輪廻:wikiより)
1950年に制定された憲法により、カースト制に基づく差別は禁止されました。
ただカースト制自体は残っていて、今でもインド社会の根幹をなしています。
なぜこれほどまでにインドではカースト制が根づいているのでしょうか?
それは、インド人(アーリア人)が今も昔も輪廻思想を強く信じているからです。
輪廻思想とは、生と死が永遠にくりかえされるという考え方のこと。
インド人は肉体が滅びても別の形で生まれ変わると考えています。
ですが、ただ同じ人生をくりかえすわけではありません。
前世での行いによって来世の生まれが決定されます。
前世での行いのことを業(ごう)・カルマといいます。
つまり前世でよい行いをすれば、高い身分に生まれることができると考えるわけです。
逆に前世で悪い行いをすれば、低い身分or動物になる可能性があると解釈します。
解脱の方法【結論:瞑想により梵我一如を自覚すること】
(ヨーガ:wikiより)
結論、輪廻の悪循環を断ち切るための解決策は解脱(げだつ)です。
解脱とは、永遠の至福に至ることを指します。
至福は最高の幸せと考えてください。
ちなみに解脱の方法は、「ウパニシャッド」と呼ばれる哲学書の中で説明されています。
具体的なやり方は下記のとおり。
- 瞑想(ヨーガ)などの修行
- 梵我一如を自覚
- 解脱
ヨーガは「ヨガ」の原型です。
今日では日本でも健康法の一環として取り入れられています。
「ウパニシャッド」によれば、瞑想などの修行により、梵我一如を自覚すれば解脱できるとされています。
梵とは宇宙の根本原理のことです。
ブラフマンともいいます。
一方我とは、人間の魂・自我のことです。
アートマンともいわれます。
ようは梵我一如とは、宇宙と自我が一体化した状態のことだと考えてください。
人のいない屋外プールで浮かんでいるあなた自身を想像してみるとわかりやすいかもしれません。
バラモン教への批判【ヴァルダマーナ&ブッダの登場】
(ヴァルダマーナ:wikiより)
くりかえしですが、バラモン教では祭祀階級のバラモンが力をもっていました。
ようは、祭祀をおこなう人間が一番エライと考えられていたわけです。
ところが、バラモン教の考えを批判する人物が登場します。
それが自由思想家です。
代表的な自由思想家は、ヴァルダマーナやゴータマ・ブッダです。
ヴァルダマーナは、ジャイナ教の開祖です。
彼はカースト制を批判し、徹底的な不殺生・無所有・厳しい苦行による解脱を説きました。
なおゴータマ・ブッダについては、次回の記事「ブッダの教え(四諦・八正道・三帰五戒など)を超簡単に解説【倫理第14回】」で解説しているので読んでみてください。
入試問題にチャレンジ
問 下線部ⓓに関連して、古代インドで展開された思想についての記述として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① ウパニシャッド哲学は、真の自己とされるアートマンは観念的なものにすぎないため、アートマンを完全に捨てて、絶対的なブラフマンと一体化すべきであると説いた。
② バラモン教は、聖典ヴェーダを絶対的なものとして重視していたため、ヴェーダの権威を否定して自由な思考を展開する立場を六師外道と呼んで批判した。
③ ウパニシャッド哲学では、人間を含むあらゆる生きものが行った行為、すなわち業(カルマ)の善悪に応じて、死後、種々の境遇に生まれ変わると考えられた。
④ バラモン教では、唯一なる神の祀り方が人々の幸福を左右するという考えに基づいて、祭祀を司るバラモンが政治的指導者として社会階層の最上位に位置づけられた。
①:アートマンを否定したのは、ウパニシャッド哲学ではなくゴータマ・シッダッタです。
ちなみにウパニシャッド哲学では、ブラフマン(梵)とアートマン(我)が一体化した状態(梵我一如)を自覚すれば解脱できるとされています。
なおゴータマ・シッダッタについては、こちらの記事「ブッダの教え(四諦・八正道・三帰五戒など)を超簡単に解説【倫理第14回】」にまとめています。
②:六師外道とは、ゴータマ・シッダッタと同時期に、インドの中心部で活躍した6人の思想家のことです。
6人は仏教と異なる思想を展開したため、仏教側から「外道」と批判されました。なので、六師外道を批判したのはバラモン教ではなく仏教です。
④:バラモン教は多神教なので、「唯一なる神の祀り方」は誤りです。
まとめ
今回は、バラモン教について解説しました。
学習内容のおさらいです。
・バラモン教とは、カースト制を基盤とするアーリア人の民族宗教。
・カースト制は、祭祀階級バラモンを頂点とした4つの階級からなる身分制度。
・現在もインドでカースト制が残っているのは、インド人が輪廻思想を信じているから。
・ウパニシャッド哲学では、瞑想などの修行により、梵我一如を自覚すれば解脱できるとされる。
・バラモン教を批判した自由思想家には、ヴァルダマーナやゴータマ・ブッダがいる。
バラモン教の基本をマスターするための第一歩として、上記の5点をしっかりおさえておきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
前回の記事「イスラーム教とは?教えの特徴についてわかりやすく簡単に解説【倫理第12回】」をご覧ください。
次回の記事「ブッダの教え(四諦・八正道・三帰五戒など)を超簡単に解説【倫理第14回】」をご覧ください。
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